ルームメイトが幽霊で、座敷童。

巫夏希

視点B:河上祐希の場合 -伍-


「計画の手段というのは至極簡単な問題だった。……タイムマシンが全ての鍵になっていたんだ」
「タイムマシン……まさか、翠名創理がそれを造ったのか?」
「情報を知らずに造ったか、知ってて造ったかでその価値は大分変わることになるが……、まぁいい。翠名創理が提起したヒッグス-エスメラルダにたくさんの人間が目をつけたことには間違いない」

 ヴンダーが言っていることは……翠名創理はパラグラフ計画の重要な人物であるということだ。ならば何故そんな重要な人物が個人で研究所を作るのか?
 ヴンダーはそんなことを他所に話を続ける。

「……ともかく、彼女が造るタイムマシンが計画に必須だったのは間違いない。きっと、奴らもそれを望んでいただろうしな」
「望んでいた?」
「……事の始まりは二〇〇〇年、昨年のノストラダムスの予言があったのは知ってるだろう?」

 その言葉に僕は頷く。ただ、ノストラダムスの予言で騒いでた頃は生まれてなかったから人伝いに聞いただけなんだけどね。
 少なくともノストラダムスの予言で多くの人間が恐怖に戦いたのは間違いないし、それを焚き付ける番組だってたくさん放送されていただろう。
 結局は二〇〇〇年を迎えて十七年経っていることから解ることだけどね。

「あれは嘘……ではなかったんだ」
「嘘でない? どうしてそんなことが……」
「言えるんだ」

 ヴンダーは僕の言葉を遮り、話を続ける。

「証拠は結構消されていたがね、唯一残されていたのはこの暗号だけだった」

 そう言ってヴンダーは指を中空にずらし……何かを描いた。矩形のようにも思えるそれは描かれた直ぐに実体化された。
 それは小さな紙の束だった。細かく字が整えられていたから、恐らくパソコンで作成され印字されたものだろう。

「それは……?」
「これは、翠名創理が十四歳の頃に発表した論文だ。……コンダクターリビルドが結成される直前の論文だよ。テーマはタイムマシン理論なんだが、普通に考えると結構小難しいからそういう点は差っ引いていく」
「あぁ、そういうのは抜きで考えよう」
「一先ずこれから言えるのは……この時点でまだコンダクターリビルドの概念に辿り着いていない、ということだ」

 その言葉に僕は呆れてしまった。コンダクターリビルドの概念に達していないわけなどなかったはずだ。彼女はCERNに入った時からコンダクターリビルドの概念を提起している(よく考えれば恐ろしい人間だ。本当に人間なのか、という疑問すら生まれてきてしまう)。つまり、今ヴンダーが言った情報と僕が知ってる情報は矛盾している……ということになる。どちらが正しいのか、はっきりとは解らないが、僕としてはめぐみさんがさっきメールで教えてくれた情報を信じている。……にしてもめぐみさんかな入力なのになんであんな長文をあんなスピードで入力出来るんだろう。不思議でならない。


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