異世界の村で始める獣人とのハーレム生活

りょう

第5話森の中の遺跡と馬 後編

 声とその容姿のギャップに笑いが止まらなくなった俺は、自分が置かれている状況を忘れてしまうくらいだった。

「何がおかしいの?」

「いや、だって……」

「死んで」

 矢が頬をかすめる。

(あ、危ねえ)

「もう笑っている場合じゃないわよ。一旦逃げるわよ」

「あ、ああ」

 ルチリアに引っ張られ、慌ててその場から逃げ出す。ルチリアが武器を持っていたとしても、遠距離攻撃に対して近接攻撃は不利だ。ましてや、通路は一直線なので、小細工もきかないのだ。結論、今は逃げるしかない。

「逃がさない」

 あちらも速いスピードで追ってくる。流石馬の体をしているだけあって、追いかけて来るのが早い。

(でもあのスピードの相手なら)

「ルチリア、俺が合図したら止まってくれ」

「え? でも止まったりなんかしたら」

「大丈夫、俺を信じろ」

 相手があのスピードなら、こちらにだって考えがある。逃げずにこの状況を打破する方法が。

「死あるのみ」

 馬少女は俺達との距離を詰めてくる。よし、予想通りこっちに近づいてきている。

 あと数十メートルの距離まで近づいていた所で、俺は叫ぶ。

「ルチリア、ストップだ」

「何を考えているか分からないけど、分かった!」

 急ブレーキをかける。向こうは俺達のスピード以上の速さを出しているので、そんな簡単には止められないはず。

「なっ」

 馬少女は急に止まった俺達に驚いて、咄嗟に止まろうとするが、簡単には止まれないはず。つまり俺達を通り過ぎて行くわけで、

「よし背中がガラ空きだ。今がチャンスだルチリア」

「う、うん」

 ガラ空きになった背後をめがけて、取り出した槍でルチリアは一撃を加える。彼女が狙ったのは馬の後ろ足。足さえ取ってしまえば、こちらの勝ちだ。

「きゃ」

 小さな悲鳴とともに足を取られた馬少女は、その場に崩れた。どうやら決着は一瞬でついたようだ。

「とりあえず戻るか」

「うん」

 これ以上探索を続けたら、何が起きるか分からないので、俺達は一度村へ戻ることにした。

 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
 村へ戻った後、他の二人に先程の遺跡であった事を話した。

「つまり遺跡には何かあるって事だな。今度は私も連れてってくれよ」

「また今度ね。その前にやるべき事とかあるし」

「そうですね〜。カエデさんにはぁ戦い方を覚えてもらわないと〜」

「はいはーい、私がカエデ君に槍の使い方を教えます」

「何を言っているんだ。男は黙って剣術だろ」

「いえいえ、私が〜黒魔術をぉ、教えます〜」

 言い争いを始める三人。俺はとりあえず戦うことができれば問題ないのだが、

(黒魔術?)

 何か危なさそうな言葉が出てきたのは俺の気のせいか?

「あ、あのさ三人とも。一人ずつ日にちを分けて教えてくれればいいかな。沢山覚えておいた方が、身の安全を確保できそうだし。黒魔術は怖いけど」

「何か納得いかないけど、それも確かにそうね。カエデ君の言う通り当番制にする?」

「ちっ、そうだな。オ……私もそれでいいと思う」

「カエデさんがぁ、覚えてくれるならぁ、私は構いませんよ〜」

「ありがとう三人とも」

 その後色々話し合い、明日から一人一日二時間を目処に特訓が始まることが決まり解散となった。とは言っても、遺跡から戻ってきたのは、お昼頃で、この話し合いをしたのも昼食の時。時間がまだ余っているので、我が家の家財道具などの準備を始めることにした。

「家財道具とかは協力してくれるとは確かに言っていたけどさ、これは何だ?」

 で、ルチリアが俺の目の前に用意したのは、

「木よ」

 そこの森から取ってきたりでもしたのだろう大量の木材。俺はそれを見て、思わず開いた口が塞がらなかった。

「これでどうしろと」

「作るのよ。机なり椅子なり、最初から。木で作れない物などは、島にある大きな商業の街があるので、そこへと買いにいくの」

「つまりほとんど全て、自分の手で作れと」

「そういう事」

「そういう事は先に言え!」

 ということで用意してくれるであろうと思っていた家財道具は全て自分で作ることに。どうりでこの村は木材建築が多いわけだ。

「しかも切る物とかもほとんどノコギリに近いし、自分で作らせる気満々かよ」

 切る際に必要なノコギリや組み立ての際に使うトンカチに似たような物が、この世界にも存在しているらしく、俺は不慣れな大工作業に悪戦苦闘しながら、午後を過ごすことになった。

 そしてすっかり日が暮れた頃、夕飯ができた事を伝えにルチリアがやって来た。

「お疲れカエデ、どう調子は?」

「大体は……完成……したよ」

 かれこれ五時間近く集中して作業をした為、俺は息を切らしながらルチリアに報告する。最低限生活に必要な家財道具は用意できたので、後は買いにいくくらいだ。

「す、すごい。これ全部作ったの?」

「ああ」

「お疲れ様」

「ああ」

(これはもう、明日は筋肉痛になりそうだな)

「じゃあ折角だし、この勢いで私のも作ってくれないかな」

「もう勘弁してくれ!」

 こうして今日もまた、ポカミル村での一日は、幕を閉じるのだった。

 今日の教訓 馬の少女には気をつけろ

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