現世(うつしよ)と幻(うつつ)の世界で……
第50話、祐也はウェインと町に行くことにしました。その前にバイトもしました。
獲れたばかりの獲物のさばきかたは割愛するが、まずは血抜きが必要である。
血を抜いておかないと、肉の美味しさが損なわれるのである。
その為、早々に血を抜き、そして獣にはある匂いを強く放つ部位や腐りやすい内臓などをとっていき、皮を剥がす。
手際よくこなすその様子に、祐也は、
「すごいなぁ。おじさん。手際良いなぁ。それにこれは?」
「ん?あぁ、最近では廃れてきた、地域によっては嫌がられるが、昔は獲物の血を、スープにしていたが、最近は、血や内臓をソーセージにして、茹でて食べる。若様はあまりお好きではないけれど、奥さまは、いただいた命をちゃんと受けとるためにもと。羊や、鳥をさばくときにもそうするんだよ」
「ソーセージ‼豚の腸とか……」
「獲物の腸とかだね。草食動物の腸は長いから、すべてをいただくようにしている」
「はぁ……そうなんだ。あ、教えてください。一応牛はさばいたことがあります」
と手伝う。
ちなみに、血液には栄養分が多く、捨てるよりも、このようにソーセージにして、栄養補給するほうが有効であり、逆に血を流せば、川が汚れたり、日本にはいないが、イングランドには狼やきつねと言った獣を呼ぶ。
ファンタジー小説でも、料理は猟をしてさばいて食べたとなるが、この中間がどうなるかでモンスターや獣を呼ぶ匂いをつけることになるか、保存食を作るかになるのである。
「……手際が良いなぁ。お前さんは」
「本当ですか?」
「家には息子がいるが、ウサギが可哀想だと言って、町に出ていってしまった。私たちも、生きるためにこうしているのに……」
ため息をつく庭師に、祐也は、
「生きるために……そうなんですよね。俺もそう思います。実は、俺の友人の実家が、若い人が町に出ていってしまって、高齢化が進んで、山が荒れて、猪……野豚が増えているんですよ」
「ホォ……どれくらいの大きさになるんだね?」
「聞いたところ、大きくなると100キロは越えて、牙が生えて、人を襲います」
「百キロ‼それは、恐ろしい」
驚く庭師に色々と問いかけ、手伝いをすると、ソーセージと、その日の分の肉、薫製にするために機械に入れた肉と、毛皮。骨と肉の切れはし……そして、
「それはなんですか?」
「ウサギの、毛皮の切れ端だよ。捨てる」
「……毛皮の手入れというか、出すまでの行程は、聞いてもいいですか?」
これからするという行程を見に行き、ついでに、毛を刈ったあとの羊をさばいたあとの、皮をなめす方法も教わり、毛皮の切れ端をもらう。
「どうするんだね?」
「いえ。日本にいる友人に……命を戴いていることを、感謝しようとおもって。まだ兎狩りはあるんですか?」
「あぁ、それが終わったら、今度は私たちじゃなく、森の管理人と共にきつね狩りだよ。きつね狩りと言っても、本当に打つことは少なくて、森の中を見に行く感じだね」
「そうなんですね。じゃぁ、またそのときにお手伝いさせてください。ありがとうございました」
丁寧にお礼をいうと去っていく祐也に庭師たちは、
「もう一人の青年も見た目はキリッとしているけれど、優しいこだったし、今の子も丁寧だなぁ」
「私たちの息子たちに見習わせたいものだ」
とため息をついたのだった。
「あの、モルガーナさん」
やはり血と脂と臭いに、用意されていたお風呂に入った祐也は、モルガーナに声をかける。
「あら、祐也。ガーデナーの皆がとても助かったって喜んでいたわよ」
「お邪魔ばかりで大丈夫かなぁと思ってました」
「それと、はい、これ」
「はい?」
手渡されたコインに目を丸くする。
「えっ?」
