僕と狼姉様の十五夜幻想物語 ー温泉旅館から始まる少し破廉恥な非日常ー

稲荷一等兵

第18節3部—相談事—

「改めて、私は月並神社で巫女として仕えている鬼灯神奈です。一度、境内で会いましたよね」
「うん、あの時は挨拶もせずにごめんなさい」
「いえ、お互い様ですし……何より、そう。柊君が来てからここ、神社の様子がおかしくなってしまって。これが少し話したいことなんですが」

 と、鬼灯さんはそこから視線を泳がせながら困ったように言う。

「こんなことを言うと、変な奴だと思われそうで嫌なんですが……その、柊君は死角の世の者と関わりがあったりしませんか?」
「……!」
「いや、死角の世の者というか、あの、分かりやすく言うと妖怪だとか神様だとか……」
「えっと……」
「む、むしろ自分が人ならざるものだったりしませんかとっ……。ぐ、ごめんなさい。言葉は選んだつもりなんですがうまく言えなくて……。言っている意味がわからなければそれでいいんです。聞き流し、忘れてください」

 い、いやむしろわかりすぎて僕がなんと答えればいいか迷ってしまって困ってるくらいなんだけど……。
 どうしよう、正直に言ってしまった方がいいんだろうか。やっぱり巫女さんということもあってそういうことに詳しいのかな。

「僕……のお父さんがそういうことに詳しいけど……」
「そうですか。お父様が。そのお父様とお話しすることは?」

 その返答に、僕は首を横に振りながら答えた。もういないんだって。

「ごめんなさい。余計なことを聞いてしまって」
「大丈夫だよ。でも、なんでそんなことを?」
「また変に思われるかもしれませんが……その、あなたが境内に来たあの日から、うちで封……祀っている神が随分と騒がしくなってしまって」

 いま封って言いかけてたけど、あんまり知られなくないことなのかな?
 祀っている神さまのことについて聞いても、詳しくは教えてくれないし。
 でも、月並神社で巫女をしているっていっても、てっきりアルバイトとかお手伝いさんだとか思ってたけど、よくよく話を聞いてみると違うみたい。

「気を悪くしてしまったのならごめんなさい。私一人でどうにかできる問題なら良かったんですが、少し厄介なことになってしまって……。もう一度、神社に来てもらえると嬉しいんですけど」
「それくらいなら大丈夫だよ! いつ行けばいい?」
「これからすぐ」
「うわお」

 これは予想外だった。日を改めてとか、家に帰ってからだとかならまだしも、すぐに来てときたもんだ。

「すぐは……」
「大丈夫と言いましたよね?」
「いったけど、さすがに今からすぐは……」

 そう、僕は一応銀露に相談をしてから行こうと考えてたんだ。だから一度家に帰ってからが良かったんだけど……。

「大丈夫だと言った以上、すぐに来てもらいます。それとも、男のくせに言葉を違えるんですか?」
「ぐぬぬ……」

 ちょっと待って! さっきと全然態度が違うんだけど! 当たりが……当たりがとんでもなく強くなってるんだけどこれ、どういうことなの!!

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