超迷宮奇譚伝 『このアイテムは装備できません!』
数日前 (回想) その3
ロウ・クリム。それは魔剣の名前だった。
サンボル先生がフリーの探索者時代にダンジョンで手に入れた武器。
さて―———
膨大な魔力と秘めたアイテムが、どうしてダンジョンに転がっているのか?
それは明らかになっていない。
過去の探索者がダンジョン内で失った武器が、長い年月をかけ、ダンジョンが放出する魔力の影響を受けた物なのか?
あるいは、数百年前の失われた技術で作られた武器が、何かの原因で隠されていたのか?
神聖、神秘が宿った宗教的シンボルとして扱われている武器も存在している。
兎にも角にも、現在の技術では再現不可能の武器がダンジョンには転がっている。
サンボル先生が使っていた魔剣ロウ・クリムも、そういう類だったらしい。
そうすると、やっぱり……避けられない疑問が浮かぶ。
それが、どうして人間に?
いくらなんでも、どんな魔力を帯びても……武器は人間にならない。
なにより、サンボル先生の体を元にして作られたのがクリムという少女の正体だったはずだ。
可能性があるとしたら……
それは魔物だ。
ほとんどの魔物は、生物の常識から大きく外れているモノだ。
だから魔物は生物ではなく、魔物というジャンルの存在にカテゴライズされている。
現に魔物には、どう見ても無機物に生命(?)が宿っているようなモノがいる。
……いや、しかし――――クリムは人間だ。
それは最上級の魔物であり、魔物の王と呼んでも差し支えない存在であるドラゴンからのお墨付きだ。
だから、やはりクリムは人間なのだろう。だとしたら……
余計にわからない。いや、わからないフリをしている。
もうすでに答えにたどり着ける情報は提示されている。
武器が人間にならない。
それが正しいとしたら? それを今の条件に当てはめたら? 逆に考えてみたら?
武器は人間にならない。ただし————
人間は武器になる事もある。
優秀な探索者の遺伝子から、生まれた少女。
魔物の生態を利用して、魔剣の力を取り込んでいる。
「……」 「……」
僕とサンボル先生。
両者、沈黙。
暫し、沈黙。
その沈黙を先に破ったのは僕の方だった。
「……どうしてそんな事を?」
自然と口に出た言葉だった。しかし、サンボル先生への糾弾するニュアンスがしっかりと含まれていた。
サンボル先生は「言い訳になるかもしれないが」と前置きをして、重い口を開く。
「人工的にダンジョン探索に特化した人間を創る計画があったからです」
それは、少し前に言っていた言葉を同じような答えだった。
確か、その時は―――
『彼女は、ダンジョン完全攻略を目的に作られた人間なんだよ。だから、彼女と私の違いは意図的に作られている。実験とデータ観測のために……ね』
けど……
僕は「あぁ、やっぱり」と呟いた。
「やっぱり?」とサンボル先生は聞き返してきた。
「自分の分身を作って、自分の武器を魔力の燃料タンクにする。それはサンボル先生個人でできる事ではないでしょ?できるとしたら……」
いくつかの可能性が選択肢として頭に浮かんだが「国です」とサンボル先生が先に答えてくれた。
「この学園が設立される事になった直後にスカウトが来ました。もちろん、即答しましたよ。ついに国が国家戦略としてダンジョン攻略に乗り出したという期待と、それに最前線と関われるという名誉は計り知れませんでした。――――しかし、条件がありました」
「その条件が?」
「えぇ、理想的な探索者像とカリキュラム作成のために私の体を調査する事が1つ。もう1つが……
魔剣ロウ・クリムの譲渡でした」
「譲渡? 愛刀を無償で渡したのですか?」と僕の質問に「教員採用の条件だから無償というわけではありませんが……」と返された。
「いくら魔剣と言っても長い間使ってきましたからね。武器として寿命は間近だったのを誤魔化し誤魔化し使っていたのですよ。それをダンジョン研究の役に立てばと考えたのです」
「それが、サンボル先生の分身。古い言葉を使えばクローン人間のパワーアップに使われた。そうですね?」
サンボル先生は頷いた。
僕はため息をついた。本音を言えば、話が大き過ぎて、ついていけない。
しかし、話は終わりではなかった。
「サクラくんは勘違いをしています」
「勘違い?」
「サクラくんは、魔剣が『燃料タンクとして』使われていると思っていますね」
「……違うのですか?」
「えぇ、違います。魔剣が、魔剣こそが彼女の本体なのです」
「それは、どういう意味ですか?」
「単純ですよ。魔剣に分解した人間の……彼女の肉体を……」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
それ以上は思い出したくもない。
サンボル先生がフリーの探索者時代にダンジョンで手に入れた武器。
さて―———
膨大な魔力と秘めたアイテムが、どうしてダンジョンに転がっているのか?
