超迷宮奇譚伝 『このアイテムは装備できません!』
教会ステージと犯人
道中、僕はタナカくんに話しかけた。
君が姿を消してからシュット学園では、「こんな事があった」とか、「あんな事があった」とか……
僕が話すだけの一方通行な会話。
前を先に歩くタナカくんの表情は、僕からはわからない。
もしかしたら、無表情で歩いているのかもしれない。
けれども、無関心というわけではない。僕は、そう感じた。
もしかしたら、僕の言葉は残酷なのかもしれない。
僕はタナカくんに、学園へ戻ってほしいと感情を言葉に込めている。
しかし、実際問題…… タナカくんは学園に戻れない。
タナカくんは、ダンジョンキーパーであるゲンゴロウさんを殺したのだ。
決して許される事ではないのだ。
決して許される事ではない……けど……まだ償える。まだ引き返せる。
限りなく儚い夢なのかもしれけど、またタナカくんもシュット学園の戻ってきてもらえれば……
いや、ちがうのか……
僕はタナカくんに、自分を重ねている。
僕自身が学園に戻れる可能性が時間と共に低下している。それも急加速で……だ。
だから僕は、タナカくんが学園に戻り、クラスメイト達と笑っているビジョンが脳裏に思い浮かべ、それを僕の姿にすり替えている。
自己嫌悪。 自分で自分が嫌になる。
僕はタナカくんに自分じゃできない事をやらせようとしているのだ。
「……ここだよ」
タナカくんの声でふらふらしていた意識が覚醒する。
随分と大きな扉だが、注目すべきは扉にあしらわれた十字架。
タナカくんは扉を開き、僕を中へと促す。
「ここにいるの?」と聞くと「入ればわかるよ」と返された。
僕は警戒心を強めながら、入室する。
ここにいる。僕が追っていた犯人が……
中には規則正しく並べられた長椅子。 それも木製。
中心の通路は赤絨毯。 さらに外側、左右の窓にはステンドグラスで絵が描かれている。
どの絵も神聖さを醸し出している。
正面にそびえ立つ巨大な十字架を見なくても、この場所がどこか理解できた。
「ここは、教会? でも、なぜ城の中へ?」
僕は疑問を口にする。
外部から見れば、ここは城の一室。
しかし、中に入れば間違う事なく教会が存在していた。
外部の構造的に、内部を推測する事は難しい。
唯一であり、最大のヒントは扉の十字架くらいだ。
まるでだまし絵の中に入り込んだ気分だった。
しばらく、周囲も見まわしていると思い出してきた。
「そうか!ここが十字架戦争の教会か!」
十字架戦争。
『国が廃れ始めると民衆は神々に救いを求め、教会を頼り始める。ならば、教会に頼る事は国を廃れさせる事と同罪である』
たしか、4代目シュット王の言葉だ。歴史の授業で習った。
歴代、最悪の暴君と言われた4代目シュット王は、独裁により宗教弾圧を開始。
国内の教会は一斉蜂起。シュット国最大の内戦が勃発したのだ。
無限に増える死者の数々に、折れたのは国側だった。
王は教会の信仰を認め、教会関係者を王室へ迎えた。 つまり政略結婚。
教会側の勝利に見えた。 しかし結果として―――
この場所が、まるで城内に教会が取り込まれたように見えるように――――
教会は王国に吸収された。
ここはこういう場所なのだ!?
――バタン――
「……」
扉がしまった。
後ろを振り向けば、すでにタナカくんはいない。
わざわざ、扉を確かめる必要もないだろう。
……閉じ込められた。
「しまった!テンションが上がり過ぎた!」
僕は頭を抱えた。 できるだけ、わざとらしく。
わかっている。この場所に足を踏み入れた瞬間から、人の気配に気づいていた。
……さて、そろそろ決着の時間だ。
僕は、ソイツに―――
『犯人』に話しかける。
「やぁ」とできるだけ親しみを込めて挨拶をした。
『犯人』
いや、トクラター・アリスに向けて―――
君が姿を消してからシュット学園では、「こんな事があった」とか、「あんな事があった」とか……
僕が話すだけの一方通行な会話。
前を先に歩くタナカくんの表情は、僕からはわからない。
もしかしたら、無表情で歩いているのかもしれない。
けれども、無関心というわけではない。僕は、そう感じた。
もしかしたら、僕の言葉は残酷なのかもしれない。
僕はタナカくんに、学園へ戻ってほしいと感情を言葉に込めている。
しかし、実際問題…… タナカくんは学園に戻れない。
タナカくんは、ダンジョンキーパーであるゲンゴロウさんを殺したのだ。
決して許される事ではないのだ。
決して許される事ではない……けど……まだ償える。まだ引き返せる。
限りなく儚い夢なのかもしれけど、またタナカくんもシュット学園の戻ってきてもらえれば……
いや、ちがうのか……
僕はタナカくんに、自分を重ねている。
僕自身が学園に戻れる可能性が時間と共に低下している。それも急加速で……だ。
だから僕は、タナカくんが学園に戻り、クラスメイト達と笑っているビジョンが脳裏に思い浮かべ、それを僕の姿にすり替えている。
自己嫌悪。 自分で自分が嫌になる。
僕はタナカくんに自分じゃできない事をやらせようとしているのだ。
「……ここだよ」
タナカくんの声でふらふらしていた意識が覚醒する。
随分と大きな扉だが、注目すべきは扉にあしらわれた十字架。
タナカくんは扉を開き、僕を中へと促す。
「ここにいるの?」と聞くと「入ればわかるよ」と返された。
僕は警戒心を強めながら、入室する。
ここにいる。僕が追っていた犯人が……
中には規則正しく並べられた長椅子。 それも木製。
中心の通路は赤絨毯。 さらに外側、左右の窓にはステンドグラスで絵が描かれている。
どの絵も神聖さを醸し出している。
正面にそびえ立つ巨大な十字架を見なくても、この場所がどこか理解できた。
「ここは、教会? でも、なぜ城の中へ?」
僕は疑問を口にする。
外部から見れば、ここは城の一室。
しかし、中に入れば間違う事なく教会が存在していた。
外部の構造的に、内部を推測する事は難しい。
唯一であり、最大のヒントは扉の十字架くらいだ。
まるでだまし絵の中に入り込んだ気分だった。
しばらく、周囲も見まわしていると思い出してきた。
「そうか!ここが十字架戦争の教会か!」
十字架戦争。
『国が廃れ始めると民衆は神々に救いを求め、教会を頼り始める。ならば、教会に頼る事は国を廃れさせる事と同罪である』
たしか、4代目シュット王の言葉だ。歴史の授業で習った。
歴代、最悪の暴君と言われた4代目シュット王は、独裁により宗教弾圧を開始。
国内の教会は一斉蜂起。シュット国最大の内戦が勃発したのだ。
無限に増える死者の数々に、折れたのは国側だった。
王は教会の信仰を認め、教会関係者を王室へ迎えた。 つまり政略結婚。
教会側の勝利に見えた。 しかし結果として―――
この場所が、まるで城内に教会が取り込まれたように見えるように――――
教会は王国に吸収された。
ここはこういう場所なのだ!?
――バタン――
「……」
扉がしまった。
後ろを振り向けば、すでにタナカくんはいない。
わざわざ、扉を確かめる必要もないだろう。
……閉じ込められた。
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わかっている。この場所に足を踏み入れた瞬間から、人の気配に気づいていた。
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