僕と狼姉様の十五夜幻想物語 ー温泉旅館から始まる少し破廉恥な非日常ー
第18節46部ー張り切る護り火ー
笛を吹くために子鞠を下ろそうとすると、子鞠がよじよじと体を登って、肩に太ももを置いた位置に。いわゆる肩車をしている形になった。
ここに汰鞠がいれば怒られちゃうんだろうけど、今はいないからべったりし放題だよ。
そうしてちょっとした子鞠の重さを感じながら、火笛を吹いた。
銀露から言われた通り、思いっきり息を吸い込んでから、力強く。
「ふわ……!!」
と、同時に思いっきり驚いた子鞠。僕が笛を吹くと、その笛からは甲高い音……ではなく、巨大な炎が上がったんだ。
音としては、ぼっという、火柱が上がる音がしたっきり。
驚いた子鞠が僕の方から転げて落ちて、尻尾で柔らかく着地した。かと思えば、ころころと後ろに転がってぺたんとお尻をつけて座り込む。
驚きすぎて、目を見開いて口を真一文字に結んだ表情で固まってしまってる。
「うむ、よい吹きっぷりじゃ」
「びっくりしたよ!! さすがにこんな火が出るなんて思ってなかった」
「火笛じゃと言っておったろうに」
「名前通りだとは思わないでしょ、普通……」
落ちて転がってしまった子鞠を気にかけて、しゃがんで声をかけた。
銀露が言うには、子鞠は少しばかり火が苦手なんだって。まあ、基本的に獣は火を苦手とするものなんだから、特に珍しいことでもないけど。
「子鞠、大丈夫?」
「……」
ぴーんと尻尾とお耳を立てたまま、表情を強張らせている子鞠がゆっくりと僕に視線を合わせてきた。
そんな子鞠の様子を見て、銀露ってば愉快そうに笑ってるし……。
「びっくり……」
「そうだね、びっくりしたねぇ子鞠。ごめんよーっ」
緊張をほぐすようにイイコイイコしてあげて、ようやく平静を取り戻せたのか、子鞠の表情と尻尾とお耳に柔らかさが戻ってきた。
ところが……。
「はぁああい!! 呼ばれて飛び出て朱音さん参ッ上ォォオ!!」
「きゅう……」
「あああ!! 子鞠ぃぃぃッ!!」
呼ぶために笛を吹いたとはいい、強面な牛と大きな音を立てる客車、そして大量の人魂と景気のいい声が何もなかった後ろから飛び出してきたとあればたまらない。
子鞠が失神してしまった!
「いくらかぶりだねぇ少年! どしたの、こんな早くに朱音さんの助けが必要になっちゃった?」
「お、おやすみ子鞠……こんにちは朱音さん……」
「あら、やば。ごめんよ狼ちゃん! 人に呼ばれるのは久しぶりだから気合い入れすぎちゃったぜ」
と、両手を合わせてゴメンなさいをする朱音さん。凄まじく元気な人だ……。
次に、銀露に気付いたみたいなんだけど、二度見。これはまた綺麗な二度見を敢行した。銀露相手に。
「えっ、いや……ウチとしたことが見間違えるはずはないんだけども……あれ?」
「わしのことが一目でわからんとは、失礼なやつじゃの護り火の」
「んん……いえ、でも……ううん……ちっ……さくないですか?」
「故あって今はこんな情けない姿を晒しておる。あまり詮索するでないぞ」
「わっかりましたー! で、どったん少年? 困りごと? 誰かぶっ潰してほしい奴とか? いじめ? なんでも言ってちょうだいよ。張り切っちゃうよ」
手綱を放して、御者台から身軽に跳んで降り、ぐいぐいと用件を聞いてくる。
あっ……暑苦しい……。この人、黙ってれば相当な美人さんなんだけどなあ……。
「て、テンション高いですね、朱音さん……」
「いやはや、暇してたからなんか楽しいことないかなあなんて思ってたとこにこの呼び出しだからねぇ。ウチ、テンション上がっちゃって。ほら、護り火もこんなに喜んでるだろー」
