異世界の村で始める獣人とのハーレム生活

りょう

第60話信頼から裏切りへ 前編

 具体的にモカの話を聞くため、俺達は以前利用したこともあるカフェへ。

「それで分かった事って?」

「以前カエデ君にはお話しした事があると思いますが、ラビリンズ王国には地下遺跡が存在します」

「確かに少し前に話してたな。確か国家機密レベルの本の中にしか記されていないってやつだよな。モカはこの一ヶ月それについても詳しく調べていたんだよな」

「はい。あの本の厚さがそもそもあるので、全部読み終えるのにも時間がかかりました。でも中身はやはり伝えられている通りのものでした」

 国家機密レベルの地下遺跡、それが記されている本。本来なら外部に流出する事がまずあり得ないとモカは言っていた。そしてその本は見た目以上のボリュームであったらしい。

(そんなものが何であの島にあったのか、それも気になるよな)

 結論は盗み出されたか誰かがそれらを避けるためにわざわざここに持ち出しか、の二択になる。

「いいですかカエデ君、これから私が話す事は本来なら話してはいけないものです。だから極力口外しないでもらいたいのですが」

「それはポチ達にもか?」

「はい。これはカエデ君にだけ知っておいてもらいたいのです」

 モカは一口飲み物を飲んで、そして口を開いた。

「私達の国ラビリンズ王国の地下遺跡に眠っているもの、それはかつて起きた悲劇と類似したものが封印されているんです」

「かつて起きた悲劇? それってまさか……」

「はい。カエデ君は記憶に残ってはいないと思いますが、アライア姫が起こした惨劇の起源となるものです」

「何だと」

 俺は驚いた。つい一ヶ月前に実の母から語られた惨劇の原点と呼ばれるものと同じものがある。もし再び扉が開かれたら、惨劇はもう一度繰り返されることになる。

「まさか奴らがラビリンズ王国を狙った本当の狙いって」

「確信はありませんがあり得ます。ただ私も一つ疑問がありまして」

「その情報をどうやってカルマ達が手に入れたか、だよな」

「はい。この本は何度も言いますように門外不出のものです。それがあの書庫にあった事さえも驚きですが、その情報が仮に流出されていたら大問題です」

「……いや、待てよ」

 ここまでの話を統合すると、まるでカルマ達はその話を知っているみたいだが、それならすぐにでも発動させているはずだ。それなら何故わざわざモカを追ってここまでやって来ているのか。

(その答えって難しいようで簡単だな)

 カルマ達反乱軍の本当の狙いは、もしかしたら……。

「モカ、今回の件下手に国に帰ったりでもしたら」

「カエデ君、今すぐその場から離れてください」

「え!」

 モカの指示で、俺はとっさに席から離れる。するとほんの一秒の差で何か鎌みたいなものが振り下ろされた。

「ちっ、外したか」

 俺を襲ってきたのは、カルマの兵。そして俺はすぐに気づく。周りが奴らの沢山の兵で既に囲まれてしまっている事を。

「カエデ君、大丈夫ですか」

「ああ、何とか。それよりも」

 モカがすぐに俺に駆け寄ってくる。俺は彼女の手を借りて立ち上がりながら、その兵達の中心の人物に話しかけた。

「随分と手荒な真似をしてくれたな」

「こんなところで呑気にお話ししている方が悪いだろ。まあ、どちらにせよこの数では貴様ら二人では倒しきれまい」

 余裕な顔を見せて現れたのはカルマ本人。確かにこの数は圧倒的不利な状況だ。今まで戦ってきた数と明らかに違いすぎる。

(ん? 何で数が増え続けるんだ?)

 何度か戦っているから、数はある程度減らしているはず。それなのに減るどころか増えているし、こんな数が一ヶ所に集まったら島の警備兵なり来てもおかしくはない。

(まさか、そんな……)

「どうした、もう怖気付いたのか」

「誰が怖気付くか。なあモカ」

「はい。勿論です。今度こそ決着をつけますよカルマ」

「モカ王女、残念ながらお前の相手は俺ではない。お前の相手は」

 沢山の兵をかき分けて、一人の人物が姿を現す。その人物は俺もモカも見覚えがあり、尚且つモカは先程会ったばかりの人物。そしてこの島の長である人物。

「嘘、どうしてあなたがここにいるんですか」

「すまぬのうモカ。それにカエデ。これも妾の仕事じゃ」

「何が……仕事だよ! どうしてあんたが俺達の目の前に立っているんだよ、カグヤさん!」

 ユグラナ島島長、カグヤの姿があった。




おまけ  獣人流婚活術①
 話は少し前に遡る。雫が修行から帰ってきて、俺がモカを迎えに行く少し前の話。

「え? 結婚の話? 何だよそれ」

「だって楓、ルチリアちゃんに告白されていたんでしょ」

 何故か突然雫が結婚の話を振ってきた。確かに告白はされたけど、プロポーズみたいなものはされたような、されてないような。

「確かにされたけど。それと結婚のどこが関係あるんだよ」

「いや、楓ももう年でしょ? だから結婚もそろそろしないと」

「年って俺まだ二十歳なんだけど。あと俺とお前同じ年だからな」

 雫の言っている事はあながち間違いではなかった。もう二十歳なのだから、結婚や婚活の事を考えてもおかしくはない年である。正直俺の気持ちはルチリアに傾いていた。けど、もうそれは叶わなくなってしまった以上、次への転換はそう簡単にはいかない。

「そもそも今から新しく誰かを好きになったら、女たらしじゃねえか」

「それがそうでもないぞ、カエデ」

「何だよポチ。別の意見でもあるのかよ」

「いいか、よく聞け。結婚というのはだな」

 この後どうでもない話が続いたので、ここではあえて語らない。

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