異世界の村で始める獣人とのハーレム生活
第16話カグヤ再び
身も心も真っ暗になった午後を終え迎えた夜。俺はルチリアに改めて昨日の事を詫びた。
「いいの、いいの。私も疲れててあんな事言ってしまっただけだから。気にしないで」
「でもミルフィーナは、ルチリアの元気がないって言ってたけど」
「大丈夫。ちょっと夢見が悪かっただけだから」
彼女は俺の謝罪にそう言ったが、俺はどうもそれが腑に落ちなかった。昨日のあの反応の仕方やあの言葉、どれも引っかかるものばかりだったし、今だってどこか無理しているそうな気がする。
ただ、俺にはそれについて聞けるような勇気はなかった。そこから決して踏み入れてはならない領域のような気がしたからだ。
(俺は普通の人間、彼女達は獣人。同じ人ではあるのに、どうしてここまで違うんだろう)
間もなくこの世界に来て一週間が経つ。その間に沢山の獣人達と出会ってきたけど、皆普通の人間となに一つ変わらない。それだというのに、この世界では徹底的な差別が行われている。実際にその現場を見たわけではないけれど、話を聞く限り相当なものだと思って違いない。
『随分と悩んでいるようじゃのう』
布団に寝転がりながら悩んでいると、突然頭の中に声が聞こえる。何度目かとなるその声に、俺はもう驚きもしなかった。
「あんたは超能力者か何かか?」
声を出すわけにはいかないので、俺は頭の中で言葉を浮かべる。するとちゃんとカグヤから返事が返ってきた。
『別に超能力などではない。これも一種の力なのじゃ』
「力ねえ。それで、いきなり何の用だ」
『明日時間空いておるか? お主に話したいことがある』
「時間は夕方からなら空いているけど、話って?」
『聞けば分かる。明日妾が直接伺うから、時間まで待っておれ』
「気になるけど分かった。待っている」
『それではまた明日』
そうカグヤが言うと、まるで電話のやり取りのようにプツンと会話が切れる。どうやら用件はそれだけだったらしい。
(これって一種の文明の利器、かな)
携帯での通話みたいな今のやり取りに、俺は少しだけこの世界の文明に触れたような感じがしたのだった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
そして翌日、ルチリアとの特訓を終え少しした後に、カグヤがポカルミ村へとやってきた。島長がやって来ただけあって、最初はルチリアとかも大騒ぎしていたが、今はすっかり落ち着いていた。
「お主とこうして直接話すのは、二度目じゃな」
「しかも話したのもつい四日前くらいだろ」
「どうじゃ、こっちでの暮らしは」
「まあ、ようやく慣れてきたって所かな」
普段皆が集まる集会場みたいな場所を借りて、俺とカグヤは話を始める。まるでカグヤは俺の親みたいな言い方をさっきからしているが、そこまで心配されるような事はしてないはず。
「それで話ってなんだよ」
「実はお主に見てもらいたい物があってのう」
そう言ってカグヤは何かを取り出す。それは何かが書かれている紙の束だった。表紙には報告書と書いてある。
「何かの報告書か、これ」
「そうじゃ。実はこの報告書の内容もお主をこの世界に呼んだ直接的な理由の一つでもある」
「俺をこの世界に呼んだ理由の一つ? これが?」
試しに手にとって、パラパラとめくってみる。何か複雑な言葉ばかりが書いてあって、何がなんだか分からなかったが、俺の目にある文字が目に入った途端、体が凍りついた。
「え? これって……」
「そう。それはお主、山村楓についての調査報告書じゃ」
「いつの間にこんなの作ったんだよ。というか、呼んだ理由の一つって事はまさか」
「そう。この調査はお主がこの世界に来る前から行われていたのじゃ」
「なっ!?」
じゃあ彼女がここに俺を呼んだ理由は、ハーレムの願いを叶える為ではなくて……もっと別の何かがあるのか?
