学校一のオタクは死神でした。

ノベルバユーザー203842

第64話 天三神 降臨

* 第64話 天三神 降臨*



3日後…


「いやー、全く!!青い空!!白い雲!!眩しい太陽!!絶好の海水浴日和だねこりゃ〜!!はっはっははー!!」


「おいコラ、なに海に来た感醸し出してんだコラ。まだリビングだろうがコラ。」

新はジ一人テンションがやたら高いゼウスこと親父にジト目でツッコミを入れる。
そんなツッコミも虚しく、親父は気にせず高笑い。
現在時刻は午前8時前。海に行くからと言って、移動手段はgateを使うため、別にやたら早く起きる必要は無く、少々遅れてくるらしい同行者を引き入れるため、神藤新こと俺、そして希里に姉さん、武神、母さん、ビン、アラクネ、最近目を覚ましたしたビートルこと兜(目を覚ました時は武神が滝のような涙を翻にこぼしまくり、危うく希里がクラーシ〇ンに電話しかけたのが印象的だ)、ラボでは阿修羅…


親父以外の全員が、全速力で家に取り付けてあるコンセントに刺さったプラグというプラグを抜きまくっていた。


「二階の部屋は全て抜き終わりました!!」

「よし!!姉さんの方はどうだ!!!!?」

「トイレと洗面所、キッチンは抜き終わったよ新!!」

「よし!!リビングは抜き終わった!!」

「こっちも終わったでごさる!!」と武神

「ござる!!」と兜

「確認終わりました」とアラクネ

「客間も終わったよ〜!!」と母さん

「おい!!ここのプラグあと一つはどこにあるんだ!?」とビン

「どことどこを抜いた!?」

「ココとアソコとアソコだ!!」

「じゃあ、ココだ!!」

プツンプツンと次々にコンセントを全て抜いていく。
そして、全てのコンセントが抜き終わり、全員が一息つくのはほんの一時、次は全窓の雨戸やシャッターを閉める。

そんなクソめんどくさい作業をするのはこれから来る同行者を家に招くためだ…その理由は…


「!!…来た!!」


全部の雨戸やシャッターを閉め終わった数秒後、新のall lifeに強い反応が急速に接近してくる。
それと同時に、携帯に緊急大雨洪水、雷、暴風警報が鳴り響く。

それは、今まで快晴だった空を黒く塗りつぶし、雷雨暴風と共に現れた。
巨大な積乱雲。
真っ黒な積乱雲は雷をチカチカと見せながら接近し、やがて、一筋の雷撃が、神藤家の目の前に落雷する。
その瞬間、辺りの電灯がパリンっと音を立て破裂し、一瞬火花が散る。
暴風に煽られ、木の葉や、小さな鉢植まで巻き上げられる。

新が落雷したその前で、呆れながら煙が掻き消えるのを待っていると、

その中から一人、2人、3人の人影が映る。

雷の光が雲の中で2、3とチラリと光ると、積乱雲は薄くなり、やがて消え、雨風も止み、警報も静まった。
が、先程の落雷で辺りの家々が停電、コンセントに繋がれた電化製品類がショートし、赤と黄色の光を見せると、家の中にいた人らがパニックを起こし、消化器を噴射する音など、割れた窓ガラスの掃除をする音などと、少々騒がしくなった。

