異世界リベンジャー
死に場所を求め
視覚を奪われたパワードスーツ。まさか、外に出てガラスの汚れをふき取るなんて不可能だろう。
もはや、シェルに残された選択肢は逃げの一手だった。
勢いよく、俺に背を向けて、全速力で遠ざかって行った。
俺は、追撃を仕掛ける事もなく、見送るだけだった。
さて―――
俺はアセシを見る。彼の表情から内心は読めない。
彼に取っての俺は――――姉殺し。
肉親を殺した裏切り者でしかない。
「……」
「……」
互いに無言の時間が続く。
先に口を開いたのは、アセシだった。
「姉はどうででしたか?」
俺は少し考えて、「……強かったよ」とだけ答える。
「……そうですか?それは正々堂々とした決闘でしたか?」
「……」と、俺はその問いに答える事はできなかった。
そんな俺の様子を、アセシはどう感じ取ったのだろうか?
「貴方に殺されるなら、姉はきっと本望だったでしょう。認めた相手を戦い、命を散らす。むしろ、騎士の本懐と言っても過言ではない。だが、それは穢されていたのですね」
アセシからが発しているのは怒りだった。
「姉は裏切られた。忠義を尽くした国に、最後は内面をズタズタに切り裂かれた……では、僕はどうすればいいのでしょ?」
「お前の好きにしろ」
俺は投げやり気味に答えた。
もう――――俺は――――
それに答えてやる立場じゃない。
「俺を殺したいと言うなら……全てが終わったら、それも構わない」
「……それはユズルさん」とアセシは急に力を抜けたような口調になる。
「それは、貴方が自分のために、死に場所を探しているだけでしょ?」
「あぁ、そうだな」
俺はあっさりと肯定する。
そうか、俺は死にたくなっていたのか。
けど、死ねない。なぜなら、死の直前にクルスからモナルの事を頼まれたから……
ひょっとして、クルスは俺が死にたがる事を想定して、そう言ったのかもしれない。
事実、俺はモナルを守るために死ねない。
……本当に?
今も、腕の中で眠っているモナルの顔を眺める。
モナルだけなら、狙われる理由はない?
いや、ここまで大きくなった騒動に置いて渦中の人物であるモナルには、命を狙われる理由は大いにある。しかし、それと同様に彼女を守ろうとする勢力もあるはずだ。
まさか、全ての国民が彼女の敵になるわけではない。
それだったら……
「アセシ」
「はい、何でしょうか?」
「モナルを任せられるような人物……任せて、必ず命を保障してくれる人物に心当たりはあるか?」
「そりゃ、もちろん。たくさんいますよ」
「……そうか。それじゃ、頼まれてくれるか?」
「それは構いませんが……ところでユズルさん」
「なんだ?」
「僕は今まで、人に言えない事をやっていました」
「あぁ、なんとなくは察してた」
「実は、『魔王』軍と通じてました」
「……驚かねぇよ?」
「できるかもしれまんよ。貴方に――――貴方に相応しい死に場所を用意する事が」
「……」
この時、俺はどんな表情を浮かべていたのだろうか?
もはや、シェルに残された選択肢は逃げの一手だった。
勢いよく、俺に背を向けて、全速力で遠ざかって行った。
俺は、追撃を仕掛ける事もなく、見送るだけだった。
さて―――
俺はアセシを見る。彼の表情から内心は読めない。
彼に取っての俺は――――姉殺し。
肉親を殺した裏切り者でしかない。
「……」
「……」
互いに無言の時間が続く。
先に口を開いたのは、アセシだった。
「姉はどうででしたか?」
俺は少し考えて、「……強かったよ」とだけ答える。
「……そうですか?それは正々堂々とした決闘でしたか?」
「……」と、俺はその問いに答える事はできなかった。
そんな俺の様子を、アセシはどう感じ取ったのだろうか?
「貴方に殺されるなら、姉はきっと本望だったでしょう。認めた相手を戦い、命を散らす。むしろ、騎士の本懐と言っても過言ではない。だが、それは穢されていたのですね」
アセシからが発しているのは怒りだった。
「姉は裏切られた。忠義を尽くした国に、最後は内面をズタズタに切り裂かれた……では、僕はどうすればいいのでしょ?」
「お前の好きにしろ」
俺は投げやり気味に答えた。
もう――――俺は――――
それに答えてやる立場じゃない。
「俺を殺したいと言うなら……全てが終わったら、それも構わない」
「……それはユズルさん」とアセシは急に力を抜けたような口調になる。
「それは、貴方が自分のために、死に場所を探しているだけでしょ?」
「あぁ、そうだな」
俺はあっさりと肯定する。
そうか、俺は死にたくなっていたのか。
けど、死ねない。なぜなら、死の直前にクルスからモナルの事を頼まれたから……
ひょっとして、クルスは俺が死にたがる事を想定して、そう言ったのかもしれない。
事実、俺はモナルを守るために死ねない。
……本当に?
今も、腕の中で眠っているモナルの顔を眺める。
モナルだけなら、狙われる理由はない?
いや、ここまで大きくなった騒動に置いて渦中の人物であるモナルには、命を狙われる理由は大いにある。しかし、それと同様に彼女を守ろうとする勢力もあるはずだ。
まさか、全ての国民が彼女の敵になるわけではない。
それだったら……
「アセシ」
「はい、何でしょうか?」
「モナルを任せられるような人物……任せて、必ず命を保障してくれる人物に心当たりはあるか?」
「そりゃ、もちろん。たくさんいますよ」
「……そうか。それじゃ、頼まれてくれるか?」
「それは構いませんが……ところでユズルさん」
「なんだ?」
「僕は今まで、人に言えない事をやっていました」
「あぁ、なんとなくは察してた」
「実は、『魔王』軍と通じてました」
「……驚かねぇよ?」
「できるかもしれまんよ。貴方に――――貴方に相応しい死に場所を用意する事が」
「……」
この時、俺はどんな表情を浮かべていたのだろうか?
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