東方魔人黙示録

怠惰のあるま

拘束?いいえ、束縛です



うぅ...体が動かねえ...
まさか本当に大鎌を壊されるとは思わなかった。
他に誰に壊されたっけ?
幽香に一回。映姫に二回。パルスィに...かなり壊された気がする。
なんだかんだで壊されてんな。
うぅむ。もう少し大鎌を強くしないとな。

「おい!!バカアルマ!大丈夫か!?」
「おー赤眼の怪物レッド・アイド・モンスター助けて」
「お前は...何簡単に壊されてんだ!」

いや...勇儀さんが強いからとはいえさ。大鎌を壊されるなんて思わないじゃん?

「はぁぁ...別に死ぬわけじゃないがお前が動けないと俺の動ける範囲が縮まるから止めてくれ」
「どのみち地上には出ないからいいだろ」
「そうだとしても、だ!わかったな!」
「はぁい」

まだ文句ありそうにブツブツと呟きながら俺の中に戻った。
心配ならそう言えよ。回りくどいというか、素直じゃないというか。
いや待て戻ってどうするんだ!俺を助けろよ!!
クッソぉぉ!!動けねぇぇ!!

「何ジタバタしてんのよ」

俺が精一杯起き上がろうとしてるのに酷くないか?
いつの間に立っていたのかパルスィが冷たい視線を放っていた。
てか、そんなに見下すような目で見ないでくれ惨めだ。というか...

「助けてくれませんか?」
「そうねぇ...運ぶぐらいはしてあげる」
「おお!さっすがパルスィやっさしいねぇ!」

それで...なぜロープを持ってるの?

「決まってるじゃない。縛るためよ」
「なんで!?」
「動けないと言っても何するかわからないから拘束しようかなぁ〜っと思った」
「意味わからん!!」

動けない俺をさらに動けなくするとか何それ!?
意味がわからん!まだ何かして拘束されるならまだしも、俺は何もしておらんぞ!!

「まあまあ。一回縛られれば癖になるかもしれないよ?」
「なりたくねえよ!!」
「はいはい。どうせ動けないから拒否権はないのよ〜」
「おい!やめろぉぉぉぉ!!」




△▼△




そして、されるがままに俺はパルスィの部屋で椅子の上に拘束されました。
あれ?デジャブ?
ごく最近、同じように拘束された気が......

「意外に似合ってるわよ?」
「おちょくってんのか!?」
「別に、率直な感想よ」

拘束された姿が似合うとか喜べるか?
遠回しにマゾって言われたんだよね?そうだよね?
それを素直に喜べるわけないだろ。
あとさ。パルスィが上機嫌なんだけどなぜ?
首をかしげると彼女の手が頬に触れる。ひんやりと冷たい手は意外と気持ちいい。

「じゃねえよ!何したいんだ!!」
「...遊ぶ」
「俺で?」
「うん」
「ふざけんなよ?」

この前散々俺をいじったばっかだろう!拘束していろんなところをめちゃくちゃ見てたし!
何?あれじゃあ物足りないってか!?

「あの時は邪魔されたから...最後まで遊んでない」
「いや、十分だろ」
「やだ。足りない」
「...何言っても拒否権はないんだろ?」
「うん」

どうせ拘束されて身動き取れない。ご丁寧にも指まで綺麗に縛られたよ。
これじゃあ感情も奪えない。
俺の感情を奪う力は相手に向かって見えない衝撃波を放って感情を揺さぶり、一時的に感情の動きを止める。
まあ、弄ぶことに関してならなんでもできる。
が、俺の感情を奪う力は指パッチンでしかできない。なぜなら一番衝撃波を調整できるのが指だから。
一応それ以外からも出せるが制御が曖昧でひどい時は精神に異常を来す。
治せるが危ないことはしたくないんでね。
そして、そのことを知ってるパルスィは指を動かすことすらできないほど拘束してきたんです。

「指の血が止まりそう」
「大丈夫。しないようにしてるから」
「チッ...」
「それじゃあ....この前の続きをしましょう......?」

いつもの嫉妬の目ではなく、理性が外れるほど発情した動物の目になった。
ちょっと怖い。
スッーと首筋を指でなぞりへそあたりで止まる。

「もう少しおろそうかな?」
「やめろ!」
「どーしよっかなぁ」

ゆっくりと指を下ろしていく。
パルスィの指がベルトに触れようとしたところでピタッと止まった。

「やーめた」
「...は?」

そう言って俺の拘束を解いていった。
数分とはいえガッチガチに拘束されてたため体が痛い。まあ、体をまだ動かせない俺は椅子にのっかかる状態なんだけどね。

「てか、急にどうした?」
「なんか。拘束されたあなたをいじっても面白くない」
「なんじゃそりゃあ......」
「だからーーーーーーー」

不意にパルスィは顔を近づけ、手を首の後ろに回しキスをした。
数秒...それが数分にも思えた。
ゆっくりと唇が離れ真っ赤に頬を染めた彼女はニヤリと笑う。

「そのバカ面を見たいから真正面から堂々といじる」
「......顔を真っ赤にして何言ってんだか」
「う、うるさい!!あなただってそうじゃない!」
「そりゃあ真っ赤にもなるだろ。まだ二回目なんだから」

仕返しにニヤリと笑い返す。
これ以上赤くならないほど顔を真っ赤に染めた。
頭を撫でてやりたいが、生憎体が動かない。残念。
そして、少しだけ震えていたパルスィは泣きそうな目で訴える。

「撫でてよぉ...」
「いや...動けないんだよ?」
「じゃあ勝手に置く...」

そう言い俺の手を自分で頭の上に乗せた。撫でてるわけでもないのに幸せそうにしている。
なんだろうこの可愛い生物。

「さて...動けるまでどうしようか」
「何言ってるの?あなたは私の部屋でずっと療養よ?」
「はぁぁ!?何勝手に決めてるんだよ!」
「だって正邪がいいよって言ったもの」
「あの愚妹がぁぁ!!」

そして、その日から俺はパルスィの部屋で療養することとなった。



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