住み込み就職 お仕事時々お遊び

わいず

死守しなければいけないもの……

あぁぁ、思い出せば思い出す程、闇が深くなっていきますねぇ。

「ふふふ、もう寒気がしてきましたよ」

ぽつり、と休憩室で呟く私。手には、あの頃に出来てしまった痛々しい書物と、私の学生の頃の写真。完全なるレディース風な格好をして……チラ見しただけで頭痛がしました。

あの頃の私。ほんっと、どうかしてましたねぇ。

「このノートは、部屋でビリビリに破いて処分しましょう……下手にゴミに出したら、誰かに見られますからね」

もし、そんな事になったら……あ、止めておきましょうか。想像なんてしたくありません。

「よし、うじうじ考えてもしかたありません! これはロッカーに入れておいて仕事に戻りましょうか」

正直、あの頃を思い出して精神的に疲れたので、もう少し休みたいんですけどね……そうも行きません。早く戻りましょう。

あ、ロッカーにいれるに鍵かけるの忘れないようにしないとダメですね。ま、ここに人のロッカーを開ける人なんていないでしょうがね……。


◇◇◇

「いま、帰りましたぁ」
「お帰りぃ」

ふぅ、ほんの少しだけ気力が回復しました。これからお仕事頑張りますよ!

迎えてくれたのは、長門さんです。さっき、止さんを連れて更衣室に行ったんですが……どうやら戻ってきたみたいですね。

少し、遠くには七瀬さんと止さんがいます。あれ? 止さん、胸を押さえてますね……顔を見てみると、なんだか苦しそうです。あら、なにかあったんですかね?

「うぅ……。ブラキッツいぃ。脱ぎたい」

……なるほど、理由は分かりました。羨ましい事言ってくれますねぇ。

「なぁなぁ、七瀬からちょろっと聞いたんだが、胡桃の母さんが来たんだって? 教えてくれたら挨拶しに行ったのに……」
「そんな事したら場が混沌としそうなので絶対に嫌です」

……長門さん。突然近づいてきて、とんでもない事言わないでくださいよ……。絶対に会わせませんからね。お店が一気に騒がしくなります。

「むぅ。嫌かぁ……会いたいのになぁ」
「そんな顔してもダメですからね?」

長門さんは、ぷくぅっとほっぺを膨らませたので、手で押さえてやりました。そしたら、ぴょ……って空気が抜けました。

「まぁ、七瀬から聞いた話だと……強烈な人だと聞いたぞ」
「えぇ、強烈ですよ……」

一度あったら記憶から抜けない位にね……。だから会わせたくないんですよ。長門さんだって、強烈な人ですから。

「会ってみたいなぁ……どんな人なんだろうなぁ」

うっ、会う気満々ですね。なんとか会わせないようにしましょう……。確実に面倒な事になります。

「長門さん、話はそれくらいにして仕事しましょうよ」
「ん? あぁ、そうだな」

そう言うと長門さんは、ぐぐぅっと背伸びした後、てこてこ歩いていきます。

さて、私も仕事に戻りましょうかね。
って、あれ?長門さんは何か思い出したのか私の方を振り向きましたね。

「あ、そうそう。聞き忘れてた」
「はい? 聞き忘れてたって……何をです?」

じとぉっと見てくる長門さん、え? なんです? その視線は。ちょっと怖いです。

「七瀬からな、聞いたんだ」
「ほぉ。また七瀬さんですか」

一体何を聞いたんでしょうね。

「なんか、ノートを胡桃の母さんが持ってきたらしいな」

…………。七瀬さん、貴女……やってくれましたね。

「それ、どんなノートなんだ? 私、すっごく気になるぞっ!!」

こんな好奇心が服着て歩いてる様な人に、なんて事言ってくれやがるんですか!!

「…………」
「ん、どした胡桃。顔色が悪いぞ?」
「いっいえ、気のせいじゃないですか?」
「そうか? じゃ、そのノート……ちょこっと見せてくれないか?」

眼をキラキラ輝かせて、鼻息ふんふん言わせてる長門さん。手もぶんぶん振って、何が何でも見てやるぞって意思を感じます。

見せるわけ無いでしょうが、あんなもの!! 見せたら私、精神的に死んじゃいますよ!!

「ノートなんて……貰ってませんよ?」

ですので、自分でも引くくらいの笑顔を長門さんに見せて、そそくさとその場から去りました。

……取り合えず、七瀬さんの所へ行きましょう。仕事中だろうがなんだろうが、とっちめないといけません! それと「おぉい、胡桃ぃ」って追い掛けてくる長門さんから逃げないといけません!!

くっ……。もぉっ! なんでこうなるんですかぁぁぁぁっ!!!!

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