比翼の鳥

風慎

第4話【翼の章:感情 ~ 姉妹】

 ルナがツバサの魔力を見ていたら、見られているのに気がついたみたい。
 少し、ツバサ、驚いてたの。むふー♪ 何となく良い気分ね。

 ツバサの魔力が綺麗って伝えたら、ちょっとビックリしていたの。
 なんでだろ? そしたら、ツバサは、少し難しい顔をしてから、ルナに聞いてきたの。
 自分の魔力が見えるか? って……。
 そう言えば、ルナ、自分の魔力見た事ないなー。
 ルナが首を振ったら、ツバサはまた難しい顔。
 んー。ルナも、もっと色々答えられたら良かったのに……。

 そしたら、ツバサは、ツバサの魔力がどういう風に見えるかって聞いてきたの。
 凄いんだよ!! ツバサの魔力、とっても綺麗なの!!
 えっとね……えっとね!!!

 ……一生懸命説明したんだけど、ツバサはなんだか、少し元気が無いの。
 ルナの伝え方が悪かったのかなぁ? もっと上手く伝えたいな……。
 ううぅー! 何だか悔しいの!
 ルナもちょっと、難しい顔をしてたら、ツバサが言ってくれたの!

「そ、そうか。ちなみに、俺から見たルナの魔力は、月の様に静かに輝いていて神々しいよ。俺はとても綺麗だと思うし、好きだな。」

 こうごう? それなぁに? 良い事かな?

『……解答いたします。神様のように気高いと言う事です。ルナ様の魔力は、綺麗であると言うことです。』

 やーん!! ツバサ、ルナの魔力好き? 綺麗なの?
 聞いたら、綺麗だって!! なんだろ!? 凄く嬉しいの!!
 何だか、心が暖かいの! フワフワするの! ツバサ、何かルナに魔法をかけたのかな?
 んふふふー♪ 勝手に顔が動いちゃうんだ。これって笑顔って言うんだって!
 笑顔、素敵ね! とってもいい気分なの。

 綺麗って良いね! ツバサ、もっとルナの事見てくれる?
 ツバサが見てくれるなら嬉しいな! 一緒にいられるならもっと嬉しいな!
 んふー!! なんだか、顔が熱いの! なんだろう、これ? けど、全然嫌な気分じゃないの!

「ちょ!?ルナさん!?それなんすか!?」

 ん? どうしたの、ツバサ? 
 ルナが周りを見たら、一面に光る綺麗なものが浮かんでたの。
 それは、見るだけで、ルナの心に新しい何かを運んできてくれるの。
 なんだか、心の奥が暖かくて……幸せな気持ちがドンドン湧き出てくるの。
 ツバサ! 幸せな気持ちって凄いね!! ツバサも、この光る綺麗なものを見たら、ルナと同じように、もっと幸せな気持ち感じてくれるかな?

『……警告いたします。精霊力の増大を感知。ルナ様の願いに精霊が応えています。特定周波数のパルスを感知。』

 んー? コティ? コティも幸せ? 幸せ良いね!!
 皆幸せになって欲しいなぁ……。ルナももっと幸せになりたいな!!

『……解答いたします。私はOSオペレーティングシステムと言う、一つのソフトウェアに過ぎません。感情と言う物とは切り離され、設計されております。』

 そうなの? そんなの可哀相……。
 きっと、こんな感情が分かれば、コティはもっと楽しくなれるよ!!

『アラート! ルナ様の想いに感応して、精霊が力場を発生中。ルナ様の特定感情を増幅中。ルナ様、直ちに魔力放出、および精霊へのコンタクトを中止することを推奨いたします。』

 駄目! んふー♪ 皆幸せ! コティも幸せ!!
 コティにも、幸せな気持ち分けてあげる!!

『アラート!! システムに不具合発生。強力なジャミング、及び未知の力場が発生中。精霊力に特殊な……波……が……。』

 コティも一緒に、ツバサも一緒に幸せ!! むふー♪

『わー……ニん……グ……。シスてム領域……あク……セす……。』

 コティ、これで幸せね! ツバサも一緒に、幸せ!
 そう思ってツバサに近づいたのに、ツバサは何だか変な顔をして、ルナに言うの。

「よし、ルナ。まずはストップだ。動くな。いいか?動いちゃ駄目だ。」

 いーやー!! ツバサも一緒に幸せになるの! フワフワ気持ち良いよ? ね?
 そうだ! ルナともっと近くにいたら、ツバサも一緒に幸せになってくれるかな?

「今、考えて実行しようとしていることをすぐにやめ……。」

 いーや! ツバサも幸せになるの!! そう思ったら、何だか、そんなツバサに抱きつきたくなって、ルナはおもいっきりツバサに抱きついたの。

 何だかツバサはとってもビックリして、少しいつもと違う様子でルナを見てるの。
 もっと、一緒にいたら幸せになる? ツバサも幸せ?
 どうしたら、ツバサにルナのこの素敵な気持ちを分かって貰えるんだろう?

