ルームメイトが幽霊で、座敷童。
天才の末路と記録文献
扉の中はひどく静かだった。誰もいないのではと疑ってしまう程だった。
扉の中はベッドがあり、それを中心に巨大な試験管のようなものがいくつか置かれていた。そして、その中には……。
「俺の身体……、あんなところにありやがった……!」
「どうやらここが核となる実験所のようだな。……どことなく血腥い臭いすら感じる」
核となる場所。
ということは、ここに翠名創理が確実に居るはずだ。居ないにしても俺の身体にこの精神を閉じ込める手段とか……。
「残念でした、どちらもここに」
まるで子供がお遊戯をしているような、そんな楽しい声が背後から響いてきた。俺は振り返る。そこに居たのは――翠名創理だった。
「ここに居たか……!」
「ヴォギーニャちゃんもここまで御苦労様だにゃー。ボスの命令かな?」
「うるさい」
そう言ってヴォギーニャは拳銃を構えた。ベレッタ92。確か世界中の軍隊で使用されていて、今現在でも米軍の標準装備となっている拳銃だ。
「ヨハネのペンは何処にある?」
「へー……そんなものにも縋るようになるだなんて、よっぽどソドム・ゴモラってのは未来を支配したいらしい」
「黙れ」
ダン――!! と。
ベレッタ92が火を吹いた。その火は翠名創理の顔を掠め、無人の試験管に命中した。
「おい。そんなことして俺の身体が入ってる試験管が割れでもしたら……!」
「答えろ、ヨハネのペンは何処にある?」
答えろとはこっちのセリフだよ!
「……ここにあるさ」
銃弾を掠った翠名創理の顔からは血が滲み出ていた。それでも、翠名創理の表情から余裕が消えることはない。
「ヨハネのペンはそのペンで書いたものならどんなものでも叶えてしまう魔法のペンだ」
まるで「魔法がこの世に存在する」とでも言いたげな表情で翠名創理は話を続ける。
「魔法は確かにこの世に存在するよ。だが、その強すぎる力ゆえ表舞台に上がることはないがな」
「……魔法なんて、そんなファンタジーなものあるわけが」
「ない、と断言出来るか? そんなこと君が出来るとは到底思えないんだが」
ファンタジーなものがこの現代社会に存在する訳がない。ましてやその言葉をマッドサイエンティストなどから言われればそれまでだ。信憑性などとうに地に落ちている。
魔法なんて単語をよく聞くといえばゲームの中だ。だがここは現代社会で現実世界。そんなことはあり得ない。
「……君がそんなに強情だとは思わなかったなぁ。てっきり僕の方に協力的かと思っていたよ」
「何を言っている?」
「おや、まだ何を言っているか解ってない? ……いいよ、話そうじゃないか。君の父親についてだ」
父親。
俺はその単語をこんな場所で聞こうとは、夢にも思わなかった。
なぜアイツが出てくるんだ。
「瀬谷理人はとてもいい助手だったよ。……あのことが起きなければ、ね」
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