2度目の人生を、楽しく生きる

皐月 遊

1話 「困惑」

命を落としたはずの俺は、ベッドの上で目が覚めた。

「………あ、あれ…?」

なんで俺は生きているのだろう、まさかあれだけ血を出しておきながら死ななかったのか⁉︎
あの女子に「死ななくてよかった」などという思い出すと恥ずかしくなってくる言葉を吐いておきながら⁉︎

「ま、マジかよ…死んでないとか…どんだけ運いいんだよ…」

とため息まじりにそんな事を言う、すると、1つだけ違和感があった。

「あれ…? 俺ってこんなに手が小さかったか?」

自分の手を見てみると、その手の大きさは明らかに男子高校生の手の大きさではなかった、今の俺の手はまるで…子供のような…

「ん…? なんか色々おかしいぞ? よく見りゃ身体も小さいし、目線も低い…どうなってんだ⁉︎」

一通り自分の身体を見回し、ますますわけがわからなくなる。

「とりあえず…鏡を探してみるか」

まずは自分の姿を見てみたい、そう思い俺はベッドから降りた

「…やっぱり、小さくなってるよな…」

地面に立つと嫌でも分かる、明らかに目線が違うのだ。
それも鏡を見れば直ぐに分かることだ、と割り切り、部屋から出ようと扉を開けた。
すると…

「あら? 今日は珍しく早起きなのね?」

そんな声が聞こえた、俺は声のした方向を見ると…そこには長い黒髪を持った若い女性がいて、俺に微笑んでいた。

「……え…? お、おれ?」

「まだ寝ぼけているの? 早く顔を洗ってらっしゃい?」

意味が分からない、俺はこの女性の事を全然知らない、なのに向こうは俺のことを知っているような口ぶりだ。

俺は無言で首を傾げていると、女性は俺の方に来て

「もうっ、甘えん坊ねぇ…もう5歳なんだから、いい加減1人で顔を洗えるようにならなきゃダメよ?」

といって俺を抱きかかえる。

「え⁉︎ ちょっと! なにするんですか⁉︎」

「なにするんですかじゃないわよ、まだ寝ぼけてるの? ほら、洗面所よ、後は1人で出来るでしょう?」

俺は再び地面に下された。

「だ、誰なんだあの人は…黒髪だったけど日本人って顔つきじゃなかったし…」

俺をまるで我が子のように接するあの女性の事を考える、だが、いくら考えても考えても誰か思い出すことは出来なかった。

だが、ようやく目標の鏡の元まで来ることが出来た、鏡で自分の姿を見れば、何かが分かるかもしれない、と俺は思っていた。

俺は深呼吸をして、一気に鏡の方を見た。

「………え? 誰この人…」

鏡に映ったのは俺ではなかった、いや本来なら鏡に映るべきなのは俺のはずだ、なのに鏡に映ったのは俺ではない。

なにを言ってるか分からないだろうが、俺にもさっぱり意味が分からない。

俺はもう一度鏡を見てみた、だがそこに映っているのは見覚えのない顔で…

「髪の色は黒、瞳の色も黒…これは俺と同じだけど…顔の造りが明らかに違う、誰だこれは…まさか、俺が寝てる間に整形でもされたか…?」

鏡の中の人物は、俺が口を動かすと同じように口を動かす、だから別人ではないというのは一発で分かる。

俺はとりあえず顔を洗い、先ほどの女性がいた所へ戻った。

「おかえり、1人で顔は洗えた? 」

「あ…はい、大丈夫です」

先ほどのように我が子のように接してくる女性に俺はぎこちなく返事をする。

「……急に敬語なんてどうしたの? また新しい遊び? 」

「え…いや…えっと…」

「まぁいいわ、じゃあちょっとお父さんを起こしてくるから待っててね?」

「え…父……さん?」

何故俺の父がここにいるのか、という問いかけをする前に、女性は二階へ上がって行ってしまった。

俺は椅子に座り

「なんなんだ…本当に意味が分からないぞ…?」

一体あの女性は誰なんだ…何故俺は顔が変わっており、しかも背も縮んでいるのか、分からないことだらけだ。

俺が一生懸命考えていると、階段を降りる音が聞こえた、どうやら父さんがくるらしい、父さんに聞けば何か分かるかもしれない、そんな希望を抱きながら階段の方を見ていると…

「ふあぁ〜あ…眠いなぁ…」

「もう…昨日は夜遅くまで読書してたからでしょ? 私は良くないわよって言ったのに」

「ははは…すまんすまん」

と言いながら降りてきた

「と、父さ……ん?」

父を呼ぼうとするが、 その姿を見てまた疑問が生まれる、この男は誰だ?

俺の父さんは黒髪のはずだ、だがこの男は髪は白いし、顔もダンディーだ、俺の父さんとは似ても似つかない。

そんな男と女性は俺の方を見て笑顔で

「あ、そういえばまだ言ってなかったわね」

と女性が言い、2人は息を合わせて。

「「おはよう、ルージュ!」」

と俺を見て言ってきた。

……………いや、誰…?

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