ルームメイトが幽霊で、座敷童。
戯言と戯言と窓際部署(中編)
桜田門に来るなんて恐らくは初めてだと思う。絶対にプライベートで行こうとは思わない。
桜田門近辺は気象庁がある竹橋近辺とは違って人波も何処と無く大きい。新聞社が食い付くようなネタの塊であるが、それでも新聞社の人間だからと隠れることはない。
隠れる、ってことは何か疚しいことがあって、後ろめたい気持ちがあって、隠れるのだから、疚しいことが無いんだったら隠れることなんてない。ただし、マスコミってものは本当にずる賢い。平気で嘘を言う(これはまぁ人間だから仕方ないにしろ)。だから、なるべく関わらないようにはしている。理由は簡単。一度付きまとわれたら離れるまで一週間以上はかかる。それくらいしつこい存在である。
桜田門を右目に捉え、三角錐の建物に入る。いくら公式にアポイントメントを取っているからとはいえ緊張はするものだ。
入口にいるヘッドフォンで音楽を聞く警備員(警備に問題はないんだろうか?)に声をかける。
「すいません、『神霊事象調査課』の信楽さんとお会いする約束なんですが」
警備員はその名前を聞いて、ピンと来なかったようだった。何故なら、顔が眠たそうだったからである。
「……うーむ、ちょっと解らないですね」
警備員の人が首を傾げる。まさか嘘をつかれたのだろうか。
「あ、もしかして、瀬谷理斗さんですか?」
その声を聞いて俺は振り返った。
そこに居たのは――一人の女性だった。リクルートスーツに身を包んだ彼女は清楚そのものだったが、何処と無く色気も滲んできていた。
彼女はさらに続けて言う。
「遅れてすいませんね。本当ならば、入口で出迎えようと思ったのですが、どうも外せない用事が入ってしまいまして」
「いや……こちらこそアポイントメントもとらないで急に、すいません」
警備員はもうすっかりさっきの状態に戻ってヘッドフォンをつけて漫画を読み始めていた。大丈夫か、この警備員で。
「少なくとも一般の警備員よりかは役立ちますよ」
「そうですか? ……って、あれ? 俺、口に出しました?」
口に出したのならそれはもうとんでもないことになるんだが。
「いえ、“聴こえた”だけですよ」
しかし、彼女はただ笑い、そう言った。
聴こえた。
確かに彼女はそう言った。
まさか……心でも読めるのだろうか?
超能力者じゃあるまいし、そんなことはとても有り得なさそうだが。
「……話しながら、その質問に答えましょうか」
また、俺の心を読み解いたかのような返答だった。
果たして、彼女は何者なんだろうか。
俺の中には幾つかの疑問が沸き上がるだけだった。
警察庁はとても広い。俺は彼女に先導され、一階のロビーを通過して、エレベーターホールへ。
エレベーターに乗り込むと『B6』のボタンを押して『閉』ボタンを押した。
しばらく、沈黙の時間が続いた。
「――先程の質問ですが」
彼女が口を開いたのは、上のランプがB3を指した頃だった。
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