超迷宮奇譚伝 『このアイテムは装備できません!』 

チョーカー

ドラゴン説教の始めり

 ドラゴンは威厳たっぷりに言った。

 「人の子たちよ、聞きなさい」

 それを聞いた鍛冶職人たちは片膝を地面につき、頭を下げた。
 さっきまで披露されていたドラゴンとケロべロスの同窓会トークみたいな会話はなかった事になったみたいだ。

 「私の旦那さ……我が眷属の武器を見たか?」

 その言葉に反応してフミさんが顔を上げ―――

 「はい、この目でしかっと見届けさせていただきました」
 「うむ、あの武器の名前は龍の足枷」
 「龍の…足枷……」
 「あれは、汝ら人の子が作ったモノだ」
 「!?」

 その言葉を聞いて、平伏していた職人たちも面を上げ、ざわざわとざわつき始めた。

 「花屋、フミ。月屋、テツ」
 「はい」 
 「は、はい!」

 名前を呼ばれたフミさんとテツは立ち上がり、一歩だけ前に出た。

 「汝らにあれが作れるか?」

 「……」 「……」

 職人たちのざわめきは消え、静寂のみが空間を支配した。
 やがて―――

 「今はまだ……しかし、」とフミさん。
 次にテツは、「しかし、時間はかかろと、今の代では不可能であろうと……」

 「「次代の文左衛門ならば作れます!」」

 2人のそろった声に周囲の職人たちも歓喜の声を出した。

 「その心意気よし!2人、手を取り合い励むがいい」

 ドラゴンは威圧するように語尾を強めて言い放つと……
 「ジュワッチ!」と掛け声と共に姿を消した。

  
 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・


 コウガダンジョンの最下層。
 ラスボス、ケロべロスの部屋。
 そこはシュット学園の最下層である、ドラゴンの部屋と同様に吹き抜けで、広々とした空間が広がっていた。
 そこには4人(?)。
 僕、クリム、ドラゴン……そしてケロべロスだ。
 ドラゴンは人間バージョンに戻り、ケロべロスも―――

 「この姿になるのはいつ以来か?」

 人間の姿になっていた。それも女性の姿だ。
 燃えるような赤髪。それが獰猛な狂犬の象徴みたいになっている。
 さらに特徴的なのは左右の眼の色が違うオッドアイ。
 左目は透き通るような青。右目は濃いめ黄。 
 黒い皮のスカートは短め。赤いシャツも短くへそ出しルックってやつだ。
 シャツの上にコートを羽織っている。 たぶん、スカートと同じ皮素材。
 毛皮なのだろうか?首回りにはモコモコとしたマフラーのようなものを巻き付けている。
 そんな服装で足を崩して、胡坐をかいているから目のやり場に少し困る。

 「さて、ケロちゃん!貴方の何が悪かったか、わかりますか!」

 ドラゴンはアルコールが入ったかのようなテンションでケロべロスに問いかけた。

 「うむ、わかるぞ。『龍の足枷』と言ったか?要は我らが保有するアイテムが人間の手に渡ると我らを倒しかねないという事だろ。そう用心を促させるために……」
 「ブーブー、はずれです。不正解です!」

 「なに!?」と自信満々だったケロべロスの表情が崩れる。

 「ケロちゃんはダンジョンの管理が下手過ぎます!」

 それはケロべロスにしてみると予想外だったのだろう。
 「ぬっ!」と声を出していた。

 「なんで1層に進化したスライム出してるんですか?1層で初見殺しって正気ですか?3層で巨大中ボス?何考えてるんですか?これだから、コウガの資源は諸外国に頼る事になるんです!」
 「お、おう……」

 ドラゴンの気迫にケロべロスはたじろぐ。

 そのまま、ドラゴンの説教は続く。


 

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