それは明らかになっていない。
過去の探索者がダンジョン内で失った武器が、長い年月をかけ、ダンジョンが放出する魔力の影響を受けた物なのか?
あるいは、数百年前の失われた技術で作られた武器が、何かの原因で隠されていたのか?
神聖、神秘が宿った宗教的シンボルとして扱われている武器も存在している。
兎にも角にも、現在の技術では再現不可能の武器がダンジョンには転がっている。
サンボル先生が使っていた魔剣ロウ・クリムも、そういう類だったらしい。
そうすると、やっぱり……避けられない疑問が浮かぶ。
それが、どうして人間に?
いくらなんでも、どんな魔力を帯びても……武器は人間にならない。
なにより、サンボル先生の体を元にして作られたのがクリムという少女の正体だったはずだ。
可能性があるとしたら……
それは魔物だ。
ほとんどの魔物は、生物の常識から大きく外れているモノだ。
だから魔物は生物ではなく、魔物というジャンルの存在にカテゴライズされている。
現に魔物には、どう見ても無機物に生命(?)が宿っているようなモノがいる。
……いや、しかし――――クリムは人間だ。
それは最上級の魔物であり、魔物の王と呼んでも差し支えない存在であるドラゴンからのお墨付きだ。
だから、やはりクリムは人間なのだろう。だとしたら……
余計にわからない。いや、わからないフリをしている。
もうすでに答えにたどり着ける情報は提示されている。
武器が人間にならない。
それが正しいとしたら? それを今の条件に当てはめたら? 逆に考えてみたら?
武器は人間にならない。ただし————
人間は武器になる事もある。
優秀な探索者の遺伝子から、生まれた少女。
魔物の生態を利用して、魔剣の力を取り込んでいる。
「……」 「……」
僕とサンボル先生。
両者、沈黙。
暫し、沈黙。
その沈黙を先に破ったのは僕の方だった。
「……どうしてそんな事を?」
自然と口に出た言葉だった。しかし、サンボル先生への糾弾するニュアンスがしっかりと含まれていた。
サンボル先生は「言い訳になるかもしれないが」と前置きをして、重い口を開く。
「人工的にダンジョン探索に特化した人間を創る計画があったからです」
それは、少し前に言っていた言葉を同じような答えだった。
確か、その時は―――
『彼女は、ダンジョン完全攻略を目的に作られた人間なんだよ。だから、彼女と私の違いは意図的に作られている。実験とデータ観測のために……ね』
けど……
僕は「あぁ、やっぱり」と呟いた。
「やっぱり?」とサンボル先生は聞き返してきた。
「自分の分身を作って、自分の武器を魔力の燃料タンクにする。それはサンボル先生個人でできる事ではないでしょ?できるとしたら……」
いくつかの可能性が選択肢として頭に浮かんだが「国です」とサンボル先生が先に答えてくれた。
「この学園が設立される事になった直後にスカウトが来ました。もちろん、即答しましたよ。ついに国が国家戦略としてダンジョン攻略に乗り出したという期待と、それに最前線と関われるという名誉は計り知れませんでした。――――しかし、条件がありました」
「その条件が?」
「えぇ、理想的な探索者像とカリキュラム作成のために私の体を調査する事が1つ。もう1つが……
魔剣ロウ・クリムの譲渡でした」
「譲渡? 愛刀を無償で渡したのですか?」と僕の質問に「教員採用の条件だから無償というわけではありませんが……」と返された。
「いくら魔剣と言っても長い間使ってきましたからね。武器として寿命は間近だったのを誤魔化し誤魔化し使っていたのですよ。それをダンジョン研究の役に立てばと考えたのです」
「それが、サンボル先生の分身。古い言葉を使えばクローン人間のパワーアップに使われた。そうですね?」
サンボル先生は頷いた。
僕はため息をついた。本音を言えば、話が大き過ぎて、ついていけない。
しかし、話は終わりではなかった。
「サクラくんは勘違いをしています」
「勘違い?」
「サクラくんは、魔剣が『燃料タンクとして』使われていると思っていますね」
「……違うのですか?」
「えぇ、違います。魔剣が、魔剣こそが彼女の本体なのです」
「それは、どういう意味ですか?」
「単純ですよ。魔剣に分解した人間の……彼女の肉体を……」
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・・・・・・
・・・・・・・・・
それ以上は思い出したくもない。
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