そんな騒ぎも、起こした本人らはノー天気に新にちゃらんぽらんな挨拶をする。


「おーっす、死神、おっ久ー!!」


「やっ!!おっ久〜!!死神〜!!」


「おじちゃー!!おひしゃー!!」


と落雷の跡から順に金髪の少年に若葉色の髪の少女、その少女に抱かれた淡い青色の髪の幼女が新に挨拶をした。

「毎度毎度、派手なご登場なこって…こちらからして見れば大迷惑だっつーのって事で地獄突き!!!!」

と新が二人の眉間めがけて地獄突きをお見舞いする…が、難なく避けられる。

すると金髪の少年はチッチッチッーと嫌味ったらしく言った。

「そんな遅い攻撃、俺達、“雷神”“風神”に当たるわけないだろ?」

「神の中でも最速を誇っているからねー“く〜ちゃん”」

「ね〜」とニコッと幼女が若葉色の髪の少女にハニカム。

新はイラッと少し眉間にシワを寄せると、若葉色の髪の少女、“風神ふうじん”こと風吹ふぶきが淡い青色の髪の幼女、“雲神くうじん”こと雲羽くうを揺すり、金髪の少年、“雷神らいじん”こと雷人らいとが新たを指さして空羽に見せた。
すると、指の先を見た空羽はちろっと新を見ると

「ねーっ!!」

とハニカンで見せた。

新は頬を引き攣りながら、後で覚えてろとの意味を込めながら、笑顔で「ね、ねー〜…(あはは…)」と乾いた笑顔で笑って見せた。
それを見るとまだ幼い空羽は笑顔というものの種類を判別できるはずもなく、ただ、無邪気にキャハハっと笑った。

雲雷風神くうふうらいじん

今回、海に行くにあたっての同行者、



天三神アマノサンジン”がはた迷惑な被害とともに参上した瞬間であった…



* * *



その頃一方、とあるアパート。
高校に入ってから、実家と学校が離れていたため、会長さんこと、百合華はアパート“ユリ”(自分と名前が似ていたからなんとなくここに決めた)で高校生では珍しい、一人暮らしをしていた。

一人暮らしとは、何故か心弾むものを感じるが、実際は、色々やる事が増えて、毎日忙しい。慣れてくると、空いた時間を有効利用出来るようになったが、それでも実家にいた頃よりは余裕はない。

最近の百合華ニュースと言えば、初めて、自分に生きろと言ってくれた人が現れたこと。そして、その人が死神で初恋の相手であるということ。

非常で非日常とも言えるが、なかなか楽しい毎日を送っている。

新には話したこと

私は孤児院で育てられたこと。
数年あまりで引き取られ、新しい家族とも楽しく暮らしていたとは思う。
でも、やはり血が繋がっていないせいか、うまくいかない時が多い。
段々と、家族への不平不満が溜まり、ついには喧嘩すらした。

一人暮らしの理由もそうだ。

別に特別頭が良かったわけでもない。でも、ここにいると、せっかくの楽しかったことも失いそうで怖かった。
だから、お義父さんと、お義母さんが選んでくれた最難関であり、家から遠く離れた高校を受験した。

でも、それで良かったかもしれない。
高校になって、新に出会った。
暖かい気持ちになった。
会うたびに嬉しい。
会うたびに心が満ちるように感じる。

これが恋、正しく、本で読んだとおりの恋

今では毎日が楽しい。

だが、今ここで少しだけ不満を言いたい。
大したことではない。
ちょっとした私のワガママだ。
だけど、だけど…!!

「…来ない…。」

先程、新にとある誘いをしようと、ラ〇ンをうったのだが…未だ、返信どころか既読すら付かず、もうすぐ一時間が経つが全くもって反応がない。

チラリと床に丁寧に畳まれた、先日買ったばかりの新品の“水着”を横目で見やる。

「…ちょ、ちょっと大胆過ぎるかな…」

その水着は至ってシンプルなビキニタイプの水着。特別派手という訳でもなく、少しフリルの付いた可愛めのものだ。
別に、特別気に入った訳では無いが、店員さんに勧められたものの中から自分に似合いそうなものを選択しただけといった感じだ…
ついでに言うと、ご丁寧にパッド入りのみを勧められた…余計なお世話だ。

次に自分の胸部を見やる…

ペッタンコ

少し掴んでみる…が、手のひらにフィットするだけであった…

ペッタンコ!!

少しもんでみる…
ボリュームは、ほぼZEROに近い…
胸の柔らかさよりも毎日カルシウム満点の牛乳を飲んだ結果とも言えるが、丈夫で密度の高い肋骨の硬さの方が目立ってしまっている…


ペッタンコ!!!!


