帰宅したら妹が先に家にいた

神庭圭

帰宅したら妹が先に家にいた

 あれは10年くらい前、俺が高校生だった頃の話だ。試験期間中で、気温がとても暑かったことを覚えているから、多分7月。
試験を終え、友達と適当に昼飯を食べた俺は、家に帰ってきた。それでもまだ14時くらいで、勉強の為の時間はたっぷりあると心持は余裕。

 鍵を開け、扉を開くと妹の靴が脱ぎ散らかされていた。
また母さんに怒られるぞと呆れながら、その靴を直し、俺も家に上がる。

「ただいまー」

と言う。すると二階から

「おかえりー」

と妹の声がする。微かに聞こえるゲーム音。確か妹も試験期間中だったはずだと思い、

「勉強しとけよ」

と注意しようかと思ったが、喧嘩の元なので我慢する。



 俺は自室より居間の方が勉強に集中出来るタイプで、今日の様に居間に誰も居ない日は捗る。
明日の試験日程を確認し、調子をつける為に得意科目の国語から手をつけていく。


 どれくらい時間が経っただろうか。何故か集中出来ない。上から漏れてくるゲーム音のせいだろうか。
少しイライラした俺は「少し注意してやろう」と立ち上がる。今思えば完全に八つ当たりなのだが、勉強もせずゲームばかりする妹を注意するという大儀名文があったので、気にならなかった。
そして居間から出たとき、玄関の扉が重い音を立てて開いた。

「ただいまー」

妹が帰って来た。

「おかえり……え」

俺はゾクリとした。背筋に水を流し込まれ、冷凍されたかのように、体が冷たく動かない。
意識ははっきりしていくのに、後ろに遠ざかっていくような感覚。得体の知れない恐怖。

「え……お前いつの間に出かけてたの?」

「はぁ、朝からテスト、んで友達とマックで勉強ー。今帰って来たところだよ」

じゃあ、俺にただいまと言ったのは誰だったんだ?
今、妹の部屋でゲームをやっているのは?






コメント

  • ノベルバユーザー602658

    なかなか背筋が凍る内容で良かった。

    0
  • ノベルバユーザー296921

    続きを待っています そして、内容が怖かったです !!!

    0
  • SHIRO

    続きを待ってます

    1
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