ダークエルフさん、俺の家で和まないでください! ~俺はガチャを回しただけなのに~

巫夏希

第三十四話 事実を受け入れましょう

「……レティーナ。貴様、久しぶりに私に再会したと思えば、私の判断を覆す発言か? 随分とえらくなったものだな、たかが神官風情が」

 ……だめだ。完全にメイルは業を煮やしている。怒っている、と言ってもいいだろう。調子はいつもと変わらないが、目を細めてレティーナを睨み付けている。いくら自分の考えと違う発言を言ったからって、敵対心持ちすぎでしょうが、この魔王。
 対して、レティーナは冷静に物事を見極めているようで、

「魔王様、お言葉ですがこれだけは譲れません。リアライズ世界……元の世界に戻るには、勇者軍と魔王軍で手を組んで『扉』を開くほか道はないのです」
「だからと言っても、そう簡単にできると思っているのか。魔王が別世界にきて何もせず、挙句一緒にワープしてきた勇者陣営と協力して扉を開く、だと? そんなこと、あの世界にいる部下に知られてみろ。末代までの恥だ」

 そうなるのは当然なのかもしれない。
 しかしながら、末代までの恥だったとしてもそれを被る必要はあるのではないだろうか。魔王が首を垂れるだけで、ほかの部下は救われる。血を流すことなく、全員元の世界に戻ることができる。まあ、そのあとの話は元の世界で結論をつけてほしいが。

「末代までの恥、ですか。そう言うのも仕方ありません。ですが、魔王様には元の世界に戻っていただき治世を続けていかねばなりません。それは義務です。こうもしている間に、今も魔王様の国では魔王様が不在していることにより、混乱に陥っていることでしょう」
「それは四大将が何とかしてくれるだろう。彼らには私が居なくとも行動を可能にしている。だから、私が戻らなくとも問題は……」
「果たしてほんとうでしょうか?」

 レティーナの言葉に怪訝な表情を浮かべるメイル。そんな表情を浮かべるのは、半ば不思議に思うかもしれない。それは私だってそう思った。どうして何も問題なさそうに見えるのに、レティーナはそこであえて問題を突き付けていくのだろうか、と。
 そして、レティーナもまた私とメイルの疑問を理解しているらしく、溜息を吐いて、話を続ける。

「……未だ理解していないようですので、話をさせていただきましょう。四大将は確かに優秀な魔王様の部下です。精鋭を集めただけはあります。しかしながら、四大将が人間軍を何度も跳ね返していたら……正確に言えば、魔王様が居なくても指揮をずっと続けて功績をあげていけば、どういう結果になるでしょうか。国民は、どういうイメージを抱きますか?」

 ……あ、そういうことか。
 成程。レティーナの言いたいことが解った気がする。

「成程ね」

 そうして、私はメイルよりも先に、発言をする。
 レティーナは私を見つめるだけで何も言わなかった。これは先に話をしてもかまわない、という合図なのだろうか。そうと受け取りますよ。
 そしてそう受け取った私は話をつづけた。

「……今の魔王に対する求心力が下がる。そして、相対的に四大将に対する求心力が上がる」

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