ルームメイトが幽霊で、座敷童。
視点C:瀬谷マリナの場合 -弐-
「でもあそこまで見栄張ったってことは何らかの手順は考えているんじゃ?」
「そして、その『手順』に必要だから瀬谷理斗達を拐った。……まぁ、私もそこまでは考えていました。ですけどね、やっぱり少しだけ気になるんですよ」
めぐみさんはそう言ってその場に座った。当然椅子なんて無いから地べたに座らざるを得ないんだけど……、袴が汚れません?
「……袴のことですか?」
なんで解るんですか。
まぁ、隠す必要もないので、そうですね、と言っておいた。
「もともと随分と汚れていましたからね、特に問題はありません。いーえるおーとやらに帰れば巫女服の替えもありましょうから」
あぁ、ELOね……。めぐみさんはあんまり現世(現代社会、って意味合いで)には慣れていないから、横文字は非常に同年代と比べると知識が劣っている。
ただ助かるところとしてはローマ字という存在を知っていることだろう。これで、まぁ、ある程度の横文字を覚えさせることには成功している。
「さて……話を戻しますが、どうして翠名創理はそもそもこんなことを始めたんでしょうね? 誤報でもないし、そもそも誤報だとしてもこんなことしたら罪に問われるのは彼女だって知ってるはずです」
「……なんでなんでしょうね?」
言われてみれば、彼女がしたことは私には解らなかった。
人体実験でも人道から離れているのに、さらに上の段階へ行くなど、心理学者が聞いたら『異端』のレッテルを貼られるに違いない。
「……でもかつてはそういう考えもあったらしいんですよ? ただ、現行の宗教と肉薄出来る程の勢力は無かったとされてますがね」
宗教裁判、ってやつだ。
かつてキリスト教を含め、様々な宗教が宗派を分断した。その違いというのが第三者から見れば恐ろしく滑稽だが当事者から見ればそれに全てを捧ぐ程のものなのだ。
コンダクターリビルド。かつて人工進化研究所が名乗っていた名前である。直訳すれば『合体するものを再構成する』……名前を聞けば奇妙なものだが、その正体は人体実験を繰り返すカルト集団だった。直ぐにコンダクターリビルドは組織を解体され新たな組織を作り上げた……それが人工進化研究所らしいのだ。
登記上は研究所なので、宗教活動をしているとは誰も思わないだろう。
それに目をつけたと考えられる――資料を編纂したELOの人間はそう解釈していた。
確かに目のつけどころも悪くないし、大まかそれで合っているだろう。しかし、何かがおかしいのだ。それでは何か消化不良な気がしてならない。
「……もしかしてあなたも何か考えてますか?」
「いやぁ、やっぱり全然。話がまとまらなくて」
私はそう言って愛想笑いを浮かべた。
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