2度目の人生を、楽しく生きる

皐月 遊

50話 「両親への手紙」

アリス達との勉強会の後、俺は自室に戻って自主勉をしていた。

まぁ、自主勉って言っても古代文字をあいうえお順にひたすら書いていくだけだけどな。

「それにしても、割と普通に学校生活してるな、俺」

小学校、中学校、高校の時とは大違いだ。

「あ、手紙書かないと…」

フローラに手紙を寄越すように言われていたのを思い出し、あらかじめ買っておいた便箋を出す。

ひとまず勉強は終わりにし、代わりに便箋を机に置く。

「なんて書くかな…『拝啓 お父様、お母様』  いや、違うな。 ダメだダメだ」

それから書いては消し、書いては消しを繰り返す事30分。

ようやく手紙を書く事が出来た。

「『父さん、母さんへ。 
無事に剣魔学園に入学する事が出来ました。 なかなか手紙を出せなくてごめんなさい。
やっぱり剣魔学園は凄いところだよ、強い人がいっぱい居る。 全然飽きないよ。
休みにはドーラ村に帰るから、お元気で。
 
ルージュ・アルカディア』
……よし、なかなかいいんじゃないか? 初手紙にしては良い方だろ」

書いた便箋を折り、机に置く。 これで明日の朝受付の人に頼めば届けてくれるらしい。

逆にこちらに手紙が届いた時は受付の人が届けてくれる。

「ふぅ…もう寝るか。 明日も学校だし」

そう言い。 俺は眠った。

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朝になり、俺は目を覚まして制服に着替える。

珍しく今日はよく眠れた、あの夢も見なかったしな。

時刻は7時ちょうどだが、もう二度寝する気にはなれないので部屋を出た。

「さて、まずは手紙を出しに行くか」

手紙の受付は校舎の中にある。

なので教室に行くついでに出す事が出来るのだ。

「すみませーん。 手紙出したいんですけど」

「はい、手紙ですね。 お預かりします」

「お願いします」

ちゃんとドーラ村って書いたから届くはずだ。

よし、これであとは教室に行くだけだな。

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「お、アリスおはよう」

「おはようございます」

教室の扉を開けると、アリスが1人で教室にいた。

「また眠れなかったんですか?」

「いや、今日は珍しくよく眠れたよ」

「そうですか、それは良かったです」

そう言いながら俺はカバンを机の横にかける。

剣は部屋に置いてきた。 剣を使うのは実技の授業の時だけだからな。

「アリス、昨日は本当にありがとな」

「いえいえ、あ、ちゃんと自主勉しましたか?」

「もちろん。 勉強するのは嫌いじゃないしな」

「え、そうなんですか?」

「おう」

まぁ向こうの世界では。 だけどな。

こっちの勉強は分からないから好きじゃない。 

でも勉強して分からなかった所が分かるようになった時の嬉しさは向こうの世界でもこっちの世界でも変わらない。

「確か、来週テストなんだよな?」

「はい、 教科は古代文字、剣術基礎、魔術基礎、武術基礎です」

「ほー」

古代文字と武術以外はなんとかなりそうだな。

ならこの2つを重点的に勉強しよう。

「大丈夫そうですか? 良ければまた教えますけど…」

「いや、いいよ。 流石に迷惑だろうしな」

「そうですか…」

本当にアリスは優しいな、頭もいいし…

「アリスって育ち良さそうだよな」

「え?」

しまった。 つい声に出てしまったらしい。

アリスが首を傾げて不思議そうに俺を見ている。

もう勢いだ、聞きたい事を聞いてしまおう。

「だって頭いいし礼儀正しいしさ。 なんかお嬢様みたいだな」

「……そ、そうですか…」

アリスが下を向いて言う。

心なしかテンションが下がった気がする。

「どうした?」

「い、いえ…ルージュさんは、身分の違う相手をどう思いますか…?」

「身分の違う相手?」

いきなり何を言い出すんだアリスは。

だがアリスの表情は真剣そのものだった。

「はい。 例えば貴族だったり、貧民だったり…そのような相手をどう思いますか?」

貴族や貧民か…実際に見た事ないからなんとも言えないが…

「もし相手が貴族なら、羨ましいって思うかな。 貧民なら、可哀想だって思う」

「……理由を聞いてもいいですか?」

「簡単だよ。 貴族は裕福で自由そうだから羨ましいと思うし。 貧民は逆に不自由そうだから可哀想だと思う」

「そうですか…」

それを聞くとアリスはまた下を向いた。

なんなんだ一体…

「急にどうしたんだ?」

「いえ、なんでもありません。 ルージュさんには関係のない事ですから」

なんだ? なんか今の言い方はアリスっぽくない。

いつもの距離が近いアリスの話し方ではなく、なんだか…突き放すような話し方だ。

……もしかして俺は、聞いてはいけない事を聞いてしまったのか…?

「よ、よく分からないけど、困った事があったら言えよ?」

「はい、もし困った時は…よろしくお願いしますね?」

そう言ったアリスの顔は、いつもと違い、少し悲しそうに見えた。

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