異世界の村で始める獣人とのハーレム生活
第10話人と獣 後編
人と獣を繋ぐ架け橋になってほしい。
それがカグヤが俺をこの世界に呼んだ理由。その言葉の重みが今の俺には分からなかった。
「俺にそんな事できるのか?」
「この世界の者ではない、異世界からやって来たお主ならきっとできると妾は思っておる。勝手過ぎるかもしれぬが、唯一この世界で獣人に対して差別なしで接せるのは、お主ただ一人なのじゃ」
「確かに俺はそういう差別とか好きじゃないけど、その役割俺一人には大きすぎないか?」
「そうかもしれぬが、お主には既に仲間がおるじゃろ?」
「ルチリア達の事か? でもまだ出会って四日だぞ?」
しかもついさっき、家出してきたばかりだし。
「別に急げとは言っておらぬ。時間がかかってもよい。例の遺跡の調査もあるじゃろうし」
「知っているのか? 遺跡の事」
「噂には聞いておったが、近頃異常発生している魔物にも関係があるらしいのう」
「そうらしいな。でもそれ以上に問題が一つある」
「問題? 何のことじゃ」
「てっきりあの遺跡には魔物がわんさかいると思っていたが、中にいたのはお前達と同じ獣人だった」
「何じゃと!」
一昨日の時点では思わなかったのだが、よく考えてみたらおかしい。あの遺跡には魔物はおろか獣人しかいなかった。あそこには魔物の異常発生の原因があるかもしれないと踏んでいたが、魔物ではなく馬がいたくらいだ。しかもそれを統括しているであろう主の存在がある。その主も魔物とは考えにくいだろうし、謎だけが残っている。
「そうなるともっと調査が必要じゃな。お主達も続けるのじゃろ?」
「ああ。かなり深そうだしあの遺跡」
「その為にもあの村の住人と協力するのじゃろ?」
「そうだな」
「だったら村を出ている場合じゃないじゃろ。お迎えも来てもらっているのじゃから、ちゃんと戻るのじゃ」
「お迎え?」
俺がそう言うと、後ろでガタッと音がする。
「折角できた仲間を無駄にしないように、気をつけるのじゃぞ。折角ハーレムが作れる環境にいるのじゃから」
「余計なお世話だけど、家出はもうしない事にするよ」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「もう! 急にいなくなって、心配したのよ!」
「悪かったって」
カグヤと別れ、お迎えに来ていたルチリアとの二人での帰り道。今回も初めて来た時と同じように、ルチリアが俺を抱え木の上を移動している。
「でもどうして突然、村なんか飛び出したの? しかもさっきまで話していたのって、この島の島長じゃない」
「勝手に飛び出したのは、命を狙われるのが嫌だったんだよ。いつ殺されるか分からなかったし」
「何かあったら私達が守るって言ったでしょ」
「だから何か起きたら遅いんだって。元の世界に戻る前に殺されてたまるかよ」
「気持ちは分かるけど……。でもだったらどうして、島長さんに会ったの?」
「会ったのは本当に偶然なんだよ。偶然なんだけど、その、色々あるんだよ」
「色々って何?! まさか島長に手を出して……」
「俺がそんな事するか!」
そっちの意味での獣になった覚えは一つもない。事情が事情なだけに、あまり話したくないだけだ。
「話は変わるんだけどさ、今更だけどお前は俺みたいな普通の人間と接しても平気なのか?」
「何よ今更。どうしてそんな事聞くのよ」
「実はな」
街に入ろうとした時の事をルチリアに話す。カグヤの話も含めてなのだが、他の二人も含めて俺と分け隔てなく話をしている事にちょっと疑問を持っていた。
「あー、やっぱりそうなったんだ。まあ、仕方ないよ、知っての通りこの島は特殊だし」
「でもお前達はどうして俺を嫌ったりしないんだ?」
「多分一番の理由はカエデ君がこの世界の人間じゃないからかな。別に私も普通の人間が好きでもないし、それが理由だと思う」
「じゃあ島から出ることは考えてないのか?」
「当たり前でしょ。人間がいる本土なんて行きたくないわよ」
当然のように答えるルチリア。やはりそうなんだな。俺が特殊なだけな話で、この世界は人と獣人の関係は最悪。俺はそれを良好にする役割を課せられてしまった。
(本当にできるのか? 俺に)
ある意味では味方がいないこの状況で、何をどうすればいいのだろうか?
