夢見まくら

触手マスター佐堂@美少女

第十九話 悪夢のはじまり

「……ん」
 目が覚めた。
 部屋の中には、オルゴールの音が響いている。
 わたしが寝るときに寂しくないようにと、ヨーゼフさんが必ず置いていってくれているものだ。
 どういう仕掛けなのかはわからないが、そのオルゴールの音が途切れることはない。
 その美しい音色を聴きながら、わたしの意識がよりはっきりしてくるのが感じられた。
「――あ」
 ……しかし、今日はそれだけではなかった。
 忘れかけていた、けれどもはっきりとした感触があった。

 瞼が、動く。

「…………」
 ドキドキしながら、目を開いた。
「……あれ?」
 しかし、見えるはずの景色はなく、わたしの目に飛び込んできたのは全くの闇だった。
 今までにないほどにはっきりした、目を開いている感覚があるにもかかわらず。
「……あれー」
 どれだけ瞼を閉じたり開いたりしても、一向に何かが見える気配はなかった。
 そうして、わたしがウンウン唸っていると。
「おはよう、サツキ」
 いつものように、扉が開く音と共にヨーゼフさんが部屋に入ってくる音が聞こえた。
「あ、ヨーゼフさん。おはようございます」
 そうヨーゼフさんに返事をしつつ、瞼の動きは止めなかった。
「おや? ひょっとして、目が見えるようになったのかね?」
「……いや、どうなんでしょうか。感覚はあるんですけど、何も見えなくって」
 わたしのその言葉に、ヨーゼフは合点がいったようで、
「ああ、それは単純に明かりが点いていないからだろうねェ」
「あ、そうなんですか。点けてもらってもいいですか?」
「もちろん構わないとも。一度、目を閉じなさい」
 わたしは言われた通り、目を閉じた。
「部屋の明るさは暗めにしてあるから大丈夫だとは思うが、一応、ゆっくり目を開きなさい」
「はい」
 ヨーゼフさんの言葉に従って、ゆっくりと目を開いた。
「……っ」
 久しぶりの光に目を細める。
 だが、本当に弱い光のようで、部屋自体は薄暗い。
 最初にわたしの視界に入ってきたのは、天井だった。
 想像していたよりも、かなり大きく、高い。ちょっとしたホールぐらいの大きさがあるように見える。
 ……それにしてもこの部屋、広すぎるような気がする。
 わたしは少し不思議に思ったが、まあそういうこともあるだろう、と無理矢理自分を納得させた。
「ワタシの顔が見えるかね?」
 わたしの顔を覗き込むようにして、ヨーゼフさんが立っていた。
「……はい」
 わたしの目が見えるようになったことで、ずっと謎だったヨーゼフさんの容姿が明らかになった。
 見た感じ、年齢は四十代前半から後半ぐらいで、スーツらしきものに身を包んでいる。
 小皺が目立ち始めているものの、外国人特有の彫りの深い精悍な顔立ちで、薄緑色の瞳に、赤茶色の髪を少し長めに伸ばしていた。
「……思ってたよりハンサムさんですね」
「それはどうも」
 ヨーゼフさんは朗らかに笑った。
「では、始めるとしようかねェ」
「……始める?」
 わたしの怪訝な声にヨーゼフさんが反応した。
「そうとも。キミの目が見えるようになったら、見せようと思っていたモノがあるのだよ」
「そうなんですか?」
「ああ。――よっこらしょ」
 そんな気の抜けるような掛け声と同時に、脇の下に両手を入れられて、わたしの身体が持ち上げられた。
「え!? ちょ、何するんですか!?」
 そんなに軽々と持ち上げられるとは思っていなかったわたしは狼狽する。
「何って、持ち上げただけじゃないかね?」
 ヨーゼフさんは口元に微笑をたたえている。
「さすがに、その…………は、恥ずかしいです……」
 普段は気にしないようにしているが、わたしは……その……服を着ていないのだ。
「あはははは」
「もう、笑わないでくださいよ!」
「いやいや、すまないねェ」
 それにしても、ヨーゼフさんの手は本当に大きい。
 ……あれ?
 ちょっと待って。
 ヨーゼフさんの手、さすがに大きすぎないか?
 肌から伝わってくる感触からして、ヨーゼフさんの手がほとんどわたしの胴体を一周しているような……。
「前を見なさい」
 ヨーゼフさんに顔の位置を調整され、わたしは無理矢理、前を向かせられた。
「――――」
 そこで視界に入ったモノを認識して、
「――――――え?」
 わたしの思考は、停止した。

