ルームメイトが幽霊で、座敷童。

巫夏希

博士と調査と秘密機構(前編)


 城に辿り着いたあと、どうやって調べるかというのは見付からずにいた。
 しかし、碧さんがあるアイデアを口にした。

「そういえばさ、私この世界ゲームで『博士』だっけ? そんな感じの職業に就いているんだったよね。つまりさ、それを利用して探索ってのは出来ないものかね?」

 碧さんの言葉になるほど、と頷きつつもそれはどうなんだと疑問も抱いていた。
 例えばの話である。もし俺の仮定が事実だとして、ゲームシステムの根源ともなる存在がこの城に隠れているとしよう。それが、そんな大層な物が、ゲーム内の一システムで見つけられるものなのだろうか? 答えは考えるまでもないだろう。見つけてくれと言っているようなものだ。

「……でも、可能性はゼロではないでしょう?」

 碧さんが訊ねる。確かに、確かにその通りだ。でも、そんなもんは限り無く低いと思うんだがね。
 そんなことを思いながら、俺達は城の裏庭へと辿り着いた。ここから探索を始めるという魂胆だ。
 さて、問題はその方法だ。いったい、どうやって行う?
 解答は非常に簡単だ。碧さんが城の壁に向かって『調査』を行い、違和感が見えたらそこに何かがある……ということだ。

「でも、こういうので見つかるのか? とても不安になるんだが」
「あんた私を誰だと思っているのよ!」
「ただの引きこもり幽霊?」

 あっ、凹んでしまった。今の言葉が相当効いたみたいだ。そいつはまずい。

「そうかもしれないが……めんどくさいなら辞めてもいいんだぜ?」
「大丈夫。私がこんなことでばてるほど脆くは無いわ」

 そして碧さんは壁にゆっくりと手を当てた。
 変化は直ぐにあった。壁面がぼんやりと光り始めたのだ。
 光の色は――緑。
 それは、そこに何らかの空間があることを示すものだった。

「どんなものよ!」
「まさかここまで本当にやってしまうとは思わなかった。ゲームの世界の方が向いているんじゃないか?」
「それは流石に厳しいね」

 碧さんはそう言って手を戻した。

「ここに何かがあることは解った。問題は……どうやってこの壁をぶっ壊すか」

 手を考えていないわけではない。
 そう呟いて俺は小さく心の中で念じた。

 ――“テレポート”。

 そして、俺達の身体はその場から消えた。

 ◇◇◇


「……まさか成功するとは思わなかった」

 俺は自らの力を誇示するように小さく呟いた。
 俺はここに向かう道中、碧さんのような職業に就いていないかどうかプロフィール画面を確認していた。
 そして、その画面に書いてあったのは、

 ――『魔法師』だったのだ。


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