ルームメイトが幽霊で、座敷童。

巫夏希

【第九話】 ゲームの世界の最新事情(前編)

 その日は曇りだった。なんというか中途半端な天候で、いったいお前は誰に似たんだと小一時間問い詰めたくなるほどだった。

「しかも『一月並みの寒さ』だと……。冬服も用意してねぇよ」

 俺はそう言い訳を並べ、自分のやっていることを無理矢理に正当化しようとしたが、どうもそういうわけにもいかなかった。

「リト、ゲームショーに行くんだって? 私も連れていってくれよ」
「……人間以外立ち入り禁止じゃね?」
「私だって、元人間だ。なめてはいけないね、フッフッフ」
「いや、別になめてるつもりで言ったわけじゃないし、元人間が許されるならば昔人間だった妖怪だって許可されるぞ」
「というかそんなオカルトチックなチェックしないでしょ?」

 するところの方が珍しいと思うのだが。

「だったらいいじゃない! 万事解決よ!」と、碧さんはポンと手を叩いて言った。「というか和服は正式なフォーマルスタイル? だっけ? まぁいいや、ともかくそれなんだから、あんまり悪くも言えないものよ」

 フォーマルは『格式ばった』、スタイルは『姿』だから特に意味としては間違っていないが、ここまで確証の持たない言い方をするのは、碧さんはとことん外来語が嫌いなのだということを浮き彫りにさせた。

「……な、なんだ? 特に間違った外来語を使った覚えはないぞ」
「誰かの入れ知恵?」
「……恵梨香が」

 また署長か。暇だからってあの人やることとやれないことの境目が無いんじゃないか? ってくらいにやることがひどすぎる。これでいて数年前まではオカルトとは何の関連もなかったというのだから、人生というものはカミサマのとんだ気まぐれが十割で構成されているのだろうということすら思わせる。

「何時になったら行くんだ?」
「六時に、アパートの前に車が来ることになっているから、まぁ……六時でいいのかな」

 しまった。恐ろしいくらい自然に言ってしまった。これで俺の退路が断たれたことになる。仕方ない、これが俺の運命さだめだったと思えば……。
 ――と焦燥感に暮れていたのだが、ふと見ると碧さんの顔が青ざめていた。あれ? どうかした?

「……もう六時五分前なんだけど、あんたそれ見た限りじゃ準備とか皆無だよね? どうするの、今から急いで」
「やっちまったぁぁぁぁぁぁ!!」

 碧さんが言葉を言い切る前に俺が大声を言ったもんだから至極驚かれた! ごめん、だけど構っている場合じゃない! 急いで、準備しなくちゃ……。

「ま、ご苦労なことだね。着替えなくちゃならんし。私はず〜っとこの服装だからね、楽だよ。いっそ、死んでみる?」
「縁起でもねぇこと言うな」

 と言いながら、フォーマルスーツをクローゼットから引っ張ってきた。一年に一回着るか着ないかだったので、若干埃を被っていた。まぁ、この前クリーニングしたし……大丈夫だと思うんだがなぁ。


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