異世界リベンジャー

チョーカー

VSオルド戦 決着

 オルドは剣に手をかける。
 威圧感で大気が震える。それが、バチバチと俺の皮膚を叩く。
 殺意や闘気といった意志の力が物理的な力へ変換されているのだ。
 ナシオンの騎士団長。それはナシオンにおいて最強の地位。
 今まで、いろんな人間と戦ってきた。しかし、断言できる。
 目の前の人物は、過去戦った、どの人物よりも強い。
 逃げ出したいと気持ちが湧いてくる。そうすれば楽だ。
 しかし、その感情は矛盾している。俺は死線を越えるために戦場に来たのだから……

 「どうした?剣を抜かないのか?」

 オルドの問いかけにハッとする。
 俺の腰には一振りの剣。今の今まで抜かなかった聖剣『魔人殺し』。

 「この剣はクルスの形見です。もしも、戦場で貴方と対峙する事になったら渡そうと思っていました。
 しかし――――今は――――」
 「その心意気良し!互いに不満に思う事があるならば剣を持って語れ!言葉でワシは変われない。命を賭けた言葉を刃に乗せ、大いに振るえ」

 俺はオルドの言葉に舌打ちをした。
 厄介だ。どちらが強いかでしか成否を決められない。
 それは――――クルスもまた――――そうだったから……

 俺は剣を抜いた。

 目前のオルド。その構えはクルスに似ている。
 剣先をこちらに向けた突き技主体の構えだ。
 ならば、俺は剣を横に寝かせる。  
 相手の突きを弾き、がら空きになった胴に一撃を放つ構え。
 いつの間にか、この構えが体に染みついてしまった。 少し前まで、俺のは剣を振るセンスは皆無だったのに。
 少し笑った。
 その思考が隙になったのか、オルドが前に出る。
 やはり突き技。クルスにオーバーラップして見える。
 しかし――――

 俺は大きく横に飛び回避を選択。
 俺の横を通過したオルドが巻き起こした突風に顔が叩かれた。

 (ク、クルスよりも速い。遥かに……)

 そんな思考もすぐに中断する。
 なぜなら、オルドは横に飛んだからだ。速度の減速を限りなく最小で、まるで誘導弾の如く、追尾弾の如く、追ってくる。
 それも避ける。2回、3回、4回目は避けきれない。
 オルドから繰り出される突きの軌道を変えようと、俺は剣を振るう。
 しかし、接触と同時に吹き飛ばされた。
 すぐさま、立ち上がる。
 顔を上げると、オルドの顔をそこにあった。
 距離で言うと10センチほどの超至近距離。
 俺は慌てて、距離を取ろうと後方へ飛ぶ。
 しかし、同じ速度、同じ距離をオルドも飛び、ついてくる。

 (は、離れない)

 剣を振るうにしても、拳を振るうにしても近すぎる距離。
 「ならば!?」と俺はオルドの体にしがみついた。
 流石のオルドも予想外だったのか?一瞬の膠着、一瞬の迷いを感じる。
 好機!
 俺はオルドの股に右足を差し込み、右回転で腰を捻る。
 それと同時に右足をオルドの左足にひっかけて、踵を跳ね上げる。
 柔道で言う内股という投げ技。
 オルドに取って未知の技だったのか? なんの抵抗もなく、そのまま簡単に投げた。
 そのまま寝技グランドへ移行。
 上を取った俺は、前腕をオルドの喉に押し入れた。
 ギロチンチョークという技だ。
 喉を圧縮する技。この技で失神したりする事は皆無だが、喉を押され続ける苦しさは強烈だ。
 オルドは下から暴れる。片手に握った剣を振り回しているが、体を密着してる俺には皮膚が切られる程度のダメージしか与えられない。

 (いいぞ、暴れるだけ暴れろ!)

 柔道の寝技は、下の者は上の者より3倍も体力を消耗すると言われている。

 断言しよう。

 柔道技で最も実戦的な技は抑え込みである。
 確実に相手の首級を取るために開発された技。
 投げ技や絞め技、あるいは関節技とは違い――――完全に人を殺す事のみを目的で作られた技だ。

 「剣で語れ?お前は死んだ娘と剣で語れ合えるのか?騎士の矜持?そんな物のためにクルスは死んだ。
 そんな物が、1人の女子を泣かせて、殺した。騎士道?そんな物は――――

 クソッタレだ!?」

 密着した空間。オルド同様に俺も剣を振るえない。
 しかし、振るえる剣もあった。
 俺を手刀が、動きを封じされたオルドに止めを刺す。


  
 

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