現世(うつしよ)と幻(うつつ)の世界で……

ノベルバユーザー173744

第67話、祐也は日記の中に書かれていたものに行き着くことができました。

病院では祐也ゆうやの体調は悪化するといけないと言うことで、ウェインは父に頼み、退院をさせてもらう代わりに、有名な医師と看護師に通いで来てもらうことにした。

父の屋敷に戻ったウェインとくれないと、寝台で点滴を打ちつつ戻ってきた祐也に、家令以下が迎える。

「おかえりなさいませ。何かがあったとの事ですが……」
「あぁ、とある子爵家の方がね……後で話すよ。まずは祐也と紅の部屋は……」
「整っております。お付きは……」
「祐也には看護師がつくことになっているよ。で、ジョゼフィン」
「は、はい。若君様」

恐る恐る出てきたのはクルミ色の短い髪と瞳の少女。

「ジョゼフィン、日本語はある程度解るかな?」
「は、はい。大丈夫です‼」
「じゃぁ、ジョゼフィン。君に、この紅付きのメイドを。英語を勉強したいって言っていたからね。暇があったらよろしく頼むよ」

微笑み、そして、不安そうな紅に、

『紅?この、メイドのジョゼフィンが、日本語を少し話すことができるから、英語を教えてもらいつつ、ここで祐也が元気になるまでいるんだよ?』
『ウェインさんは?』
『領地の事もあるし、ちょっと忙しいけれど、時々ヴィヴィも来るから……あ、僕も手配がすんだら戻ってくるからね?皆や、もしかしたら父に会うと思うけど、大丈夫だよ、優しい人だから』

よしよしと頭を撫でる。



そして、兄の祐也の病室の隣が紅の部屋になったのだが、

『え、えぇぇぇぇ‼フリル、レース‼リボン~⁉あの剣とか、槍とか~‼』
『こ、こちらは客間ですので、そういったものは、防犯上と言うか、お客様に危害が及ばないようにおかれておりません。紅様』
『わぁぁ、日本語上手だね~‼ジョゼフィン。紅で良いよ?うち……私は、ふつーの一般人だから』
『そんな‼お屋敷の客人にそんなことは……』
『う~ん……じゃぁ、英語教えてくれるんでしょう?その時はレディとか、なしで、紅って呼んでね?紅って呼びにくいでしょ?ね?』

可愛らしい少女の言葉にほだされたのだった。



そして、看護しに許可をもらい、疲れたら休むと言うことで日記を読んでいた祐也は、

『えっ?』

そこには大きく、

Changelingチェンジリング

と言う文字があり、

「我が妻キャロラインは、美しい女性でアイルランド出身だ。本当に美しいが、私のもとに嫁いだときに、不安げに何度も『elfエルフ』や『Fairiesフェアリーズ』を気にする。彼女とは婚約して結婚した。大変な美貌の持ち主だと聞いていたからである。望んで、嫁いでくるはずが、何故か来てくれず、やきもきしていたのだが、ようやく嫁いできてくれた。美しい妻……いとおしい子を産んでほしい……」

「キャロラインに子供が出来た‼とてもうれしいことだ‼だが不安そうな表情をする。『大丈夫だ、私が守る』そう何度も繰り返し、安堵させる。子供が生まれたら、跡継ぎならば本当にうれしいことだ‼」

「子供が生まれた‼うれしい‼妻に良く似た跡取り息子だ‼と喜んだのもつかの間、ランズ・エンドから馬の蹄の音がして、『約束の子供をもらいに来た。代わりにこの子を育てるが良い』と言う声がして、ベッドの上には、似ても似つかぬぎょろっとした瞳のトロールの赤ん坊がいた。愕然とする。『Changeling』?何故だ?どう言うことだ⁉」

「泣き伏して目を合わせようとしない妻に、問い詰めた。すると、アイルランドでは美しい女性を連れ去り、妖精の花嫁、もしくは妖精の子供の乳母にさせられると言う伝説があるという。妻や親族は信じていなかったのだが、結婚の直前に妖精にさらわれ、花嫁にされたのだと言う。『自分には婚約者がいる。近づいたら自害する‼』と、身に帯びていた小刀で拒絶し続けた。そして、根負けした相手が『では、お前が結婚し生まれた息子を奪いに行く。そして、代わりにelf、フェアリー、トロールの子を置いていこう。美しい妻よ。おとなしく身を任せれば、良かったものを……この呪いはお前の子々孫々……男児が途絶えるまで続いていくだろう』そういわれたのだと……。そんな、バカなことはあり得ない。妻を責める事は出来ない。私のために、心を尽くしてくれたのだ」

「トロールの子供を追い出しどうにかして息子を取り戻したいと思うが、妻はこれ以上呪われてはと泣き伏してしまう。しかし、このままでも、この家が絶えてしまう。私の子に跡を継がせたい。私と妻の子だ‼」



看護師が少し離れたところにいるため、言うこともできず、日本語で呟く。

『チェンジリング………取り替え子か……穐斗あきとは詳しいと思うけど……アーサー王伝説は、妖精と密接だし……待てよ。アーサー王は亡くなるとされたときに妖精の国に……言ったわけで、亡くなっていなかった。アーサー王は多分、とても美しい人間で、チェンジリング……現世うつしよでは偽物がトロールであったとしても良いわけだ……』

ノートに書き込みつつ思う。

『でも、このチェンジリングが、穐斗にどう影響しているんだ?……そう言えば、実の父親がチェンジリングで戻ってきたっていっていたよな……どうやってだ?どれに、戻ってきて奇行って……いつ連れ去られたんだ?』



気になることを書き込み、そして、次のページに進むのだった。

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