超迷宮奇譚伝 『このアイテムは装備できません!』 

チョーカー

エピローグ


 ―――3日後―――

 「今日はみなさん、転校生を紹介します」

 朝の授業は、騒めきではじまった。
 転校生? 最上級生のクラスに?

 ざわ…… ざわ……

  ざわ…… ざわ……

 サンボル先生に呼ばれて入室してきた少女。
 赤をイメージカラーにしたような少女が入ってきた。

 「それでは、今日からみなさんの新しいお友達になるロウ・クリムちゃんです」

 サンボル先生の紹介に合わせて、彼女は軽く頭を下げた。
 ロウ・クリムはシュット学園に転向という設定で入学する事になった。
 裏側でどんなやり取りが行われたのか? どんなに高度な政治的な介入があったのか?
 想像したくはない。
 僕だって、当事者であるはずの僕だって、今回の事件の全貌はわかっていない。

 国家戦略である、魔剣を利用した人工的人間によるダンジョン探索プロジェクト。

 その計画の肝であるはずの彼女。
 たぶん、研究所とかで暮らしていたはずだ。
 そんな彼女を誰がたぶらかして、シュット学園のダンジョンに誘導したのか?


 実行犯であるタナカくん1人では不可能なはずだ。 
 そのタナカくんも姿を消している。
 病院から意識不明で、意識を取り戻したとしても1人で動ける体ではなかったはずなのに……

 結局、今回の事件はなんだったのだろうか?
 なんのために誰が、どんな目的で? 
 もう犯人の目的が僕が保有している『龍の足枷』であるとい前提条件ですら半信半疑だ。
 話が大きくなり過ぎて、ただの学生に過ぎない僕の理解力や想像力ではついていけない。
 また、その内、訳知り顔のドラゴンに会いに行って意見でも聞いてみなくちゃいけないか……僕はそう考えていた。

 そんな事を考えていると、普通に授業が開始されていた。
 なんとなく、自然に視線がクリムの方向へ動いた。
 彼女は机に頭を伏せて……、普通に寝ていた。
 「おいおいッ!」と声を出して突っ込みそうになってしまった。
 しかし、次の瞬間、クリムの目が勢いよく開いた。
 もしかしたら、他者からの視線や感情を察知する機能がついているのかもしれない。
 少し離れた状態で見つめ合うような状況。
 不意に彼女の唇が動く。 彼女は声を出さずに唇の動きだけでメッセージを伝えてきた。

 『これからよろしくね。お父さん』

 ……? 一瞬、意味がわからなかったが……  
 戦いの最初にそんな事を言った気がする。

 それを見ていたのだろう。 本物の父親であるサンボル先生が笑いを噴出した。
 キョトンとするクラスメイトたち。 なんだか、これからを暗示しているみたいで……


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