 そう思ったら、何だか、勝手に体が動いて……そこから先のことは良く覚えていないの。
 何だか、ツバサの色々な顔が見れてとっても楽しかったなー。
 その内、急に幸せな気分と共に、ルナの力が抜けて……眠いなぁ……ツバサ? 幸せ?
 ルナはね……とっても……幸せなの……。
 そうして、ルナの意識が……沈んで行ったの。


 優しく揺すられる感触で、ルナは徐々に目が覚めて来たの。
 おはよ……ツバサ……なんだか……ルナ、眠いの……。

「ルナ、眠いところ申し訳ないが、家に帰りたいんだ。道案内をお願いできるかな?」

 んー。いいよー。けど、抱っこぉー。
 んふー♪ ツバサの体温暖かいねー。家は、こっち。
 ゆらゆら……気持ちいいの。
 そんな風に、ルナはフワフワしてたけど……突然、声が聞こえたの。

『ふふふ……。とっても綺麗な魔力を持った方ですの。ね? 咲耶さくや?』
『ええ、此花このは。とても柔らかな魔力をお持ちの方ですな。』

 ん? どこから聞こえるんだろ? ここかな?
 声のするところを辿っていったら、ツバサの胸元から聞こえて来るの。

『あら? もしかして、私達の声が、聞こえているのかしら?』
『だとすると、この方は、精霊との親和性が高いのでしょうな。』

 んー? 今までいなかった子達の声が聞こえるの。
 コティ? 貴方のお友達?……返事がないの。んー。また寝てるのかなぁ?
 だから、ツバサに聞いてみたの。ツバサは、少し驚いた顔して、教えてくれたの。

「うん、その子達は、今日から家族になる『此花』と『咲耶』だよ。」

『お父様の子として、先程お名前を頂き、具現化しましたわ♪ 此花と言いますの。』
『父上に名前を頂き、こうして話を出来るようになりました。 咲耶と申します。』

 凄い! ツバサの胸にある綺麗な光る珠から、2人の声が聞こえて来たの。
 そっかぁ。コノハ……と、サクヤ……? 不思議ねー?

 んー。けど、心で語りかけても、返事がないの。
 コティとは違って、ツバサと同じ様に、声をかけないと駄目みたい。

 その後、ツバサは、コノハとサクヤについて、色々教えてくれたの。
 お母さん? って言う人から、預かったんだって。
 その内、その人も来るかもしれないって。どんな人なんだろ?
 不思議に思ってたら、2人が、なんだか少し不機嫌そうに、話し始めたの。

『お父様! 何で私達の事を、しっかりと伝えてくれないんですの?』
『父上!! 我等は父上の子にござりまする!』

 んー? そうなんだ。ルナもちゃんとツバサとの関係、隠したくないもんね。
 なんで、ツバサは説明しないんだろ? 不思議だなぁ?

 その後、ルナたちは洞窟に戻ったの。
「ただいまー」て、ルナ達が言ったら、
『お邪魔しますー。』『失礼致します。』って、2人とも挨拶してたの。
 凄いなぁ。ルナは、ツバサに教えて貰ってやっとできるようになったのに、もう色々出来ているの。
 うう……ルナ、もっと頑張らないと……。
 ルナ、ツバサに迷惑かけてばかり……もっと、ツバサを喜ばせたい。

 ツバサは、なんか疲れちゃったらしくて、今日はもう寝るんだって。
 よーし! ルナもツバサに良い所見せるよ! ルナだって色々ツバサの為に出来るよ!
 ツバサ、こっち!!
 んしょ……もーふをどかして、ここにどうぞ! ツバサ!!

「先に寝ていいのかい?ありがとう。」

 どういたしまして!!
 そして、ツバサは2人を優しく、毛皮の上に置いたの。
 その様子を見て、なんだろう? ルナ、何となく胸の奥がチクリって痛くなったの。

『フカフカですの! 柔らかいですのね!』
『おお、これは気持ちが良いですね!』

 2人の嬉しそうな声が聞こえて来て、その様子を見ているツバサが……ルナにも見せた事の無い、柔らかい素敵な笑顔をしたの。
 その時、胸の奥が重くなって……なんだかツバサに置いて行かれちゃうような……そんな気がしたの。
 やだ! ツバサ!! ルナを見てよ! 置いてっちゃいや!!
 気がついたら、ルナ、ツバサの胸に飛び込んでたの。

「ちょっと!ルナさん!それは危険だから禁止!!」

 やだぁ! ツバサと離れたくないの!!

