現世(うつしよ)と幻(うつつ)の世界で……
第30話、イングランドに出発の前に醍醐さんのプロポーズです。
祐也は、パスポートと最低限の荷物と共に、日向と出ていく。
しかし、イングランドに向かうには、家から街に向かい、そこの地方空港には直行便はなく、大阪の関西国際空港、もしくは羽田空港、そして成田という方法しかない。
そして料金も高くなるので、日向と安いネットでチケットを購入し、その飛行機で移動することにした。
ちなみに、祐也は未成年の上にクレジットカードはなく、バイトもしていたが、そこも辞めてしまい、無一文同然である。
その為日向が立て替えたのだが、麒一郎が、
「わしらがだそうわい。うちのことや」
「いや、じいちゃん。俺、ちょっとだけ調べたいことがあるんよ。前にスゥの小説の題材にしよかおもとったんや。それに、その調べたもんが、ここで役に立ったらもらおうわい。やけんな、今回は取材や。通訳が祐也。ついでに穐斗の病気について調べるってことで、ええんよ」
日向は笑う。
「それよりも、う~ん。プロバイダに連絡して向こうで使えるようにせないかんなぁ……」
「数日分にして、あとは向こうのウェインにでも相談したらいいんじゃないですか?それに、日本のネット料金って高いんですよ」
「あぁ、それは知っとる。一時的に向こうのにはいってもえぇなぁ」
祐也達を空港に送るのは醍醐と風遊と眠ったままの穐斗。
空港に送ったあと、前の救急病院ではなく、主治医のいる大きな町の病院に行き、穐斗のガーゼを取り除いてもらい戻るのだという。
ある程度の小道を穐斗に教わった祐也が、空港まで運転する。
が、今回は調子の悪い穐斗のためにカーブの多い山道ではなく、政和の家があるという海沿いに降りて走ることになった。
途中までは山の奥の奥と言う感じで、本当に海に出られるのかと心配していたが峠を越えると、遠目に空の青よりも濃い波がたつのが見える海が見えた。
「おぉ‼海や。ほんとに海や」
「降りたら、海沿いに大きい道やで。今日は風がつようないけん良かったわ。強かったら、波かぶるんで」
風遊が、一番後ろで穐斗をひざ枕をしているため、日向の横に座っている醍醐がかなり不機嫌であるのがよく見える。
「醍醐先輩。大丈夫ですか?」
「あぁ、ごめんね。いや、実は五月蠅い兄たちが、空港に着くんですよ。迎えにこい言うて、ほんとにうんざりや……」
「醍醐先輩のお兄さんって確か、紫野さんと標野さんでしたっけ?」
「そうや……あぁ、あいたないなぁ……」
醍醐の双子の兄たちは確か、醍醐よりも8才上。
つまり、28歳である。
「結婚してるんですか?」
「しとったら、おとおはんとおかあはんはなかよう隠居するんやけどなぁ……あのアホにいはんらは、結婚せんのと違いますやろか……」
「双子だから、好きな相手が一緒とか?」
「それやったらまだましや……あのにいはんらは、一卵性双生児で瓜二つなんどす。で、自分の顔が好きや言うて、しかも二つやさかいに、お互いの顔見てウットリや。はたでみとったら不気味やで……」
遠い目をする醍醐。
「しかも、それやったら二人でセェや、おもっとったら、あてが生まれて、あてはおかあはんににとるもんやさかいに……こどもんころから、きれぇなべべ着せてもろて……」
「もう少しで、舞妓さんになる所やったんやと」
親友の日向が口を挟む。
「それに、友人関係だの、いろいろ口を挟むんで、ご両親も怒ってしもて、醍醐を高校の時から別の町の親戚に預けて行かせよったんやと。やけど、すぐに居場所を見つけてしもて、あかんってことで、醍醐にどっか行って、好きなことセェや言うて、だしてもろたんやて」
「ようようあても、楽になったいうのに……あぁ、もう、堪忍や……」
本気で半泣きの醍醐に、風遊が、