「どうしたの? カエデ君」
「ちょっと考え事」
「ふーん、島長さんと何を話していたか分からないけど、私に何か協力できることが言ってね」
「ああ」
協力できることがあったら、な。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
村に戻った後、俺は三人に長時間の説教をされた。無断で村を出たこと、訓練をサボった事。今回は俺に非があるので素直に謝罪の言葉を述べた。
「でも確かに、命を狙われるのはいいもんじゃないな。私は慣れたけどそういうの」
「あの頃は大変でしたよねぇ」
「ええ、本当」
「お前ら一体どんな生活を送ってきたんだよ」
『サバイバル生活』
「口揃えて言うなよ……」
本当にどんな生活だよ。
「あ、そうだカエデ。明日一つ頼まれてほしいことがあるんだ」
「面倒臭いこと以外でな」
「サボりに拒否権はなし! だから明日ちょっと早く起きてほしい」
「朝からやる事なのかよ」
「朝からじゃないといい獲物捕まえられないんだよ」
「獲物?」
翌日の早朝、
「えっとさポチ、今からする事って……」
「狩りだよ、狩り」
「狩り? いやこれって……」
ポチに連れられてやって来たのは村の近くにある川。両手に持っているのは、この世界の釣り具みたいなもの。ようは今から俺達がする事は、
「釣りだろ」
朝釣りだった。
それがカグヤが俺をこの世界に呼んだ理由。その言葉の重みが今の俺には分からなかった。
「俺にそんな事できるのか?」
「この世界の者ではない、異世界からやって来たお主ならきっとできると妾は思っておる。勝手過ぎるかもしれぬが、唯一この世界で獣人に対して差別なしで接せるのは、お主ただ一人なのじゃ」
「確かに俺はそういう差別とか好きじゃないけど、その役割俺一人には大きすぎないか?」
「そうかもしれぬが、お主には既に仲間がおるじゃろ?」
「ルチリア達の事か? でもまだ出会って四日だぞ?」
しかもついさっき、家出してきたばかりだし。
「別に急げとは言っておらぬ。時間がかかってもよい。例の遺跡の調査もあるじゃろうし」
「知っているのか? 遺跡の事」
「噂には聞いておったが、近頃異常発生している魔物にも関係があるらしいのう」
「そうらしいな。でもそれ以上に問題が一つある」
「問題? 何のことじゃ」
「てっきりあの遺跡には魔物がわんさかいると思っていたが、中にいたのはお前達と同じ獣人だった」
「何じゃと!」
一昨日の時点では思わなかったのだが、よく考えてみたらおかしい。あの遺跡には魔物はおろか獣人しかいなかった。あそこには魔物の異常発生の原因があるかもしれないと踏んでいたが、魔物ではなく馬がいたくらいだ。しかもそれを統括しているであろう主の存在がある。その主も魔物とは考えにくいだろうし、謎だけが残っている。
「そうなるともっと調査が必要じゃな。お主達も続けるのじゃろ?」
「ああ。かなり深そうだしあの遺跡」
「その為にもあの村の住人と協力するのじゃろ?」
「そうだな」
「だったら村を出ている場合じゃないじゃろ。お迎えも来てもらっているのじゃから、ちゃんと戻るのじゃ」
「お迎え?」
俺がそう言うと、後ろでガタッと音がする。
「折角できた仲間を無駄にしないように、気をつけるのじゃぞ。折角ハーレムが作れる環境にいるのじゃから」
「余計なお世話だけど、家出はもうしない事にするよ」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「もう! 急にいなくなって、心配したのよ!」
「悪かったって」
カグヤと別れ、お迎えに来ていたルチリアとの二人での帰り道。今回も初めて来た時と同じように、ルチリアが俺を抱え木の上を移動している。
「でもどうして突然、村なんか飛び出したの? しかもさっきまで話していたのって、この島の島長じゃない」
「勝手に飛び出したのは、命を狙われるのが嫌だったんだよ。いつ殺されるか分からなかったし」
「何かあったら私達が守るって言ったでしょ」
「だから何か起きたら遅いんだって。元の世界に戻る前に殺されてたまるかよ」
「気持ちは分かるけど……。でもだったらどうして、島長さんに会ったの?」
「会ったのは本当に偶然なんだよ。偶然なんだけど、その、色々あるんだよ」
「色々って何?! まさか島長に手を出して……」
「俺がそんな事するか!」
そっちの意味での獣になった覚えは一つもない。事情が事情なだけに、あまり話したくないだけだ。
「話は変わるんだけどさ、今更だけどお前は俺みたいな普通の人間と接しても平気なのか?」
「何よ今更。どうしてそんな事聞くのよ」
「実はな」
街に入ろうとした時の事をルチリアに話す。カグヤの話も含めてなのだが、他の二人も含めて俺と分け隔てなく話をしている事にちょっと疑問を持っていた。
「あー、やっぱりそうなったんだ。まあ、仕方ないよ、知っての通りこの島は特殊だし」
「でもお前達はどうして俺を嫌ったりしないんだ?」
「多分一番の理由はカエデ君がこの世界の人間じゃないからかな。別に私も普通の人間が好きでもないし、それが理由だと思う」
「じゃあ島から出ることは考えてないのか?」
「当たり前でしょ。人間がいる本土なんて行きたくないわよ」
当然のように答えるルチリア。やはりそうなんだな。俺が特殊なだけな話で、この世界は人と獣人の関係は最悪。俺はそれを良好にする役割を課せられてしまった。
(本当にできるのか? 俺に)
ある意味では味方がいないこの状況で、何をどうすればいいのだろうか?
「どうしたの? カエデ君」
「ちょっと考え事」
「ふーん、島長さんと何を話していたか分からないけど、私に何か協力できることが言ってね」
「ああ」
協力できることがあったら、な。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
村に戻った後、俺は三人に長時間の説教をされた。無断で村を出たこと、訓練をサボった事。今回は俺に非があるので素直に謝罪の言葉を述べた。
「でも確かに、命を狙われるのはいいもんじゃないな。私は慣れたけどそういうの」
「あの頃は大変でしたよねぇ」
「ええ、本当」
「お前ら一体どんな生活を送ってきたんだよ」
『サバイバル生活』
「口揃えて言うなよ……」
本当にどんな生活だよ。
「あ、そうだカエデ。明日一つ頼まれてほしいことがあるんだ」
「面倒臭いこと以外でな」
「サボりに拒否権はなし! だから明日ちょっと早く起きてほしい」
「朝からやる事なのかよ」
「朝からじゃないといい獲物捕まえられないんだよ」
「獲物?」
翌日の早朝、
「えっとさポチ、今からする事って……」
「狩りだよ、狩り」
「狩り? いやこれって……」
ポチに連れられてやって来たのは村の近くにある川。両手に持っているのは、この世界の釣り具みたいなもの。ようは今から俺達がする事は、
「釣りだろ」
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