 化物。

 そうとしか形容できないモノが、わたしの目の前にいた。
 体色は赤紫色。
 人間のような顔だが、頭はかなり小さく、毛は生えていない。
 だらりと垂れ下がった……腕、なのか? ……先端はいくつかに分かれているものの、どちらかと言うと触手と呼んだ方がよさそうなものが身体の左右から飛び出している。
 人間であれば足が生えているであろう部分にも、腕の部分と似たようなモノがくっついていた。
「……なに、これ」
 世にも奇妙な姿をしたそれ・・は、充血した瞳で、わたしのことをずっと見つめている。
 不気味だった。
 それは、ただただ不気味で、見る者に嫌悪感を抱かせる姿形をした化物だった。
 これは何なのだろうか。
 どうしてヨーゼフさんは、わたしにこんな化物を見せたかったのだろうか。
「ああ。この角度ではわかり辛いねェ」
 そう言うや否や、ヨーゼフさんはわたしの顎を指で優しく押し上げて、顔を少し上に向けさせた。
「――――は?」
 意味がわからないものが、わたしの目に写った。

 それ・・の上には、ヨーゼフさんの顔があった。

「――――」

 そして、それ・・は、ヨーゼフさんに抱きかかえられていた。

「…………は……? ……え?」
 意味がわからない。意味がわからない。
 意味が。
「……なんですか、これ。何なんですか、これは!?」
「これは鏡だよ。キミの家には無かったのかね?」
 そんなことを聞いているんじゃない。
 だから、これが鏡だということは、今のわたしは何故か化物のような姿をしているということで――
「何をそんなに驚いているのかね?」
 クスクスと笑いながら、ヨーゼフさんがわたしにそう問いかけた。

「――ワタシは魔術師だよ。サツキ」

 それは、一度。
 だいぶ前に一度だけ、ヨーゼフがわたしに言った言葉だった。
「忘れていたのかね? ワタシがキミの敵であるということを」
「……そ、れは……」
「考えることを放棄していたのかね? ワタシがどうしてキミに対して友好的なのかということを」
「…………」
「さぞや、楽だったことだろうねェ」
 ヨーゼフは一度そこで言葉を止めて、

「何も考えずに、怠惰に沈んでいるのは」

「――ッ!」
「……でも、それも仕方のないことだったのかもしれないねェ」
「え?」
 まさか、ヨーゼフの口からそんな言葉が発せられるとは思っていなかったわたしは、目を見開いた。
「辛かったのだろう?」
「――――」
「自分を“前橋皐月”として見てくれる人間が、ひとりもいなかったことが」
「――――」
 ……その通りだ。
 わたしは、辛かった。
 “高峰”として、常人の理解の及ばない存在として扱われることが。
「苦しかったのだろう?」
「――――」
「高峰として両親から期待され、高峰としての能力の低さを低脳共に笑われ、物心ついた頃から心の中を高峰皐月に巣食われていたことが」
「――――」
 ……その通りだ。
 わたしは、苦しかった。
 それらはいつも、わたしを苦しめた。
「寂しかったのだろう?」
「――――」
「自分のそばにいてくれる人間が、ひとりもいなくなってしまったことが」
「――――っ!」
 …………その、通りだ。
 わたしは、寂しかった。
 みんながいなくなって、寂しかった。
 ……海斗がいなくなって、すごく寂しかった。
「辛かったねェ。苦しかったねェ。寂しかったねェ。ああ、かわいそうに」
「――――――――」
 ヨーゼフは、憂うような、慈しむような表情で、わたしの頭を撫でる。
 ……ヨーゼフの言葉が小さな棘のように、わたしの心に突き刺さっていた。
 それがどうしてなのかわからなくて、もどかしい。
「ああ」
 されるがままになっていたわたしの頭を撫でる手が不意に止まり、

