現世(うつしよ)と幻(うつつ)の世界で……

ノベルバユーザー173744

第76話、祐也は調べた内容を、説明しました。

くれないの破壊的英会話に撃沈した祐也ゆうやに、モルガーナが慌てて、英語を教える役を引き受けた。
そして、一夜明け、

「やぁ。君が祐也だね。ガラハッドだよ。おじさんと呼んでおくれ~」

と、姿を見せたのは、大柄で筋肉質、赤髪と髭の男。
服は古ぼけて穴の空いたシャツにボロボロのデニムパンツ。

あははは~‼

と笑う姿は豪快であるが……、

「あの、失礼ですが……もしかして、だ、大臣の?」
「あぁ。一応な~‼おじさんは、仕事と休暇は使い分けとるんだ」

笑う。
テレビでは厳しい眼差しで、正論をはく身なりのきちんとした大臣が、家では普通のおじさん……。
横で苦笑する日向ひなた

「俺もビックリしたが、慣れると、面白いぞ?」
『あー!英語ノーデイ‼なのに‼チップ要求~‼』

くれないの一言に、

『紅。ノーもデイも英語だが?紅の方がチップだぞ?』
『ガーン‼昨日は頑張ってモルガーナさんのお手伝いしたのに~‼』
『何してるんだ?』
『えへん‼みんなが英語はワーってなるからね?日本語しゃべれる人を毎日一人選んで、その人とだけ日本語なんだよ~‼今日は、ひなにいちゃん‼』
「最近は英語の方が楽なんだが……。それより、モルガーナさん」

日向は差し出す。

「これ、なんでしょう」

プルプル震えて怯えている日向の指にぶら下げられているもの。
大きさは二センチほど……小さいものの、手足があり、頭があり、そして羽があった。

「あら、フェアリー……だけど……見たことはないわ」
「エェェ‼見られるんですか?」
「うっすらとだけど。この子ほどはっきりは見えないわ。ちょっと下ろしてくれる?」

自分の手のひらに乗せて、

「あなたはだぁれ?私はモルガーナよ」

問いかけると、

『おかあしゃん、たしゅけて。おとうしゃんどこでしゅか』

たどたどしい日本語。

『わぁ‼日本語しゃべったぁぁ‼』
『こら‼騒がない』

祐也の声に振り返ったフェアリーはてててと走ってくると、

『おとうしゃん‼』
『……俺より前に親父だな。祐也』
『え、えぇ?ちょっ……待ってくれ、も、もしかして……ブロンズ姫‼あのときのか?』
『おとうしゃんが植えてくれたのでしゅ』

エッヘン。
と、小さい赤ちゃん妖精は自慢するがすぐに、

『おとうしゃん‼おかあしゃんが捕まってましゅ‼あたちはおかあしゃんにしがみついてまちたが、見つけられて、鳥しゃんに運ばれたでしゅ‼ぽいっと落ちたら、ちゅかまったでしゅ』
『どこから来たんだ?』

ウェインの顔を見ると答える。

『鳥しゃんはおしゃべりしゃんでしゅ。日が昇らないと飛べないって。日が真正面だから嫌だわって。それに、妖精の王子しゃまと東の島国の、妖精の血を引いたお姫しゃまとの結婚は今晩だって』
『他には‼』

う~んと考えて、

『本当は、妖精の取り替え子のレディが戻ってきたけれど、うゆさい。それに比べて、ハンガーストライキに嫌々言うけど、シルバーのリングを渡したらありがとうってゆったおひめしゃまは可愛い。王子しゃまは気を引こうとすゆけど、嫌々って。でも、今晩、狼が戻ってくるから、ダイジョウブ……って』
『狼?』

日向の一言に、モルガーナが、

「父の事かも知れないわ‼」
「え?アルテミス卿?」
「公に名乗っているアーサーは月の狼と言う意味なの。今夜、狼……」
「モルガーナ。君の実家じゃないかな?ここから西だし。鳥たちもそこまで考えてなかったから、ここがウェインの領地とも思っていない。しかし、どうして父上が妖精と……」
「その件なんですが……」

祐也は、持っていた本と、写しを出す。

「今夜そんなことがあると言うなら急ぐべきだと思うんです。この日記には、結論から言って、解決したけれど、曖昧だった内容が記載されてました。でも、この方法しかないなら……」
「どんな方法だ?」
「昔なので、今では意味もないような気がするんですけど……馬の蹄鉄ていてつ。月の光を帯びた銀のナイフ……です。他は、モルガーナさんは妖精はハーブが好きと言っていましたが、前に一回、向こうで風遊ふゆかあさんに聞いたんです。虫除けに煙を焚くと逃げる。それに、ハーブにも嫌われるハーブがありました。臭いのきついハーブやカラシですね。日本でも鷹の爪と言って、唐がらしを干して細かく砕いたものを一味いちみと言って使いますが、激しい辛さは苦手だと思います」
「何でだね?」

ガラハッドは興味津々に聞く。
すると奇妙な顔で、

「……穐斗あきとは、ものすごく一味や辛子、七味しちみが苦手なんです」
「七味?」
「はい、一味……辛子を砕いたもの以外に、芥子けしの実、陳皮ちんぴ、胡麻、山椒さんしょう、麻の実、紫蘇しそ、海苔、青海苔、生姜、菜種なたね等が入っています。一応陳皮は蜜柑みかんの皮を天日で干して、入浴剤にしたり、中国の漢方薬として利用されています。生姜も紫蘇も、アジアのハーブです。ですが、生姜は体を暖める効果がある代わりにピリッとします。紫蘇は少しレモンバームに近い感じですね。山椒もアジアのハーブで、独特の辛みです」
「俺は辛いの大丈夫だがな。持ってきているし」

日向は一味と七味を出す。

「先輩‼」
「しばらく辛いものは控える……。それで穐斗が戻れば万々歳だ」
「……う~む。曖昧だが、それで行くしかあるまい」

ガラハッドは頷く。

「えっ?ガラハッドさんも行くんですか?」
「わしは理解できないことが好きなんだが、全くもって、そういうことに出会わんのだよ。残念だ。でも、初めて妖精に会えた‼こんなうれしいことはない‼」

髭親父が目をキラキラさせて、祐也の目の前の妖精を見ている。

『えっと、ブロンズ姫。おじさんに、はじめましてって』
『はじめましゅて‼おじちゃま』
「おぉぉぉ~( 〃▽〃)何てかわいいんだ‼モーリィ‼モーリィ‼わしも、モーリィの見ている世界が見えたぞ‼」
「まだ一人でしょ?それにこの子は、人の孵した妖精よ?」
「それでもいいんだ~‼幽霊がいると言う屋敷に行っても、会わないし、見えないし、その部屋にすんだら、幽霊がいなくなったと言われたし……珍しいものが好きなのに‼」

嘆くおじさんに、祐也は、

『ブロンズ姫……おじさんと遊んでいいよ』
『あい‼』



このあと、祐也と日向、ウェインは見るんじゃなかったと心底後悔するのだった。

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