「あら、知らなかったかしら?獲物をさばくのは、一番大変な作業でしょう?それにね、最近は皆嫌がるのよ。家のガーデナーは普通にしてくれるけれど、大変な作業だから、いつも、お疲れ様の言葉とチップと言うか、さばいた数によって渡しているのよ。祐也の分だって、皆が」
「エェェ?邪魔しかしてないのに……」
「良いのよ。貰っておきなさいな。来た頃に、日向に聞いたのだけど、穐斗にテディベアを贈るって聞いたわ。このチップで買ってあげるといいと思うわ」
微笑む。
「えっと、モルガーナさん。チーキーってどれくらいですか?」
「え、チーキー?あぁ、メリーソートの『悪戯っ子』ね」
クスクス笑う。
普通テディベアは熊のぬいぐるみだが、チーキーは頭の中心から下の方に顔があり、大きな耳は横、口がにやっとした、変わった表情のテディベアである。
一度見せてもらった穐斗の母の風遊のコレクションはビックリしたことがある。
風遊の部屋は、隠居の一階の一室にあるのだが、メルヘンチックな部屋だった。
テディベアが一杯飾られ、それにミニチュア家具などにも小さいテディベアが座っていて、ベッドの上までもテディベアに侵略されている。
「いかんなぁ思うんやけど……どうしても、気になってなぁ……」
「えっと、それもですか?」
「そうなんよ。チーキー言うて、イングランドのテディベア。大きな耳には鈴がはいっとってな?ほら」
揺らすとチリンチリンと鳴る。
「この鈴が鳴ると幸運を招く言うて、言われとんよ」
と言うことで、穐斗も小さい頃からぬいぐるみではなくテディベアで育ち、独り暮らしの時には持ってこなかったといっていたが、実家の自室には、ドイツのシュタイフ社のテディベアを飾っていた。
「多分、それなら買えるでしょう。もし足りなかったらウェインに言って貸してって言えばいいのよ。今日チップもらったんだって」
「あ、そうですね。そうします」
「あぁ、そう言えば、明日、ウェインがロンドンに行くのよ。一緒にいってらっしゃいな」
モルガーナの一言に、うなずいたのだった。
血を抜いておかないと、肉の美味しさが損なわれるのである。
その為、早々に血を抜き、そして獣にはある匂いを強く放つ部位や腐りやすい内臓などをとっていき、皮を剥がす。
手際よくこなすその様子に、祐也は、
「すごいなぁ。おじさん。手際良いなぁ。それにこれは?」
「ん?あぁ、最近では廃れてきた、地域によっては嫌がられるが、昔は獲物の血を、スープにしていたが、最近は、血や内臓をソーセージにして、茹でて食べる。若様はあまりお好きではないけれど、奥さまは、いただいた命をちゃんと受けとるためにもと。羊や、鳥をさばくときにもそうするんだよ」
「ソーセージ‼豚の腸とか……」
「獲物の腸とかだね。草食動物の腸は長いから、すべてをいただくようにしている」
「はぁ……そうなんだ。あ、教えてください。一応牛はさばいたことがあります」
と手伝う。
ちなみに、血液には栄養分が多く、捨てるよりも、このようにソーセージにして、栄養補給するほうが有効であり、逆に血を流せば、川が汚れたり、日本にはいないが、イングランドには狼やきつねと言った獣を呼ぶ。
ファンタジー小説でも、料理は猟をしてさばいて食べたとなるが、この中間がどうなるかでモンスターや獣を呼ぶ匂いをつけることになるか、保存食を作るかになるのである。
「……手際が良いなぁ。お前さんは」
「本当ですか?」
「家には息子がいるが、ウサギが可哀想だと言って、町に出ていってしまった。私たちも、生きるためにこうしているのに……」
ため息をつく庭師に、祐也は、
「生きるために……そうなんですよね。俺もそう思います。実は、俺の友人の実家が、若い人が町に出ていってしまって、高齢化が進んで、山が荒れて、猪……野豚が増えているんですよ」
「ホォ……どれくらいの大きさになるんだね?」
「聞いたところ、大きくなると100キロは越えて、牙が生えて、人を襲います」
