カノジョの好感度が上がってないのは明らかにおかしい

陽本奏多

第27話 遊園地におけるエイリアン殲滅戦開幕

 やはり、この状況はおかしいと思う。

 「ティアちゃん、次は何に乗りたい?」
 「アイスクリーム、チョコ味でよかったら食べないか?」

 六実と凛は、とてつもないくらい幸せそうな顔でティアとの遊園地を楽しんでいた。

 もちろん、俺がきゃっきゃうふふしている彼女らに交じっているわけもなく三人の少し後ろを歩いている。彼女たちはもう少し俺みたいな大和撫子っぽさを学んだ方がいいと思います。

 第24回朝倉ティア争奪戦のことはすでに彼女たちの頭の中から消去されているようで、俺がティアを楽しませる番は来なかった。べ、別に! あんたを楽しませたいとか全然思ってないんだからねっ! 俺が言ってどうすんだ。 

 そんな風に俺が、頭の中でツンデレごっこ(朝倉馨が命名)を楽しんでいると、前のティアが突然声を上げた。

 「これです! みんなでこれをしましょう!」

 ティアが少し興奮気味に指さしたのは、エイリアンを撃ちながら進み、スコアを競うシューティング型のアトラクションだった。その建物の前には、大量の景品と思われるエイリアングッズが並んでいる。よくある、キモカワなグッズなのかもしれないが、俺にはそのグッズからかわいさを見出すことはできなかった。

 ところが、ティアの目にはそのエイリアンがとてもかわいく見えているようで、目がキラキラと輝いている。

 「ティアちゃん、もしかしてあのグッズ欲しいの?」

 六実がそう尋ねると、ティアは無言で二度頷いた。

 その瞬間、六実と凛の目がティアとは違う輝きを見せた。

 「馨くん!」
 「馨!」

 二人はそう言うなり俺の腕をつかんだ。六実はまだ、俺に気を使ってか少し掴む力が弱いのだが、凛の手はマジで肉が裂かれるかと思うくらい強く掴んでいる。痛いです、マジで。

 俺が凛に文句の一つでも言ってやろうと口を開いたとき、彼女たちは頷き合い、走り出した。したがって、俺は女の子二人に引きずられるという形になっている。わーい。僕のハーレムだー。……全然嬉しくねぇ……

 足に擦り傷を大量に作りながら、俺はそのアトラクションの前まで到着した。

 「……で、俺に何をしろと?」

 俺がはてしなく気だるそうにそう言うと、正気を取り戻した凛が口を開いた。

 「馨、お前シューティングゲーム得意だったよな? そこでお前にあの景品をとってもらおうと思ってな」
 「うん、そうそう。ほら、馨くんもかわいい妹に遊園地での思い出の品を送りたいかなー? って。だめ、かな……?」

 明らかに俺を利用しようとしているだけだが、六実の上目使い&胸の前で指を合わせる仕草に俺の精神力は敵わなかった。というか本気でかわいい。持って帰りたい。

 「ま、まぁ。こういうの好きだし。別にいいけど……」

 俺がそういうと、六実はやったぁ!と跳ね、凛はありがとう、とかなりいい微笑みを見せてくれた。二人のかわいい姿に心が揺らぎそうになったが、これでティアちゃんに喜んでもらえる……とニコニコする六実を見た途端、急に悲しくなった。

 やっぱり、俺の遊園地デートは少し間違ってる気がする。


   *  *  *


 と、いうことでいざ入場。このアトラクションは、いわゆるライド型、乗り物に乗ってあれこれする型のアトラクションらしく、宇宙船か何かを模して造られたような乗り物に俺たちは乗り込んだ。

 そこには三丁の銃が置いてあり、俺はそれを手に取ると感触を確かめた。あまり重くはなく、トリガーも引きやすい。また、近代的なデザインには男心をくすぐられる。

 「へぇ~、なかなか凝ってるね~」
 「確かに、なかなかのものだな」

 女子二人はこういうのに慣れていないらしく、興味深そうにきょろきょろしている。この子たちがいると、景品をもらえる程度の得点をとれるか不安になってきた。

 「では、エイリアンとの戦いにいざしゅっぱーつ!」

 妙にテンション高めのスタッフさんに見送られ、俺たちの乗り物は動き出した。

 「よーしやるぞー! 頑張ろうね、馨くん!」
 「あ、あぁ」

 にこっと、大輪の花のような明るい笑顔を見せる彼女に俺は不覚にもどきりとしてしまった。こんな風に六実は、突然どきりとさせられるから少し困る。まぁ、その笑顔を家で思い出してニヤニヤしてたりするのだが。……その度にティアから罵倒される俺の話はやめておこう。

 「前方に敵影! 直ちに迎撃準備されたし!」

 急にキャラが変わった凛が銃を構えながらよく通る声で叫ぶ。目つきとか妙にきりっとしてて、なぜか様になってるし、ちょっとかっこいい。

 とりあえず凛にツッコむのは後にして、俺は銃を構えた。凛は迎撃といったが、実際のところエイリアンたちは動かず止まっているだけなのでこちらから一方的に攻撃していることになる。しかし、相手は止まっているものの、撃って得点が入る範囲が狭いのに加え、自分自身が動いている為、あてるのはなかなか難しい。

 隣の二人もどうやら苦戦しているようで……って

 「な、なんでお前らそんな点数入ってんだ!?」

 俺は彼女たちの得点表示板を見て驚愕した。彼女たちは、シューティングゲームが得意な俺の約20倍もの得点をすでに稼いでいたのだ。

 「あっ本当だ! 私って意外と有能かも!」
 「驚いたな。私がこんな特技を持っていたとは……」

 彼女たちは自分でも驚いているようで、驚愕の表情を浮かべている。

 これは、何かあるな……俺がそう感じていると、唐突に俺のスマホが通知音を鳴らした。

 「馨さん、エイリアン狩りは順調ですか~?」
 「やっぱりお前が何か仕組んでるんだろ?」
 「え? 何のことですか? 銃の照準アシストなんて私知りませんよ?」
 「全部自分で言ってるじゃねぇか。どんだけあのグッズ欲しいんだよ」

 とぼけて笑うティア、というかスマホをポケットに直し、俺は再び銃を構えた。

 「さて、いっちょやりますか」

 俺はそう言うと同時に、銃のトリガーを引いた。





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