「うちにおったらええんよ。田舎いうもんは、ふるさとってことや。生まれはどこでも、人は、いきるときに思うんは、森や川や、海や、田んぼに畑。他にはなんもないけんど、逆になぁ、ないけんこそ、皆にもんてきてええんよ言うて言えるんや。うちも、若い頃は田舎飛び出して、留学制度利用して、ヨーロッパに転々としよったけど……いくら美しい町で、エエもんがあっても、かえろかなぁって思うんは家やったわ。穐斗抱えて育児放棄されとった夏樹連れて、もんてきても、最初は驚かれたわ。けど、父ちゃんも、母ちゃんも、夏樹連れて遊びに行って、よう病気しよった穐斗が熱出した言うたら看病してくれて……、ここがうちのふるさとなんやなぁ思たんよ」
醍醐は目を丸くする。
「いつ出ていってもかまんのよ。醍醐くんや日向くんや祐ちゃんの家はここにあるけんなぁ。安心しいや、言うてあげるけんな?」
「じゃぁ……おってもええんですか?」
醍醐の問いかけに、
「ほやねぇ。いくらでもおりんさいや。その代わり、畑と田んぼと山で、肉や魚は買うけんど、ほぼ自給自足やけどなぁ。お嫁さんがかまんいうたら、いつまででも」
「やったら、風遊さん。あて……私のお嫁さんになってください‼」
横で、日向がぎょっとし、祐也は危うく崖から転落……寸前に急ブレーキを踏む。
穐斗が落ちそうになり、風遊が慌てて抱き締めると、醍醐を軽くにらむ。
「何いよんの。おばはんをからかうんはやめてぇや。怒るで?」
「本当です‼ここで皆のまえでって言うのは、ちょっと残念ですけど、私は、嘘は嫌いですし、それに、一緒にいたいんです‼体調が悪くなる前に穐斗くんにもちゃんと伝えてます‼それに、ひなや祐也くんにも‼」
「あのなぁ?うちは、醍醐くんのひとつ違いの息子もおるんよ?それに、醍醐くんは将来があるやろ?」
「一緒にいたいんです‼年下でも、なんでも。一緒にいたいんです‼」
「じいちゃんとばあちゃんと、穐斗も……それに田舎暮らしは大変やって……」
困ったような風遊に、醍醐は笑う。
「かまん。風遊さんやみんながおったら、私は、幸せやと思います」
風遊は頬を赤らめ、もじもじと、周囲は運転と、イングランドに向かうことに集中するなか、醍醐は一番嬉しそうだったのだった。
しかし、イングランドに向かうには、家から街に向かい、そこの地方空港には直行便はなく、大阪の関西国際空港、もしくは羽田空港、そして成田という方法しかない。
そして料金も高くなるので、日向と安いネットでチケットを購入し、その飛行機で移動することにした。
ちなみに、祐也は未成年の上にクレジットカードはなく、バイトもしていたが、そこも辞めてしまい、無一文同然である。
その為日向が立て替えたのだが、麒一郎が、
「わしらがだそうわい。うちのことや」
「いや、じいちゃん。俺、ちょっとだけ調べたいことがあるんよ。前にスゥの小説の題材にしよかおもとったんや。それに、その調べたもんが、ここで役に立ったらもらおうわい。やけんな、今回は取材や。通訳が祐也。ついでに穐斗の病気について調べるってことで、ええんよ」
日向は笑う。
「それよりも、う~ん。プロバイダに連絡して向こうで使えるようにせないかんなぁ……」
「数日分にして、あとは向こうのウェインにでも相談したらいいんじゃないですか?それに、日本のネット料金って高いんですよ」
「あぁ、それは知っとる。一時的に向こうのにはいってもえぇなぁ」
祐也達を空港に送るのは醍醐と風遊と眠ったままの穐斗。
空港に送ったあと、前の救急病院ではなく、主治医のいる大きな町の病院に行き、穐斗のガーゼを取り除いてもらい戻るのだという。
ある程度の小道を穐斗に教わった祐也が、空港まで運転する。
が、今回は調子の悪い穐斗のためにカーブの多い山道ではなく、政和の家があるという海沿いに降りて走ることになった。
途中までは山の奥の奥と言う感じで、本当に海に出られるのかと心配していたが峠を越えると、遠目に空の青よりも濃い波がたつのが見える海が見えた。
「おぉ‼海や。ほんとに海や」
「降りたら、海沿いに大きい道やで。今日は風がつようないけん良かったわ。強かったら、波かぶるんで」
