異世界の村で始める獣人とのハーレム生活

りょう

第34話二人の思い出の地 前編

 それから二日後のある日、モカが俺に一緒に来てほしいところがあるとの事なので、二人で午後から出かけていた。

「大丈夫なのか出歩いて。まだ安全とは言い切れないんだろ?」

「ここ数日、相手の動きは見られませんので、多分大丈夫です。それにこれから向かう場所は、多分どこよりも安全な場所だと思いますから」

 道中そう説明するモカ。村を出てそこそこ時間が 経つのだが、未だにその目的地がどこなのか分からない。むしろこのままだと島を出てしまう勢いだ。

「私はフォルナちゃんと会う為に何度かこの島に、こっそり訪れていたんです。勿論その間も身分を隠していたのですが」

「でもかなりの有名人なんだろ? かえって目立ったんじゃないのか?」

「だいたいの方には気付かれてしまいましたが、森の中に入るとそれすらも無くなり、フォルナちゃんと二人きりの時間は、王女である事すらも忘れるほどでした」


「よほど楽しかったんだな」

「はい」

 だがもうそのフォルナはもう居ない。あれからしばらく経ち、モカも元気を取り戻してはいるが、やはりどこか寂しさを感じる。

(二人だけの幸せの時間か……)

 フォルナも同族とはあんな関係だったのだから、一人になる事が多かったのだろう。その中で偶然にもモカと出会い、二人は友達になった。
 姫と庶民の垣根を越えて。

「確かこの辺りに ……。あ、ありました、ここです」

 途中でモカが立ち止まって指をさしたその先にあったのは、

「え? ここって」

「私とフォルナちゃんが出会った場所です」

 そこは小さな泉だった。何の変哲もない泉のはずだが、俺はその場所に見覚えがあった。

「これってあの遺跡にあった泉と似ていないか?」

「私もあの時一瞬思ったんです。あの場所とここがそっくりじゃないのかって」

「そっくりというより、そのままだよな」

 まるでこの泉がそのままあの遺跡に移動したみたいなそんな感覚。あの場所では守護獣の声が聞こえて、ゆっくり眺める事が出来なかったから、完全に一致とまではいかないが、可能性はある。

「でもどうしてこんな所に」

「単なる偶然と思えないんです私。それにほら、今見つけたんですけど」

 またモカが指をさす。そこには明らかに人為的に倒されている木が一本。しかも不自然なほどにその一本だけが倒れていた。

「これって、あの時倒された木なのか?」

「確信はありませんけど、可能性はあると思ってカエデを連れてきたんです」

「あの泉を見たのは、俺とモカとフォルナだけだからか」

 これがあの泉と一緒という証拠はないけど、もし本当ならば、またあの遺跡の謎が一つ増える事になる。

(どうなっているんだ、この島は)

 かつて過ごした事もあるこの島は、やって来て一ヶ月以上過ぎても謎だけが増えていくばかりであった。

 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
 せっかくここまで歩いて移動してきたので、二人でこの泉でのんびり時間を過ごす事に。
 泉自体はとても静かで、ちらほら動物は見えるが特に問題はない。モカが先ほどここなら大丈夫だって言った理由もなんとなく分かる。

「静かで何かいいなここ」

「私たちのお気に入りの場所でした。ここは本当時間を忘れられるくらい、いつまでもいられる所なので」

「俺もこの場所は気に入ったよ」

「そう言っていただけると嬉しいです」

 俺とモカも多少は会話をするものの、この静かな時間をのんびりと過ごす。このまま目を瞑れば一眠りできそうだ。

 …………。


「カエデ? 寝てしまったんですか?」

 しばらく何も会話せずボーッとしていると、いつの間にか隣で座っていたカエデが、寝息を立てている事に気がつく。

「もう、仕方ありませんね……」

 本当はもう少し彼とお話しがしたかったのだけど、起こすのも可哀想なのでそのままそっとしてあげる。

(本当はフォルナちゃんとの事でも話そうと思っていたんですけど)

 フォルナちゃんが亡くなってからもう二週間近くが経とうとしてる。供養の意味も込めてここへ来たのだけど、改めて来ると色々な事を思い出す。

『あなた……誰?』

 初めて私がこの島に来た時、道に迷って偶然この泉で休憩した時に彼女と出会った。本来なら誰かに見つかる事を避けたかったのだけど、まさかこんな所で獣人に会う事になるとは思っていなかった。

「は、初めまして。私道に迷ってしまって」

「実は私も。でも別にいいの」

「え? どうしてですか?」

「帰ったっていい事ないから」

 どうやら彼女は最初、迷子というよりは家でという形でこの泉へ来ていたらしい。かくいう私も逃げるようにこの島へ来たみたいなものだったから、彼女とはどこか似たような所があった。

「フォルナって言うんですか。私はモカって言います」

「モカも迷子なの?」

「実はこの島に来たの初めてで、迷いに迷ったらここへ来ていたんです」

「そうなんだ。じゃあ森の外まで案内する」

「あ、でも、私帰らなくてもいいんです」

「帰らなくていい? 私と同じ」

「そうなんです。私もフォルナちゃんと同じで帰ってもいい事ないんです」

 最初彼女に自分の事情を話してしまおうと思った。けど、私が姫だと知ったらどんな反応されるか怖くて、それだけはやめておく事にした。

「じゃあここにしばらくいる?」

「それは構いませんが、寝床とかはどこに?」

「野宿」

「の、野宿ですか?」

 ともかく私とフォルナちゃんは、出会ってから数日この泉で共に生活る事になった。
 これが私とフォルナちゃんの出会いの物語。

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