「――本当に、自分のことしか考えていないねェ、サツキ」

 ――その言葉に、わたしの心の奥底に眠っていた何かが、反応した。
「……え?」
「そうじゃないかね。キミが他の人間のことを少しでも気にかけていたのなら、この半年の間、キミとワタシとの会話の中で、キミのほうから他の人間の話題が一切出なかったことの説明がつかない」
「…………」
「ワタシに拘束されていると知っていた、高峰皐月のことを、キミは少しでも考えたのかね?」
「…………」
「キミの安否を心配していたであろう両親のことを、キミは少しでも考えたのかね?」
「…………」
「キミがいなくなって嘆き悲しんだであろう幼なじみのことを、キミは少しでも考えたのかね?」
「…………」
「キミは自分の不幸を嘆くばかりで、キミのことを気にかけてくれる人間のことなど、全く考えていなかったのだよ」
 鏡の中のヨーゼフの顔が、わたしの顔にすーっと近づく。
「キミは、自分が世界で一番不幸だとでも思っているのかね?」
 ヨーゼフの翡翠色の瞳が、わたしの瞳を見つめた。

「――なんたる傲慢。なんと愛しき愚かしさよ」

「ッ!」
 長い長い眠りから目覚めたような、そんな感覚。
 わたしの心の奥底で、腐り、澱み、沈みきっていた自尊心が、反抗心が、鎌首をもたげた。
「――全部、あなたのせいじゃないですか」
 わけのわからない激情が、わたしの身体を支配する。
「全部、あなたが引き起こしたことじゃないですか!」
 わたしが悲惨な目にあっているのは、全てヨーゼフが原因だ。
 それなのに、その原因であるヨーゼフに、わたしの欠点を指摘されている。
 ふざけた話だ。
 わたしがその人たちのことを気にかけていなかったとして、それがなんだというのか。
 ヨーゼフさえいなければ、わたしがこんな目に遭うこともなかったのだから。
 ……そうだ。全部ヨーゼフが悪い。
 ヨーゼフさえいなければ、わたしは、わたしは、まともなままでいられたのに――
「全部! 全部あなたが原因じゃないですか!! わたしは何も悪くないっ!」

「――何か、勘違いをしていないかね?」

 わたしが感情を剥き出しにしてヨーゼフを糾弾したにもかかわらず、ヨーゼフは相変わらず穏やかに微笑んでいた。
「ワタシが、いつ、自分のことしか考えていないことを悪いこと・・・・だと言ったのかね?」
「……え?」
「ワタシが、いつ、自分だけが不幸だと思っているのを悪いこと・・・・だと言ったのかね?」
「……は?」
「ワタシが、いつ、キミが悪い・・・・・などと言ったのかね?」
「…………」
「そんなことは、ワタシは一言も言っていない」
 ヨーゼフは微笑みながら、
「ワタシは別に、キミを責めているわけではないのだよ」
 そんなことを、言った。
「キミを肯定してあげるとも、サツキ。ワタシはキミの怠惰を、傲慢を、虚飾を、愛しているのだからねェ」
「……きょ、しょく?」
 そうとも、とヨーゼフは頷く。
「サツキ、キミはもう理解しているはずだ。弱々しすぎて、人恋しすぎて、寂しすぎて……よりによって敵であるワタシに依存してしまったことを」
「…………」
「自らの置かれた状況を頭の隅に追いやり、何も考えずに、ただ漫然と日々を過ごしてきたことを」
「…………」
「自らの愚かしさを、脆弱さを認めることができずに、稚拙な論理でワタシを糾弾したことも、キミの弱々しい抵抗の一つに過ぎない」
「…………」
「――自らの弱さを必死で覆い隠さんとするキミのそれを、虚飾と呼ばずして何と呼ぼうか」
 ヨーゼフは目を細めながら、わたしの身体を抱きしめて、

