僕と狼姉様の十五夜幻想物語 ー温泉旅館から始まる少し破廉恥な非日常ー

稲荷一等兵

第17節8部ー洗いっこー

 
 制服着てても、ブレザー押し上げちゃって目立つからなあ。伊代姉のおっぱい。
そりゃ健康な男子なら見ちゃうよね。

「でも、伊代姉自身もその神谷先輩に好かれてるのわかってるんだね。もし告白されたらどうするの?」
「そうねぇ……どうしようかしら。付き合っちゃおうかしらね」
「むうううう」
「ぷふっ、あははは! あんたお餅みたいになってるわよっ」

 僕の反応を見ようと振り向いた伊代姉が、僕のふくれっ面を見て吹き出してしまった。僕は、なんだかんだ言ってお姉ちゃんっ子なんだ。僕が全く知らない男の人と付き合うなんて聞いちゃうとそりゃお餅にもなるさ!

「あーかわいっ。可愛いわねあんたほんと!」
「ぶえ! 泡! 泡が口に目に!!」

 伊代姉が感情に任せて僕を抱きしめ、容赦なく泡まみれになってる胸に顔を埋めさせるものだから、目にしみる口の中苦いしで心地よさは無いに等しかった。

「私も相当あんたのこと好きだけど、あんたもそれに負けず私のこと好きよね」
「ぶえ! そりゃこんなにかわいがってくれるんだから、好きに決まってるでしょ! うわあ、口の中苦いー!」
「あはは、ごめんごめん。はい、あーん。お口の中しゃわしゃわしましょうねー」

 伊代姉はシャワーを持って、僕の口の中をゆすいでくれた。そして、伊代姉の長い綺麗な黒髪も丁寧に洗ってあげて……。

「よしっと」
「じゃあ次はあんたの背中を流してあげる。タオルとりなさいな」
「はーい」

今度は僕が伊代姉の前に出て、椅子に座る前にタオルをとった。もう今更恥ずかしいなんて言う気もないしね。

——……。

「……綺麗な体つきしてるわね」

 千草に体を洗ってもらって、交代。次は姉の私が弟の体を洗う番。
 目の前で腰に巻いていたタオルをとった千草の後ろ姿に、思わず息を飲んでしまった。姉としては不覚だったわけだけれど、それでもこんな体つきを見てしまったら仕方ないことね。

 はっきり言って、男の体つきとは思えないの。これは正直言って、気の毒なくらいなのだけど。
 千草は生まれつき、ホルモンバランスが悪くて性別の境界が曖昧だったわ。でもはっきり言えるのは、千草はれっきとした男だということ。いくら体つきや顔が女の子っぽくてもね。

 弓道をしている分、私の方が肩幅広いんじゃないかしら。お尻も千草の方が小さくて形もいいし。
 全体的に丸みがあって、腰もうっすらくびれてる。この子が東京に行く前は、三年も経てば男らしくなっちゃうのかななんて思っていたんだけどね。
 少し気の毒ではあるけど……私個人としてはとても綺麗な体で好みだわ。

「あ、僕頭から洗う派だから!」
「はいはい、そんなのわかってるわよ。座りなさいな」
「はーい」

 千草は昔から寂しがり屋で甘えん坊。見てる限り、銀露ちゃんに対してはまだ肩肘張ってるみたいだけど……私の前では気が緩みっぱなしみたいね。
 遠慮がない分、好きなように甘えてくれてるみたい。
 ただ、この時間が私にとって一番の至福ね。昔っから千草のことはとても可愛がってきたから。

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