「…パッド入りで良かったかも…。」

少しだけ涙を零しながら、進めてきた店員と、このみすぼらしい胸を与えた神様へ、恨みを込めて何時いつか、この拳を顔面にねじ込んでやろうと心に誓った…

だが、よくよく考えてみたら、神様と言っても、どの神様を恨めばいいのやら、さっぱり分からず、少しもどかしい…

……で、でもでも、好きな人に少しでも魅力的に見せたいのは恋する乙女ならば誰しもが思うことだ。

「お、男の人は、やっ、やっぱり胸が大きいほうがいいのか、な…?」

ワタワタと、ひとり小パニックを起こしながら腕をパタパタと上下に振る謎の運動をしながら心を沈めようと試みるが、少し、新が水着姿の自分を見る姿を想像してみた。

その瞬間…
かァー〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

⚠︎大パニック!!⚠︎大パニック!!⚠︎大パニック!!

自分の中で◤◢緊急事態発生◤◢と、アラームが鳴り響く。

落ち着け〜、落ち着け〜、と呪文を唱えるがもう遅く、顔から湯気が出るほど熱をおび、ボフッとパンクし、バタンと倒れた。

でも、と、倒れがら百合華は思うのだ。

でも、やっぱり、魅力的に見られるのは嫌じゃない…


「だから、少しでも新に魅力的に見える…ように…」


再び顔が熱くなり、気紛らわしに携帯を見やるが、画面に変化は無く、未読、

ため息を一つ。

「…海、一緒に行きたいなぁ…」

青白い光に照らされながら、ボーッと画面を見続けるだけであった…



※新一行が海に行っていることは知りません。



* * *



「せぇーーのっ!!!!」


「「「「「「「「「「海だぁあああっ(でござる)!!!!!!!(ういりゃぁー!!  by空羽)!!!!!」」」」」」」」」」


何故かよくわからないハイテンションで、希里、桜姬、ゼウス、アラクネ、ビン、武神、兜、雷人、風吹、空羽の新を除いた計10人が海だと叫んでいた。
因みに、嵐は相変わらず、部屋に閉じこもり、部屋を埋め尽くすように設置されたコンピュータを再起動していた。

粒の小さな白い砂浜、青く透き通る美しい海、SunさんSunさんと照りつける眩しい太陽
正に絶好の海水日和

そんな中、新は大量の荷物を腕やら肩やら頭やら、首やらに乗せたり、掛けたりしながら、呆然と立ち尽くしていた。

見渡す限り、美しい海岸…それは別にいいのだ、うん。別に構わない。

だが、くるりと振り向くと、扉が一つ立ててある。その扉がゲートで、家と海岸を繋ぐ架け橋となっている。
それも、別に構わない。
問題なのはその後ろだ…

目が合った
“色鮮やかな鳥”が翼を広げて、鳴きながら飛び去る。

青々とした葉っぱに、木や葉の影で出来た、一際黒い影。カサカサと姿は見えぬが、動き回る小動物の足音。
上の方をよくよく見ると、“バナナ”が生えていた。
それも、スーパーで見かけるもののような小さなものではなく、酒樽くらいの塊が実っていた。

海再び見ると、遠目にマンボウの群れが跳ねる(マンボウは、体についた寄生虫を落とすために、海面に打ち付け、それを落とすそうだ。)のが見えた…

イルカならあるけど、マンボウは初めて見た…

確かに、プライベートビーチとは聞いていた。うん。確かに聞いた。でも、よくよく考えてみたら、日本にそんな土地などないだろう。じゃあここは何処いずこ?と考える間もなく、自分の目に映る景色とall lifeがその答えを教えてくれる。


「……“島”じゃん…」


ゼウスこと、新の親父の所有するプライベートビーチ。
それは、オーストラリア州、ミクロネシア付近に浮かぶ、小さなとは言っても、バチカン市国よりは少なくとも大きい“無人島”であった…



完全なる“熱帯”だった



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