ルームメイトが幽霊で、座敷童。
視点A:瀬谷理斗の場合 -壱-
クロムプラチナだかなんだか知らないが、神憑きに破れないものはないだろう。だって今居るのは日本のオカルト側でも指折りの人間なんだぜ?
「……もしかしてオカルトが最強だとか思っているのかもしれないが、科学とオカルトはそもそも毛色が違う分野だ。そんな安直な考えでここまで来たんだったら運が悪かったね」
こう話をしていく内にも水嵩は増していく……! ちくしょう、あいつの狙いはそれか!
しかもこの水、なんか色が若干ついてるぞ?! これほんとに普通の水なのか?!
「慌てるな……。これは恐らく、『生命のスープ』だ!」
姉ちゃんの言葉を聴いて、翠名の表情が変わった。
「……オカルト側にもこちら側に詳しい人間が居るのですね」
「一応旧帝大とは呼べる場所に居たものでね。若干知識のブランクはあるが大体は理解出来るよ」
「ふむ……そいつは厄介ですね」
ところで、生命のスープって何なんだ? 先程の会話で残った、唯一の疑問だ。生命のスープ……名前だけ聞くと、古代の海水を思い浮かべる。古代の海水はプランクトンや微生物が豊富にあり、色々な動物が生まれた元祖であるともされている液体だ。昨今の地球環境の破壊のおかげで海のプランクトンは減少傾向にあるとかテレビのコメンテーターが言ってたが……まさかな?
「生命のスープは我が研究所で開発した特殊な液体です。LSSならば聞いたことがあるでしょう?」
LSS……Life Support Solutionの略で生命維持溶液というものだったと思う。これを何十倍にも薄めたものが、所謂生理食塩水として用いられ、水分が不足した時によく用いられる。LSSの主な用途は、集中的に治療が必要な患者をカプセル内に入れ、LSSを充満させる。これにより患者は常に酸素と栄養を体内に取り込む。つまりは点滴要らずというわけだ(生理食塩水とLSSの成分は酷似しているが唯一違うのは酸素の有無である。LSSには入っているが生理食塩水には入っていない)。
「……LSSを完成させた我々は次に人間そのものの進化に着手しました。そして今……あるロボットを完成させるに至りました。それが……これですよ」
翠名の隣にはちょうどそれと同じ位の大きさのロボットがあった。骨格は人間のそれそのもので、頭に鶏冠が付けられてあった。
「これは、『バルシュ』と言います。何処かの言葉で平和を意味する言葉……だが皮肉なことにバルシュは平和的に使われません」
翠名はわざとらしく首を横に振った。
そして呟く。
「――バルシュは大量殺戮兵器として開発しました。来る大戦に備えて、ね」
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