「百キロ‼それは、恐ろしい」
驚く庭師に色々と問いかけ、手伝いをすると、ソーセージと、その日の分の肉、薫製にするために機械に入れた肉と、毛皮。骨と肉の切れはし……そして、
「それはなんですか?」
「ウサギの、毛皮の切れ端だよ。捨てる」
「……毛皮の手入れというか、出すまでの行程は、聞いてもいいですか?」
これからするという行程を見に行き、ついでに、毛を刈ったあとの羊をさばいたあとの、皮をなめす方法も教わり、毛皮の切れ端をもらう。
「どうするんだね?」
「いえ。日本にいる友人に……命を戴いていることを、感謝しようとおもって。まだ兎狩りはあるんですか?」
「あぁ、それが終わったら、今度は私たちじゃなく、森の管理人と共にきつね狩りだよ。きつね狩りと言っても、本当に打つことは少なくて、森の中を見に行く感じだね」
「そうなんですね。じゃぁ、またそのときにお手伝いさせてください。ありがとうございました」
丁寧にお礼をいうと去っていく祐也に庭師たちは、
「もう一人の青年も見た目はキリッとしているけれど、優しいこだったし、今の子も丁寧だなぁ」
「私たちの息子たちに見習わせたいものだ」
とため息をついたのだった。
「あの、モルガーナさん」
やはり血と脂と臭いに、用意されていたお風呂に入った祐也は、モルガーナに声をかける。
「あら、祐也。ガーデナーの皆がとても助かったって喜んでいたわよ」
「お邪魔ばかりで大丈夫かなぁと思ってました」
「それと、はい、これ」
「はい?」
手渡されたコインに目を丸くする。
「えっ?」
「あら、知らなかったかしら?獲物をさばくのは、一番大変な作業でしょう?それにね、最近は皆嫌がるのよ。家のガーデナーは普通にしてくれるけれど、大変な作業だから、いつも、お疲れ様の言葉とチップと言うか、さばいた数によって渡しているのよ。祐也の分だって、皆が」
「エェェ?邪魔しかしてないのに……」
「良いのよ。貰っておきなさいな。来た頃に、日向に聞いたのだけど、穐斗にテディベアを贈るって聞いたわ。このチップで買ってあげるといいと思うわ」
微笑む。
「えっと、モルガーナさん。チーキーってどれくらいですか?」
「え、チーキー?あぁ、メリーソートの『悪戯っ子』ね」
クスクス笑う。
普通テディベアは熊のぬいぐるみだが、チーキーは頭の中心から下の方に顔があり、大きな耳は横、口がにやっとした、変わった表情のテディベアである。
一度見せてもらった穐斗の母の風遊のコレクションはビックリしたことがある。
風遊の部屋は、隠居の一階の一室にあるのだが、メルヘンチックな部屋だった。
テディベアが一杯飾られ、それにミニチュア家具などにも小さいテディベアが座っていて、ベッドの上までもテディベアに侵略されている。
「いかんなぁ思うんやけど……どうしても、気になってなぁ……」
「えっと、それもですか?」
「そうなんよ。チーキー言うて、イングランドのテディベア。大きな耳には鈴がはいっとってな?ほら」
揺らすとチリンチリンと鳴る。
「この鈴が鳴ると幸運を招く言うて、言われとんよ」
と言うことで、穐斗も小さい頃からぬいぐるみではなくテディベアで育ち、独り暮らしの時には持ってこなかったといっていたが、実家の自室には、ドイツのシュタイフ社のテディベアを飾っていた。
「多分、それなら買えるでしょう。もし足りなかったらウェインに言って貸してって言えばいいのよ。今日チップもらったんだって」
「あ、そうですね。そうします」
「あぁ、そう言えば、明日、ウェインがロンドンに行くのよ。一緒にいってらっしゃいな」
モルガーナの一言に、うなずいたのだった。
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