ルームメイトが幽霊で、座敷童。

巫夏希

共同の戦線と再会宣言(前編)


 誇っても、いいことなのに。
 彼女は誇ることなく、奢ることなく、今此処に居る。

「……能力って、神憑きの一族とか代々そういう能力を持つ子供が生まれる家系ならそういうのも関係ないんですけど」

 早口で柚帆さんが話す。

「それが例えば一般家庭ならばどうだと思います。超能力なんてものに無縁な家系だったら?」

 柚帆さんの目は、潤んでいた。
 悪いのは、俺だ。心の中で『誇る』なんて、無責任なことを言ったからだ。
 神憑きの一族で神憑きの能力を得られなかった(今はその力を手に入れているが)から、よく考えると俺も少し前までは似たような立場だったのだ。
 それを無責任なことで片付けるなんて……俺の立場から出来ることではなかった。

「あ、あの、すいません。急にそんな……こと言ってしまって」
「いや、俺が」

 ――悪いんですから、と言う前に柚帆さんは給湯室の方へ駆け足で向かった。後で謝らなくてはならない。……というか、矢牧さんは何処に行ったんだ?

「……話がずれてしまったな。最後に私たちが何をするか、話しておこう」

 こほん、と小さく咳払いをして信楽さんは話を続けた。

「『perovskite』を手に入れるため、コミックマーケットに向かう。ただし、これは通常の任務であっても警察の権力を行使しては参加者があまり面白くないからな。私服で行くつもりだ」
「警察権力をせめて裏方にだけでも振りかざすべきじゃ?」
「五年前にとある漫画に脅迫があってね。それ以来あちら側はあんまり警察を良く思わないんだ」
「……それ、言っちゃっていいんですか?」

 俺がそれを言うと「あまり」とでも言わんばかりに首を横に振った。なら、言わない方がいいと思う。

「ともかく、潜入する。……とはいえそちらは十二月なんだよ。そちらに行ってもいいんだが……、その前にあるイベントに向かう。『ゲームショー』は知っているか?」
「最新ゲームをお披露目する、っていう?」
「そうだ。あそこにも『perovskite』を出展するらしい。そこで……確認をする」
「でもあそこって販売はしないで、ただの“体験”だった気がしますけど」
「既に『ホープダイヤモンド・ゲーム』の解析は済んでいる。それが一致すればいいだけだ。あとは『ホープダイヤモンド・ゲーム』のデータを突き付ければこちらの勝ちだ」

 それならコミックマーケットに行く必要なんて無いんじゃ?
 ……と思ったが、ふと横を見ると柚帆さんが何かを指差していた。
 それは魔法少女物のアニメに出る主人公を象った抱き枕だった。あぁ、なるほど。

「……ともかく『ゲームショー』は来週だったはずだ。それまでこちらもたくさん、出来るだけの資料を集めておくから、そちらも出来ればそういうことをしてもらえると助かる」
「わかりました」

 とりあえず。
 俺もその『ゲームショー』とやらに向かう必要があるようだ。

「あっ、言い忘れるところだった。ゲームショー当日はスーツで着てくれ。新聞社にいる友人に口利きして『大成新聞社』として入ることになっているからな。当日になれば友人も紹介するよ」



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