東方魔人黙示録

怠惰のあるま

いじっていたい

俺は本当にこいつが苦手だ。
そう思いながら寅丸を睨むように見つめる、心を読んでいるかのように呆れた様子で彼女は思ったことを口にした。

「君を攻撃した僕も悪いと思いますが、先にしかけたのはあなたですよ?」
「うっ!」

た、確かにそうだが......あの時は聖の封印を解くのを阻止するのに必死だったからさ......つい我を忘れてしまった。誰にだってあると思うよ?

「しかも、聞いた噂ではダラけきった生活を送っているそうじゃ無いですか?」
「そんな噂流れてんのかよ!だが俺は怠惰欲の塊だ、仕方ないだろ?」
「それって私があなたに言ったやつ.........もしかして気に入ってるの?」

パルスィが不思議そうに聞いてくるが、自分でも知らず識らずのうちに口にするようになっただけだ。気に入ってるかはよくわかりません。
そんな言葉を言う彼女に寅丸から少し黒い感情を感じた。
その感情に敏感に反応したのか、パルスィが面白そうに笑って言った。

「少し嫉妬した?」
「な、なにを馬鹿なことを!僕がなんで彼に嫉妬しなきゃいけないんだ!!」
「私は嫉妬した?って聞いただけよ」

パルスィにうまくハメられた寅丸はいつもの仏頂面を真っ赤にしていた。なんとなくさとり様に似て来たな、これ以上さとり様ーーここで言う《さとり様》はドS、女王、掴めない人のことを纏めた意味の言葉ですーーを増やしたく無い。
ナズが手遅れなんだから......命蓮寺をさとり様だらけにする気か、そんなことになったら俺の身が危ない。

「あんまりいじってやるなよ」
「私もたまにはいじりたい」
「俺のこといじってるだろ?」
「あなたはいつもいじってたいの」
「な、なんだよそれ......」

俺は一体誰をいじればいいんだよ。これじゃあいじられるばかりだ、俺だって誰かをいじりたいんだ。
というか、寅丸が顔を真っ赤にしながら放心状態になっているんですがなんていうか器用なやつだ。

「おい寅丸起きろ」
「う、うるさい!元はと言えば君がここに来なければ良かったんだ!」
「理不尽ですねわかります、でもここを家と思って構わないと言ってたからいいだろ?」
「こういう時だけ聖に甘えるな!!」

なんとなくパルスィがいじってたい気落ちがわかった。寅丸っていじられ体質なんだな、反応が面白くていじるのを辞めることができない。

「というわけでパルスィいじっていいよ」
「りょうかい」

敬礼をするようにおでこに手をピシッとやり、顔をキリッとさせた。本人は真面目な様だがそれが可愛いくてしかたない。
しかし、俺らの対応が気に食わないのか寅丸は怒っていた。

「勝手に許可するな!君も君だ!さっきまで味方かと思っていたのに!」
「私は面白ければいい」
「だ、そうだが?」
「あなた達は嫌いだ!!」

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