異世界の村で始める獣人とのハーレム生活

りょう

第13話悲劇的ビフォーアフター

 こっちの意思は全くの無視で、突然始められたフォルナとの戦い。まだ二回しか学んでいないというのにいきなり実践だなんて、少し難易度が高すぎる。

「今度こそ勝負つける」

「決着も何も、戦ったのは俺じゃないだろ、っと」

 フォルナが放つ弓矢は、連射性が高く、避けたと思ったらすぐに次の矢が飛んでくるので、なかなか隙が見つからない。

(遠距離に対して近距離は不利か)

 槍の柄を長く持って、なるべく遠い距離からの攻撃をできるようにする。

「カエデ君、冷静にね。必ず隙はどこかにあるから」

「分かっているって」

 その隙を見逃すと、また振り戻しに戻されることも。だから冷静になって、少しずつ確実に距離を詰めていく。

(よし、この距離なら一撃くらいなら)

 ほんの一瞬の隙を見て、彼女の胴体目がけて突きをいれる。

「こんなの当たらない」

 だがそれは簡単に避けられてしまうが、俺の狙いはここからだ。

「それなら!」

 槍をすぐに持ち替え、短く持つ。遠距離攻撃相手に、ゼロ距離まで詰めることができたので、俺は一気に有利になる。

「喰らえ!」

 短く持ったので、攻撃のモーションに時間がかからない。より素早く突きをお見舞いできる。これで足を取れば……、

「甘い」

 だがそこまでの攻撃をまるで予想していたかのように、何とフォルナは矢を利用して近距離での攻撃をしかけて来た。

「くっ」

 何とかその攻撃をかわすものの、彼女は更なる攻撃として、馬の前足による踏みつけを行ってきた。残念ながら俺はその前の攻撃を避けるのに精一杯で、次の攻撃を避けることはできなかった。

「ごふっ」

 馬の踏みつけは、すごく痛いと聞いていたがそれを腹に直に食らってしまったら、昼に食べた色々な物が……。

「か、カエデ君!」

 俺は口からあらぬ物を吐きながら、その場に倒れた。

 こうして俺の初めての戦いは、彼女に傷一つつけられずに、無惨な敗北を喫したのであった。

 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
 分かってはいた。こんな結末になる事を。

 遺跡で会った時から分かってはいたが、フォルナは間違いなく強い。まだ槍を学び始めて二日の俺に敵うような相手ではなかった。

「だから言っただろ。無理だって」

 フォルナとの戦いが散々な結果に終わったその日の晩ご飯、俺はあまりの悔しさについつい弱音を吐いてしまった。

「全く情けねえな。あんな馬一頭狩れないと、この先が辛いぞ」

「無茶言うなよ。言っておくが俺は全てにおいて初心者だ。その俺がいきなりの実践で、あんな奴に勝てるわけないだろ」

「そうやって〜、諦めたら〜、そこで試合は終了で〜す」

「どっかの先生みたいに言うな。あとその試合は、もう終了しているからな!」

 せめて一発くらいは攻撃を当てたかった。それなのにかすりもしなかったから、当然悔しい。あんな無惨な負け方、どうしても納得がいかない。

「でもカエデ君は、初日よりいい動きをしていたわよ。しかもフォルナとの戦いの時は、更によくなっていたし。もっと訓練を重ねれれば、いつかは勝てるって」

「勿論諦めたわけじゃないよ。負けっぱなしは男として格好悪いからな。いつかは絶対にリベンジする」

「その意気よ」

 だからこのままでは終わらしたくなかった。この借りはいつかは返さなければならない。

「そういえばその肝心のフォルナは?」

「あの後から見かけてないけど、どこか行ったのかな」

「まあ、俺的にはそれの方が助かるけどな」

 リベンジする前に殺されるのは絶対に嫌だし。

 そういえばここに来た時は、絶対に殺すとか言っていたのに、どうして今日殺気を感じなかったんだろう。

(今日で決着つくと思っていたんだけど)

 まあ、死ななかったからいいか。

 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「えっとさフォルナ、まずこれは何かな」

「私の物」

「いや、それは何となく分かるけど、どうしてそれがここにあるんだ?」

「持ってきた」

「どこから」

「遺跡から」

 夕飯を終え、家に戻るとフォルナが居たのだが、それ以上に衝撃を与えたのが、

「遺跡から、じゃなくて。じゃあ俺のここにあった家具とかはどこへ行った?」

「燃やした」

「は?」

「よく燃えた」

「まあ木でできてたからな。それで何故燃やしたんだ?」

「邪魔だったから」

「邪魔って、ここは俺の家なんですけど」

「違う。私が勝ったから私の家」

「そんなルールあったか?」

「今作った」

「うぉぉい!」

 何とさっきまであったはずの、俺お手製の家具達が全て消失。その代わりに、何故かフォルナの私物が全てを占拠していた。

 そう、俺の家は乗っ取られたのだ。

 馬の手で。

「私ここ気に入ったから住む。よろしく」

「よろしく、じゃない!」

「よろしくねっ!」

「可愛く言っても駄目だ。あとそのトーンで言ったところで、全く可愛くないからな!」

 何かもう色々とカオスな事になってしまい、俺は意気消沈してしまう。さっきまでのリベンジ心とかそんなの全て消えた。今俺の心にあるのはただ一つ。

「今すぐここから、出ていけぇぇ!」

 フォルナをこの家、いや村から追い出すことだった。

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