「ルナ、もしかして不安なのかな?俺が取られるとか、どっか行っちゃうとか思ってる?」

 うー。ツバサ凄い。何で分かるの? ルナ、嫌だよ。もう一人は嫌なの!!
 そんなルナをツバサは、優しく撫でてくれたの。

「そうだよね。いきなり家族が増えますって言われても、ビックリしちゃうよね。大丈夫。俺は絶対ルナを一人で放っておきもしないし、どこかに勝手に行ったりもしないよ?」

 本当? ルナ、いらない子じゃないの? 2人みたいに、上手くできないけど良いの?

「うん、絶対に一人で置いて行ったりしない。もしどこかに行くときは、ルナ。君も一緒だ。なんせ、ルナはこちらの世界で最初の家族だからね。」

 家族……本当に? ルナ、ツバサと一緒で良いの? ルナ、迷惑じゃないの?

『ルナ様……でしたか? 不安にさせているようでしたら……申し訳ございませぬ。』
『ルナ様、突然、お邪魔してしまって、ごめんなさいですの……。』

 そんな風に、2人が声をかけて来てくれたの。
 違うの! そうじゃないの! ルナ、そうじゃなくて……。

「ほら、この子達もルナの事をとても心配している。俺はね、ルナ。君にこの子達のお姉さんになって欲しいと思っているんだよ。」

 お姉さん……? ルナが? だって、2人の方が凄く良い子だよ?

「そう。この2人のお姉さん。俺と一緒に色んな事を教えてあげて欲しい。話し相手になって欲しい。困っていたら力になって欲しいんだよ。俺がルナにそうしているように。ルナが俺にそうしてくれているようにね。皆でそうやって助け合えたら、もっと素敵だと思わないかい?」

『私たちからも、お願いしますわ。まだ、私たち生まれたばかりで、何も分からないんですの。』
『そうでございます。ルナ様。是非、私たち目に、色々教えて下され!』

 皆で? ルナ、一人ぼっちじゃないの?
 ルナでも良いの? ルナ、怒られてばかりだよ?
 そんなルナの不安な様子を、ツバサは黙って笑顔で見守ってくれているの。
 ……うん。ツバサがそう言うならやる! 大丈夫。ルナも頑張る!

「頼むな。ルナお姉さん。」

 うん! 分かったよ!ルナ、お姉さん頑張る!!
 そうしたら、2人から声が聞こえて来たの。

『ルナお姉さま♪ 宜しくお願い致しますわ♪』
『ルナ姉上。生まれてすぐに、姉が出来るとは……この咲耶、嬉しゅうございます!』

「ああ、安心したら、ちょっと眠くなってきたよ。すまないが先に寝るよ。ルナ、此花、咲耶。お休み。また明日な。」

 ツバサ疲れてるのね。ゆっくり休んでね!

『『「おやすみなさい。」』』

 ルナだけじゃなくて、コノハちゃんも、サクヤちゃんも、そう言ったの。
 そんな言葉を聞いて、ツバサは直ぐに眠っちゃったの。
 ツバサの顔、とても穏やかな顔で、なんだかルナ嬉しくなっちゃったの。

 そうだ、2人にちゃんと、挨拶しよう!
 まだ、しっかりとして無かったもんね! ツバサも挨拶、大事だって言ってたし。

「コノハちゃん? サクヤちゃん? ルナは……ルナって言うの。よろしく……ね?」

 何とか、つっかえながらいう事が出来たの。
 まだ、上手く口が回らなくて……しゃべるの難しいの。

『ルナお姉さま! 私は此花です! 宜しくお願いしますの!』
『ルナ姉上! 咲耶と申します! 父上共々宜しくお願い致します!』

 2人ともとっても元気で、ルナびっくりしちゃったの。
 だから、ルナ、声が出せなくて頷いて、2人に返事したの。

『しかし、ルナ姉上がお優しい方で良かった……。』
『そうですわ。いびられでもしたら、どうしようかと……。』

 ルナ優しいのかな? いびら……? なんだろう?
 ルナが首を傾げていると、2人とも、『『クスクス』』と、笑って

『ルナお姉さまで良かったってことですわ!』
『そうでございます! 父上にも優しくして下さっておるようですし。』
『そうですわ。お父様から、ルナ様への愛情が流れ込んできますのよ?』
『ええ、ルナ姉上は父上にとても大事にされておられる。』
『そんな方で、本当に良かったって思っていますわ。』

 2人とも凄いの……。クルクルと2人で話すから、ルナ、なんだか、ビックリしちゃったの!!
 けど、ツバサがルナの事、大事に思ってくれてるなら嬉しいな!

「ルナ……もっと……ツバサのため……頑張る!」

 そんなルナの言葉に、2人とも綺麗な声で、答えてくれたの。

『私も、ルナお姉さまをお手伝いしますわ!』
それがしも、力の限り、ルナ姉上を支えて行きまする!』

 嬉しいな!! 何だか、もっと賑やかになって、ルナの周りが楽しくなった気がするの。
 コノハちゃん、サクヤちゃん! 来てくれてルナ嬉しいの!
 そんな風に、夜遅くまで、皆でワイワイ話し合ったんだ!

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