「近っあっつ! あっついわ朱音さん!! 護り火熱い!!」
ここに汰鞠がいれば怒られちゃうんだろうけど、今はいないからべったりし放題だよ。
そうしてちょっとした子鞠の重さを感じながら、火笛を吹いた。
銀露から言われた通り、思いっきり息を吸い込んでから、力強く。
「ふわ……!!」
と、同時に思いっきり驚いた子鞠。僕が笛を吹くと、その笛からは甲高い音……ではなく、巨大な炎が上がったんだ。
音としては、ぼっという、火柱が上がる音がしたっきり。
驚いた子鞠が僕の方から転げて落ちて、尻尾で柔らかく着地した。かと思えば、ころころと後ろに転がってぺたんとお尻をつけて座り込む。
驚きすぎて、目を見開いて口を真一文字に結んだ表情で固まってしまってる。
「うむ、よい吹きっぷりじゃ」
「びっくりしたよ!! さすがにこんな火が出るなんて思ってなかった」
「火笛じゃと言っておったろうに」
「名前通りだとは思わないでしょ、普通……」
落ちて転がってしまった子鞠を気にかけて、しゃがんで声をかけた。
銀露が言うには、子鞠は少しばかり火が苦手なんだって。まあ、基本的に獣は火を苦手とするものなんだから、特に珍しいことでもないけど。
「子鞠、大丈夫?」
「……」
ぴーんと尻尾とお耳を立てたまま、表情を強張らせている子鞠がゆっくりと僕に視線を合わせてきた。
そんな子鞠の様子を見て、銀露ってば愉快そうに笑ってるし……。
「びっくり……」
「そうだね、びっくりしたねぇ子鞠。ごめんよーっ」
緊張をほぐすようにイイコイイコしてあげて、ようやく平静を取り戻せたのか、子鞠の表情と尻尾とお耳に柔らかさが戻ってきた。
ところが……。
「はぁああい!! 呼ばれて飛び出て朱音さん参ッ上ォォオ!!」
「きゅう……」
「あああ!! 子鞠ぃぃぃッ!!」
呼ぶために笛を吹いたとはいい、強面な牛と大きな音を立てる客車、そして大量の人魂と景気のいい声が何もなかった後ろから飛び出してきたとあればたまらない。
子鞠が失神してしまった!
「いくらかぶりだねぇ少年! どしたの、こんな早くに朱音さんの助けが必要になっちゃった?」
「お、おやすみ子鞠……こんにちは朱音さん……」
「あら、やば。ごめんよ狼ちゃん! 人に呼ばれるのは久しぶりだから気合い入れすぎちゃったぜ」
と、両手を合わせてゴメンなさいをする朱音さん。凄まじく元気な人だ……。
次に、銀露に気付いたみたいなんだけど、二度見。これはまた綺麗な二度見を敢行した。銀露相手に。
「えっ、いや……ウチとしたことが見間違えるはずはないんだけども……あれ?」
「わしのことが一目でわからんとは、失礼なやつじゃの護り火の」
「んん……いえ、でも……ううん……ちっ……さくないですか?」
「故あって今はこんな情けない姿を晒しておる。あまり詮索するでないぞ」
「わっかりましたー! で、どったん少年? 困りごと? 誰かぶっ潰してほしい奴とか? いじめ? なんでも言ってちょうだいよ。張り切っちゃうよ」
手綱を放して、御者台から身軽に跳んで降り、ぐいぐいと用件を聞いてくる。
あっ……暑苦しい……。この人、黙ってれば相当な美人さんなんだけどなあ……。
「て、テンション高いですね、朱音さん……」
「いやはや、暇してたからなんか楽しいことないかなあなんて思ってたとこにこの呼び出しだからねぇ。ウチ、テンション上がっちゃって。ほら、護り火もこんなに喜んでるだろー」
「近っあっつ! あっついわ朱音さん!! 護り火熱い!!」
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