東方魔人黙示録

怠惰のあるま

結局喧嘩

「さとり様を二度と地上には呼びません」
「監禁ですか?それもそれで!!」
「そんな性格でしたっけ!?」
「最近...アルマとパルスィがいないと寂しいんです!!」
「意味がわからねえよ!」

ああ...もう!ペースが崩れる!!
それよりもこの天邪鬼を泣き止ませないと。

「ほら泣くな。もうあの人喋らないから、な?」
「うぅ...ほんと......?」
「ああ......可愛い」
「さとり様...本当に黙ってください」

ブーブーとブーイングしながらパルスィの元に向かう。子供か。
さとり様から弾幕を飛ばされたのはお約束。
あの人に【子供】って言葉は禁句だから。自殺行為だから。
さて、慰めよう。

「向こう行ったぞ。もう大丈夫だ」
「うん...」
「なんで異変を起こしたんだ?」
「下克上」
「......は?」
「弱い妖怪が虐げられる幻想郷に革命を!弱い妖怪が生きやすい世界を作るためだ!!」

な、なんか急に熱く語り出したぞ。
あれ?スイッチ押した?押したよね!?
ああ、もうめんどくさい。

「わかった。うんもういいよ」
「ならあたしは帰っていいよな?」
「あーダメだ」
「なんでだよ!」
「お前追われてるんだろ?匿ってやるよ」
「え?」

一応同じ種族の血が流れているわけだし?見捨てたらお袋に顔向けができねえ。
ましてやこんな幼い子をな。ロリコンと言ったお方は後で事務所に来ようねぇ?
そして、また泣き出しちゃって困ってまぁす。

「いや、なんで泣いてんの!?」
「な、泣いてねーよ!!これは...汗だ!」
「嘘つくなちんちくりん!」
「うるさい!バカ兄貴!!」
「......は?今なんてった?」
「.........バカ兄貴」

あれれぇ?おかしいぞぉ?
バカ兄って言われたよ。兄って!いつから俺は兄になった!?
あれか!?兄妹に見える、を間に受けたのか!?勘弁してくれ!天邪鬼が素直になってどうする!

「いいじゃない。お兄ちゃん?」
「パルスィ...絶対面白がってるだろ!!」
「そ、そんなことないよぉ?」

イラっとする。デコピンしてやる。
バチーン!といい音が鳴った。相当痛いらしくおでこを抑えてしゃがみ込んだ。
無視。

「怠惰の化け物...」
「なぁんか言いましたぁ?嫉妬の化け物?」
「ぶっ殺すって言ったのよ」
「やってみろよ」

ゴゴゴ...という擬音が似合いそうな程睨み合う二人。
また始まったと呆れる映姫と微笑ましく見つめるさとり。
その横で怯えるように寅丸の後ろに隠れる正邪。そして、寅丸はこう思っていた。

(...どうか!寺が壊れませんように......!)

寅丸の必死の願いは叶わない。
二人はスペルカードを取り出し、同時に放つ。

「怨み念法【積怨返し】!!」
「怠惰の極【堕落落とし】!!」

紅く燃え上がる炎と青く煌めく炎がパルスィの周りに発生。炎を背に立つその姿は美しい。
炎の中からポツポツと小さな弾幕が現れる。その数、未知数。
手を振り上げ弾幕を空に向け撃ち放った。
対するアルマ。気がつけば宙に浮き、空一面を覆い尽くす黒き炎の弾幕を放っていた。
手を振り下ろし、弾幕を地上に降り注いだ。
地上からの弾幕と空から降る弾幕は相殺し合う。

「埒が明かない!久々にぃぃぃ...武龍召喚!!」

地面から鉄のこすれ合う音を出しながら現れたのは武器が固まって動く龍。
だが、前よりも巨大で禍々しい。
獲物を見据えながらアルマの背後でウネウネと動く姿は恐怖と嫌悪感を感じる。

「相変わらず悪趣味」
「それはありがとう。それと黙って突っ立てていいのかい?」
「あら?見えてないの?」
「は?」

ガシャァァ...ン
アルマの背後で武龍が崩れ落ちた。
パルスィは何もしていない。動いてすらいない。ならなぜ?
よく見ると武龍の残骸を踏み潰す怪物が立っていた。
緑色の瞳だけがらんらんと輝く見えない怪物。

