超迷宮奇譚伝 『このアイテムは装備できません!』
ラン家の婚活事情 その④
というわけで、決闘する事になった。
「それじゃ、善は急げって言うから午後に開始ね」
「えっ、今日に今日ですか?」
「うん、元々は近くに用事があったから、サヲリちゃんの様子を見に来ただけだから。あまり時間はないんだ。それじゃ!」
そのままミドリさんは巨大白馬に飛び乗り、走り去っていった。
どうやら、その用事とやらを先に済ませてくるのだろう。
「……どうするんですか?」とサヲリさんの方を見ると、彼女は両手を広げて肩をすくめるポーズを取った。
もしかすると彼女は、姉のこういう行動に慣れているのかもしれない。
しかし、ピッタと彼女の動きが止まる。 さっきまで無表情だった彼女の顔はみるみるうちに強張っていく。
「アリスちゃんになんて言えばいいのだろうか?」
「――――ッッッ!?」
きっと鏡をみれば、僕はサヲリさんと同じ表情になっているのだろう。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「という事で決闘する事になりました」
目の前の少女は、静かに「……そうですか」と呟いた。
学園内のカフェ。その一角は奇妙な緊張感で張り詰めていた。
僕とサヲリさんはアリスを加え、3人でテーブル席に座ってミドリさんとの決闘の説明をしたのだ。
アリスは動揺を隠しているつもりなのだろうが、カクカクとした動作でコーヒーカップを持ち上げ、口につけた。そして――――
「……うぐっ! けほっ!けほっ!」
と急にむせて、咳を出す。
「私としたことが、砂糖と塩を間違えてしまいました」
アリスは、そう言った。
しかし、そんなはずはないのだ。なぜなら――――
このテーブルには砂糖だけで塩なんてどこにも置いていないのだから!
「はい!これ、アリスちゃんが愛用してるやつだよ!」
ハイテンションモードに戻ったサヲリさんは、「キャ八ッ」と語尾につけながら、ごそごそと取り出した小瓶をアリスに手渡した。
いや、ちょっと待て。あれって……塩じゃないか?
「ありがとうございます」とアリスは、そのままコーヒーに塩らしきものを振りかけた。
「サヲリさん、サヲリさん」とできるだけ声のトーンを落として、「あれって塩なんじゃ?」って聞いてみる。するとサヲリさんは、さも当然のように「そうだね、塩だよ!」と答えた。
「アリスちゃんは、コーヒーの原産国である本場旧エチオピア式だからね。コーヒーに塩をかけて飲むのがスタンダードなのさ!」
「マジで!?」
「マジさ。大マジさ!アリスちゃんは普段、コーヒーに塩を入れて飲むのさ!」
そんな僕等の会話を「どこか、おかしいところでもありましたか?」とアリスは不思議そうな顔で見ていた。
兎にも角にも、一番の不安要素だったアリスに誤解がないように説明する事ができた。
これで一片の憂いもなしに立ち向かえるってもんだ!
しかし、僕は抜け落ちていた。
最近、身に降りかかってきた理不尽な戦いの数々。
そのため、本物の騎士さまとの決闘を行うという無謀さが、頭から抜け落ちていたのだ。
そして、間もなく、その恐怖を実感する事になる。
「それじゃ、善は急げって言うから午後に開始ね」
「えっ、今日に今日ですか?」
「うん、元々は近くに用事があったから、サヲリちゃんの様子を見に来ただけだから。あまり時間はないんだ。それじゃ!」
そのままミドリさんは巨大白馬に飛び乗り、走り去っていった。
どうやら、その用事とやらを先に済ませてくるのだろう。
「……どうするんですか?」とサヲリさんの方を見ると、彼女は両手を広げて肩をすくめるポーズを取った。
もしかすると彼女は、姉のこういう行動に慣れているのかもしれない。
しかし、ピッタと彼女の動きが止まる。 さっきまで無表情だった彼女の顔はみるみるうちに強張っていく。
「アリスちゃんになんて言えばいいのだろうか?」
「――――ッッッ!?」
きっと鏡をみれば、僕はサヲリさんと同じ表情になっているのだろう。
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「という事で決闘する事になりました」
目の前の少女は、静かに「……そうですか」と呟いた。
学園内のカフェ。その一角は奇妙な緊張感で張り詰めていた。
僕とサヲリさんはアリスを加え、3人でテーブル席に座ってミドリさんとの決闘の説明をしたのだ。
アリスは動揺を隠しているつもりなのだろうが、カクカクとした動作でコーヒーカップを持ち上げ、口につけた。そして――――
「……うぐっ! けほっ!けほっ!」
と急にむせて、咳を出す。
「私としたことが、砂糖と塩を間違えてしまいました」
アリスは、そう言った。
しかし、そんなはずはないのだ。なぜなら――――
このテーブルには砂糖だけで塩なんてどこにも置いていないのだから!
「はい!これ、アリスちゃんが愛用してるやつだよ!」
ハイテンションモードに戻ったサヲリさんは、「キャ八ッ」と語尾につけながら、ごそごそと取り出した小瓶をアリスに手渡した。
いや、ちょっと待て。あれって……塩じゃないか?
「ありがとうございます」とアリスは、そのままコーヒーに塩らしきものを振りかけた。
「サヲリさん、サヲリさん」とできるだけ声のトーンを落として、「あれって塩なんじゃ?」って聞いてみる。するとサヲリさんは、さも当然のように「そうだね、塩だよ!」と答えた。
「アリスちゃんは、コーヒーの原産国である本場旧エチオピア式だからね。コーヒーに塩をかけて飲むのがスタンダードなのさ!」
「マジで!?」
「マジさ。大マジさ!アリスちゃんは普段、コーヒーに塩を入れて飲むのさ!」
そんな僕等の会話を「どこか、おかしいところでもありましたか?」とアリスは不思議そうな顔で見ていた。
兎にも角にも、一番の不安要素だったアリスに誤解がないように説明する事ができた。
これで一片の憂いもなしに立ち向かえるってもんだ!
しかし、僕は抜け落ちていた。
最近、身に降りかかってきた理不尽な戦いの数々。
そのため、本物の騎士さまとの決闘を行うという無謀さが、頭から抜け落ちていたのだ。
そして、間もなく、その恐怖を実感する事になる。
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