「ああ。――実に矮小で、愛らしいじゃないかねェ」

「――――っ」
「そんな小さくて愛らしいサツキに、教えてあげよう」
 鏡に映るヨーゼフの顔が、柔らかく微笑む。
「キミに屋上に来るようにと手紙を出したのはワタシだよ。サツキ」
「――――」
 ……逃げ続けていたことが。
「キミを屋上から突き落としたのはワタシだよ。サツキ」
「――――」
 今まで目を背け続けてきたことが。
「キミから高峰皐月を引き剥がしたのはワタシだよ。サツキ」
「――――」
 明かされていく。
「そして」
 ヨーゼフは、まるでそれが何でもないことのように、わたしに告げた。

「キミを、そんな姿にしたのはワタシだよ。サツキ」

「――――」
「ワタシの『憤怒』をもってすれば、容易いことだったねェ」
「……憤怒?」
 そうとも、とヨーゼフは頷く。
「ワタシは人類の罪のひとつである『憤怒』を、この身に宿している魔術師なのだよ」
 ヨーゼフは、まるで見えない何かに抱きしめられているような恍惚とした表情を浮かべながら、
「故にワタシは、罪に愛され、罪に祝福され、罪に賞賛され――ワタシもまた、罪を愛し、罪を祝福し、罪を賞賛する者であるのだよ」
 さて、と言いながら、ヨーゼフはわたしを抱きなおした。
「ワタシという依存先を失った今のキミは、さぞ寂しかろう」
「…………そんなこと」
「心配しなくていい。目が見えるようになったときのために、ワタシがいなくても寂しくないように、トモダチを用意してあげていたからねェ」
「……ともだち?」
 この部屋に新しく監禁される人間でもいるのだろうか。
「ほら、そこにいるじゃないか」
「……?」
 ヨーゼフの言葉の意味を図りかねたわたしは、眼球だけを動かして鏡に映る部屋を見回す。
 改めて見ても、部屋の中にあるのは、わたしが座っていたアレと、テレビと、テーブルと、テーブルの上のオルゴールらしき物体と、ヨーゼフがいつも座っていたと思しき椅子――
「――――ひっ!?」

 椅子の形・・・・をしているそれ・・・・・・・は、赤紫色だった。

 表面はわたしと同じようなモノでできているように見える。
 それは静かに、だが確かに、脈打っていた。
「……まさか、生きてるの?」
「当然じゃないかね? 彼女は人間だった・・・・・のだからねェ」
 ――理解、できない。
「……なんで、なんでこんな、こんな、こと……」
 本気で意味がわからなかった。
「なんでこんな、化物みたいな姿に……」
 どうして、こんなことをするのか。
 なんのために。
「――キミに聞きたいのだが」
 ヨーゼフは、今までにない真面目な声で、

「今の姿が人間のあるべき本当の姿だと――どうしてそう信じられるのかね?」

「――――は?」
 そんなことを、言った。
「ワタシには理解できないのだよ。キミたちが、何の疑問も抱かずに、今の人間の姿形を正しいモノとして受け入れていることが」
「……なにを、言って」
 正しい姿形も何も、自然に生まれ、育った姿を正しいモノだと認識するのは、当たり前のことではないのか。
「まあ、ワタシも“椅子”が、あるべき正しい人間の形であるとは思っていないがねェ。これは軽い遊び心だよ」
 そう言いながら、ヨーゼフはその椅子を足で軽くつつく。
 ……ただの遊び心で、人間ひとりをここまで醜悪に作り変えることができるのか。
 わたしは確信した。