風遊が、一番後ろで穐斗をひざ枕をしているため、日向の横に座っている醍醐がかなり不機嫌であるのがよく見える。
「醍醐先輩。大丈夫ですか?」
「あぁ、ごめんね。いや、実は五月蠅い兄たちが、空港に着くんですよ。迎えにこい言うて、ほんとにうんざりや……」
「醍醐先輩のお兄さんって確か、紫野さんと標野さんでしたっけ?」
「そうや……あぁ、あいたないなぁ……」
醍醐の双子の兄たちは確か、醍醐よりも8才上。
つまり、28歳である。
「結婚してるんですか?」
「しとったら、おとおはんとおかあはんはなかよう隠居するんやけどなぁ……あのアホにいはんらは、結婚せんのと違いますやろか……」
「双子だから、好きな相手が一緒とか?」
「それやったらまだましや……あのにいはんらは、一卵性双生児で瓜二つなんどす。で、自分の顔が好きや言うて、しかも二つやさかいに、お互いの顔見てウットリや。はたでみとったら不気味やで……」
遠い目をする醍醐。
「しかも、それやったら二人でセェや、おもっとったら、あてが生まれて、あてはおかあはんににとるもんやさかいに……こどもんころから、きれぇなべべ着せてもろて……」
「もう少しで、舞妓さんになる所やったんやと」
親友の日向が口を挟む。
「それに、友人関係だの、いろいろ口を挟むんで、ご両親も怒ってしもて、醍醐を高校の時から別の町の親戚に預けて行かせよったんやと。やけど、すぐに居場所を見つけてしもて、あかんってことで、醍醐にどっか行って、好きなことセェや言うて、だしてもろたんやて」
「ようようあても、楽になったいうのに……あぁ、もう、堪忍や……」
本気で半泣きの醍醐に、風遊が、
「うちにおったらええんよ。田舎いうもんは、ふるさとってことや。生まれはどこでも、人は、いきるときに思うんは、森や川や、海や、田んぼに畑。他にはなんもないけんど、逆になぁ、ないけんこそ、皆にもんてきてええんよ言うて言えるんや。うちも、若い頃は田舎飛び出して、留学制度利用して、ヨーロッパに転々としよったけど……いくら美しい町で、エエもんがあっても、かえろかなぁって思うんは家やったわ。穐斗抱えて育児放棄されとった夏樹連れて、もんてきても、最初は驚かれたわ。けど、父ちゃんも、母ちゃんも、夏樹連れて遊びに行って、よう病気しよった穐斗が熱出した言うたら看病してくれて……、ここがうちのふるさとなんやなぁ思たんよ」
醍醐は目を丸くする。
「いつ出ていってもかまんのよ。醍醐くんや日向くんや祐ちゃんの家はここにあるけんなぁ。安心しいや、言うてあげるけんな?」
「じゃぁ……おってもええんですか?」
醍醐の問いかけに、
「ほやねぇ。いくらでもおりんさいや。その代わり、畑と田んぼと山で、肉や魚は買うけんど、ほぼ自給自足やけどなぁ。お嫁さんがかまんいうたら、いつまででも」
「やったら、風遊さん。あて……私のお嫁さんになってください‼」
横で、日向がぎょっとし、祐也は危うく崖から転落……寸前に急ブレーキを踏む。
穐斗が落ちそうになり、風遊が慌てて抱き締めると、醍醐を軽くにらむ。
「何いよんの。おばはんをからかうんはやめてぇや。怒るで?」
「本当です‼ここで皆のまえでって言うのは、ちょっと残念ですけど、私は、嘘は嫌いですし、それに、一緒にいたいんです‼体調が悪くなる前に穐斗くんにもちゃんと伝えてます‼それに、ひなや祐也くんにも‼」
「あのなぁ?うちは、醍醐くんのひとつ違いの息子もおるんよ?それに、醍醐くんは将来があるやろ?」
「一緒にいたいんです‼年下でも、なんでも。一緒にいたいんです‼」
「じいちゃんとばあちゃんと、穐斗も……それに田舎暮らしは大変やって……」
困ったような風遊に、醍醐は笑う。
「かまん。風遊さんやみんながおったら、私は、幸せやと思います」
風遊は頬を赤らめ、もじもじと、周囲は運転と、イングランドに向かうことに集中するなか、醍醐は一番嬉しそうだったのだった。
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