超迷宮奇譚伝 『このアイテムは装備できません!』 

チョーカー

ドラゴンVSクリム

 次の戦いは―――

 ドラゴンVSクリム戦

 しかし————

 「おい? どうした、ドラゴン?」

 ドラゴンは通路から動かなかった。
 それどころ、うずくまり、泣き続けるキララの前に立った。

 「キララさん、この戦いをよく見ておいてください」

 「え?」とキララは顔を上げる。

 「腕力差や体力差。……男女の性別差。でも、彼女は……私がこれから戦う相手はある種の人間の完成形です。そして貴方が目指すべきスタイルの持ち主かもしれまん」

 まぁ、それでも勝つのは私なんですけどね。そう付け加え、ドラゴンは飛んだ。
 魔力的な力ではなく、ただのジャンプ。
 ほとんど、ノーモーションで10メートルの距離を飛び―――クリムの目前に到着した。

 「派手な登場だね……あれ? 入場だったかな? まぁいいや。知ってるよ。自信がない人が不安を消すために派手な事するんでしょ?」
 「あれ? クリムちゃん? それもしかして、挑発のつもり? 大好きなサクラさんと敵対している立場なんだから、その媚びた口調は止めたら? 恥ずかしいよ」
 「————ッ! 殺す!?」
 「あはっ……シンプルで良い言葉のチョイスですね。気に入りましたよ。……そうだ。1つ賭けをしませんか?」
 「賭け?」
 「この試合、私が勝ったら、私の事を『お母さん』と言いなさい」

 「————そんな事……」とクリムに明らかな動揺が見て取れた。

 「できないですか? そうですよね……この道中、貴方から私に話しかけてくるシチュエーションは限られた回数だけでしたよね。貴方は、今まで私をいないものとして扱ってきました。その事で、私が傷ついていないとでも?」
 「でも、それは、貴方が……敵だから…人間じゃないから……でも良い。その賭けにのる」
 「素晴らしい! それでは敗戦後に傷ついた貴方をお母さんが可愛がって————」
 「その代わり、私が勝ったら、貴方はお父さんと離婚ね」

 「なぬ! なんですとぉぉぉ!?」とドラゴンの絶叫が会場に響いた。

 「ちょっと、その条件だと私の失う物が大きすぎるんですが!」

 しかし、ドラゴンの抗議は虚しく、クリムは無言で距離を取る。
 それを試合開始の成立と受け取ったららしく審判役が宣言をした。

 「まずは先手必勝」とクリムが動く。
 肉体変化。彼女の腕から剣が形成される。
 もちろん、ただの剣ではない。あれこそがクリムの本体である『魔剣 ロウ・クリム』だ。
 炎の魔剣を片手にドラゴンと対峙する赤き少女。 しかし、彼女の肉体変化には続きがあった。

 「————あれは! アリスの時の!」

 驚いた。クリムの体に起きた変化。
 それは背中から生えた赤い羽根。炎で作られた翼。

 「————でも、遅いですね」

 そう言うのは、ドラゴンだ。
 彼女は、クリムの背後に移動。 そのままクリムの首すじに手刀を振りかざす。
 クリムは前に飛ぶ事でギリギリで手刀を避けた。
 だが————

 「やはり、遅いですよ」

 今度はクリムの前方にドラゴンが移動していた。
 クリムは魔力を指に込める。
 炎の弾丸だ。
 機関銃のように速射される殺傷力の高い対人魔法。
 それをドラゴンは素手で弾く。
 2人の距離が近づく。

 クリムは魔剣を振り上げる。
 ドラゴンは拳を構えて、それを迎え撃とうする。

 そして、両者が————

 

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