 狂っている。

 この男は、狂っている。
 気持ち悪い。
 理解できない。許容できない。
 ヨーゼフ・カレンベルクという人間は、わたしが理解できる存在では、ない。
「ふむ」
 わたしの顔から、自身に対する強い嫌悪感を読み取ったらしいヨーゼフは、軽く頷いた。
「とりあえず、飼われているだけの豚から、人間に戻ったようだねェ」
「…………」
「――時間なら、いくらでもある」
「…………」
「これから、ゆっくりと、じっくりと、たっぷりと、時間をかけて――」
 ヨーゼフは、わたしの頭を愛おしげに撫でながら言った。

「――キミの心を、犯し尽くしてあげるからねェ」

「――――」
 笑顔だった。
 それは、楽しい出来事が、嬉しい出来事が、幸せな出来事が、たくさん未来に待っているのだと確信して、期待に胸を膨らませている人間の表情だった。
「さて」
 ヨーゼフはわたしを抱きかかえて、元の位置に戻すと、机の上に置いてあるオルゴールらしきものを手に取る。

 それは赤紫色・・・だった。

「――っ!」
 ヨーゼフは、赤紫色のそれを右手で握りしめ、わたしの顔の上に掲げて、

「さあ、サツキ。朝食だよ」

 それを、わたしの顔の上で握り潰した。
「っ!?」
 僅かに粘性のある体液が顔の上に飛び散り、わたしの顔面を穢していく。
 そして。
「うぐっ!?」
「食べなさい、サツキ」
 ヨーゼフの右手に握り潰され、なにかの体液に塗れた肉を、口に突っ込まれた。
「――――」


 どうして、こんな目に遭わなければならないのか。
 わたしが、なにか悪いことでもしたというのか。


 次の瞬間、わたしの身体を支配したのは、“憤怒”だった。
「ふざっ……けるなぁぁぁぁぁあっ!!」
 わたしはヨーゼフに突っ込まれたそれを、即座に噴き出す。
 小さな肉片がいくつか、ヨーゼフの顔に付着した。
「…………」
 ヨーゼフは少し驚いたような表情を浮かべている。
「――負けない、からっ……!」
「…………」
 はっきりと、言ってやった。
「わたしの心は、もう二度とあなたに屈したりしないからっ!!」

 これは、宣戦布告だ。

「……なるほど」
 ヨーゼフは、自分の口元についていた肉片を舌で絡め取り、

「いい目だ。――それでこそ、凌辱のしがいがあるというものだねェ」

 咀嚼した。
「…………っ」
 目の前でやられているからか、肉がすり潰される音がよく聴こえた。
 ……気持ち悪い。
 本当に、気持ち悪い。
「キミの心が再び折れる日が来ることを、楽しみにしているよ」
 ヨーゼフの口元が歪む。
 それは、さっきまで浮かべていた柔和な笑みとは似ても似つかない、獰猛な笑みだった。
「ははははは」
「…………」
 笑い声をあげながらヨーゼフが退室し、部屋にはわたし一人だけが残された。
「…………っ……」
 ヨーゼフがいなくなったことで、わたしのなかで張り詰めていたものが消えて。
「…………うっ……うううっ……!」
 ……涙が、溢れた。

 残酷な現実から逃げてしまっていた自分の弱さが。
 その自分の弱さを、よりによってヨーゼフに指摘されたことが。
 ヨーゼフによって、醜悪な化物のような身体にされてしまったことが。
 ……これから、この現実と一人きりで向き合っていかなくてはならないのだということが。

 悔しくて、悔しくて、悲しくて、辛くて。
 胸の中で渦巻く感情が、涙になって溢れ続ける。
「……ううっ……うううううっ…………っ……!」
 薄暗い部屋の中に、わたしのすすり泣く音だけが、ずっと響いていた。

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