「嫉妬【緑色の目をした見えない怪物】」

俺の背後に立つように現れた緑眼の怪物からは嫉妬と殺気しか感じない。
俺にだんだん近づいてくるが、余裕で壊せる。

「怠惰【赤色の目をした堕羅けた怪物】」

緑眼の怪物の攻撃が当たる寸前、割り込むように手が入る。
その手は人間のそれではなく、ましてやアルマの手ではない。その手は赤眼の怪物のものだった。
向かい合うように立つ二匹の怪物。

「見えないとかせこくない?」
「性格が出てるからでしょ?」
「人見知りだもんねぇ」
「...うるさい!!」

見えない拳が赤眼を殴り飛ばす。

「そいつ...よける気あるの?」
「メン...ドクセェ......」

獣の唸り声のように低い声が響いた。
聞いたこともない声にパルスィは驚く。

「え...?」
「ん?こいつ喋るよ?たまに」
「初耳...!」
「ハヤク...オワロウ......!」
「はいはい。わかってるよ赤眼の怪物レッドアイドモンスター

パチンッ!
指を鳴らすのを合図にパルスィを囲むように弾幕が出現。さらにはアルマの背後で両手に魔力を溜める赤眼の怪物。

「はぁぁ...妬ましい......緑眼の怪物グリーンアイドモンスターこのまま終わらないわよね?」
「うふふふ.......!貴女から声をかけてくれるなんて!珍しい!」

緑眼の見えない怪物は見えない口で喋った。

「本気ってことよ」
「わぁい!じゃあ、元に戻ろ!」

そう言うと緑眼の怪物は光り輝く。
光が収まるとそこには二人のパルスィが立っていた。
片方は冷たく睨む緑眼、片方は嬉しそうに輝く緑眼。
同じ姿だが内面はまるっきり違うようだ。
その姿を見たアルマはニヤリと笑う。

「久々だなぁ!緑眼の怪物!!」

アルマに気づいた怪物はふくれっ面になった。

「むっ!パルスィはあげないよ!!」
「くだらない話はしないで、さっさとやるわよ」
「はぁい!!」

二人は繋いだ手を俺に向けて魔力を溜めた。

『ジェラシーボンバー!!』

撃ち放たれた巨大な魔力を帯びたレーザーは緑色のスパークを撒き散らしながら接近する。
俺は防ぐために魔力を集中させるが、たぶん防ぎきれない。

「おい赤眼の怪物!力貸せ!」
「........」
「おい!?返事しろ!!」
「.........ZZZ」
「ね、寝てるぅぅ!?仕方ない...全力でよけるしか......!」

だが、すでに弾幕は寸前にまで迫っていました。
あ、これ...詰んだ......
諦めて笑顔になった俺は完璧に敗北しました。



△▼△



そんなこんなで...俺は地底に戻ってきました。え?戻り方?気絶してる間にひきづられてた。
そして、地底で目覚めた俺にパルスィは理由なく地上には出れないという条件を突き出してきた。
...まあパルスィからの条件だからいいか。異変以外で地上に出ることなんてないからさ。
それと、なぜか天邪鬼がいる。

「バカ兄貴の居場所はあたしの居場所だよ」
「......でもパルスィがなんていうか」
「パル姉もいいって言ったよ?」
「パル姉!?」

ま、まあパルスィが認めたからよしとしよう。ど、動揺なんてこれっぽっちもしてないぜ?お、俺はいつでもクレイジーアンドクレイジーだ。
それよりも...だ。さとり様がいじけてるのはどうゆうことだ?

「一人だけお姉ちゃんと呼ばれないからだって」
「ああ...くだらない」
「くだらないとはなんですか!!アルマとパルスィの妹は私の妹でしょう!?」
「こいしがいるだろ」
「それはそれ!これはこれ!!」

さとり様も大概だよなぁ。
天邪鬼もイヤイヤでもいいから呼んであげればいいのに。

「お前は怖いから嫌だ」
「そ、そんなぁぁ!」
「自業自得」

その後もお姉ちゃんと呼ばれたいさとり様は天邪鬼を優しくしているが、いっこうに呼ばれる気配がないさとり様であった。

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