更に報告書を読み進めて行くと、更に驚く言葉が書かれていた。
『以上のことから、山村楓は要注意人物である』
「え?」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
一方その頃、外で二人の様子を伺う三人はというと。
「わあ、本当に島長さんです〜」
「珍しいな。こんな私達の村に来るなんて」
「カエデ君と何か関わりがありそうなんだけど、気のせいかな」
小さな小窓から覗きながら語る三人。そもそも島長である彼女が、外へ出ていることすら珍しい話だったりして、今目の前で起きていることすらも、本来なら夢かと思ってしまうくらいの出来事だった。
「あ、何かカエデ君に渡していますぅ」
「すごい厚そうだけど、何だろ」
かなり離れた距離なので、何が書いてあるかまでは見えないが、彼の反応でそれがどんな物なのか少しだけ予想ができた。
「もしかして黒魔術の真髄を……」
「それはまずないから安心して」
「でも明らかに怪しそうだな。それにカエデのあの反応、余程ショッキングの内容なのかな」
「まさか黒魔術がトラウマになって……」
『それはあんたのせいだ』
そんな話で盛り上がる三人。だがそれとは裏腹に、その資料を見ているカエデの手は震えていた。
「これ本当に俺を調査した結果なのか?」
「勿論」
「だったらどうして要注意人物をわざわざ呼んだんだ?」
「そんなの決まっておる。妾達はあくまでこっちの世界での山村楓について調査したからじゃ」
「は? それはどういう……」
「この世界に実は実在したのじゃ。お主と同姓同名の山村楓という人物が」
「いいの、いいの。私も疲れててあんな事言ってしまっただけだから。気にしないで」
「でもミルフィーナは、ルチリアの元気がないって言ってたけど」
「大丈夫。ちょっと夢見が悪かっただけだから」
彼女は俺の謝罪にそう言ったが、俺はどうもそれが腑に落ちなかった。昨日のあの反応の仕方やあの言葉、どれも引っかかるものばかりだったし、今だってどこか無理しているそうな気がする。
ただ、俺にはそれについて聞けるような勇気はなかった。そこから決して踏み入れてはならない領域のような気がしたからだ。
(俺は普通の人間、彼女達は獣人。同じ人ではあるのに、どうしてここまで違うんだろう)
間もなくこの世界に来て一週間が経つ。その間に沢山の獣人達と出会ってきたけど、皆普通の人間となに一つ変わらない。それだというのに、この世界では徹底的な差別が行われている。実際にその現場を見たわけではないけれど、話を聞く限り相当なものだと思って違いない。
『随分と悩んでいるようじゃのう』
布団に寝転がりながら悩んでいると、突然頭の中に声が聞こえる。何度目かとなるその声に、俺はもう驚きもしなかった。
「あんたは超能力者か何かか?」
声を出すわけにはいかないので、俺は頭の中で言葉を浮かべる。するとちゃんとカグヤから返事が返ってきた。
『別に超能力などではない。これも一種の力なのじゃ』
「力ねえ。それで、いきなり何の用だ」
『明日時間空いておるか? お主に話したいことがある』
「時間は夕方からなら空いているけど、話って?」
『聞けば分かる。明日妾が直接伺うから、時間まで待っておれ』
「気になるけど分かった。待っている」
『それではまた明日』
そうカグヤが言うと、まるで電話のやり取りのようにプツンと会話が切れる。どうやら用件はそれだけだったらしい。
(これって一種の文明の利器、かな)
携帯での通話みたいな今のやり取りに、俺は少しだけこの世界の文明に触れたような感じがしたのだった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
そして翌日、ルチリアとの特訓を終え少しした後に、カグヤがポカルミ村へとやってきた。島長がやって来ただけあって、最初はルチリアとかも大騒ぎしていたが、今はすっかり落ち着いていた。
「お主とこうして直接話すのは、二度目じゃな」
「しかも話したのもつい四日前くらいだろ」
「どうじゃ、こっちでの暮らしは」
「まあ、ようやく慣れてきたって所かな」
普段皆が集まる集会場みたいな場所を借りて、俺とカグヤは話を始める。まるでカグヤは俺の親みたいな言い方をさっきからしているが、そこまで心配されるような事はしてないはず。
「それで話ってなんだよ」
「実はお主に見てもらいたい物があってのう」
そう言ってカグヤは何かを取り出す。それは何かが書かれている紙の束だった。表紙には報告書と書いてある。
「何かの報告書か、これ」
「そうじゃ。実はこの報告書の内容もお主をこの世界に呼んだ直接的な理由の一つでもある」
「俺をこの世界に呼んだ理由の一つ? これが?」
試しに手にとって、パラパラとめくってみる。何か複雑な言葉ばかりが書いてあって、何がなんだか分からなかったが、俺の目にある文字が目に入った途端、体が凍りついた。
「え? これって……」
「そう。それはお主、山村楓についての調査報告書じゃ」
「いつの間にこんなの作ったんだよ。というか、呼んだ理由の一つって事はまさか」
「そう。この調査はお主がこの世界に来る前から行われていたのじゃ」
「なっ!?」
じゃあ彼女がここに俺を呼んだ理由は、ハーレムの願いを叶える為ではなくて……もっと別の何かがあるのか?
更に報告書を読み進めて行くと、更に驚く言葉が書かれていた。
『以上のことから、山村楓は要注意人物である』
「え?」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
一方その頃、外で二人の様子を伺う三人はというと。
「わあ、本当に島長さんです〜」
「珍しいな。こんな私達の村に来るなんて」
「カエデ君と何か関わりがありそうなんだけど、気のせいかな」
小さな小窓から覗きながら語る三人。そもそも島長である彼女が、外へ出ていることすら珍しい話だったりして、今目の前で起きていることすらも、本来なら夢かと思ってしまうくらいの出来事だった。
「あ、何かカエデ君に渡していますぅ」
「すごい厚そうだけど、何だろ」
かなり離れた距離なので、何が書いてあるかまでは見えないが、彼の反応でそれがどんな物なのか少しだけ予想ができた。
「もしかして黒魔術の真髄を……」
「それはまずないから安心して」
「でも明らかに怪しそうだな。それにカエデのあの反応、余程ショッキングの内容なのかな」
「まさか黒魔術がトラウマになって……」
『それはあんたのせいだ』
そんな話で盛り上がる三人。だがそれとは裏腹に、その資料を見ているカエデの手は震えていた。
「これ本当に俺を調査した結果なのか?」
「勿論」
「だったらどうして要注意人物をわざわざ呼んだんだ?」
「そんなの決まっておる。妾達はあくまでこっちの世界での山村楓について調査したからじゃ」
「は? それはどういう……」
「この世界に実は実在したのじゃ。お主と同姓同名の山村楓という人物が」
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