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わいず

山田のチョコの真実

昼休憩、こっそりと朝、下駄箱に入ってあったチョコをこっそり持ち出して教室を出る。
行くのは人気の無い場所、使われていない教室に来ている。

「ふぅ……。色々モヤモヤしたけど、何とかここまで乗りきったぞ」

もう大変だった。
こんなに疲れる日はあるのか? て位疲れた。
だがここまで耐えたんだ、残り後半も頑張ろう!

「さて、そろそろ手紙を見てみるか……」

朝は驚きのあまり嬉しいと思わなかったが、今になって強く思ってきた。
一体どんな事が書かれているんだろう? 相手はだれ? 色々想像してしまうな。

ニヤニヤしながら半分に折られた手紙を開くと……そこにはこう書かれていた。

"私の愛しの女神、恵へ"

まだ文字は書かれていたが直ぐ様手紙を閉じた。
うん、これは……あれだな。

「完全に渡す相手間違えてるな……」

しかも、愛しの女神ときたもんだ、これは完全に本命チョコだな……うん、そうとって良いだろう。

「俺、恵様じゃないんだけど?」

えと、つまりこれはあれだろうか? 渡し主、場所間違えた? いやいやいやいや、俺と恵様の靴箱の場所、相当離れてるぞ? 間違えようがないくらい離れてるんぞ、それなのに間違えるって事は……相当テンパってたって事だ。

「くっ……なんてこった。こんなハードな物を受けとるなんてぇぇ」

なんで間違えるんだよ渡し主! 好きなんだったら場所間違えんなよ!
って、ちょっと待ってくれ。

「恵様は女の子……渡した人は男って事になるよな。つまりこれは……逆チョコか!!」

なんで少女漫画に出てくるような女子みたいな事してんだ! 男ならバシッ! と直接渡せよ! まっまぁ……こうやって渡す気持ちは解らなくはないがな。

「はぁ……」

あぁぁぁぁ、複雑だぁ。
我が校の女神的存在である恵様にチョコを渡すなんてなぁ……俺だって恵様にはそう言う気持ちはある。
だけど渡さなかった、あの時は守護すべき対象だった思って恋愛感情を圧し殺していた。

仮に、仮にだ。
あの時、誰かが恵様に告白しようものなら……その男の身辺を調査されやましい事があれば……粛清していた。
当時の親衛隊の隊長である俺だったとしてもそれは適応される。

でも、俺の言葉で親衛隊は解散。
その時、密かに恵様の事を思ってた男達が行動した。
俺もすれば良かったなぁ……って、違う、今はそんな事を思ってる場合じゃない!

これ、どうにかして恵様に渡さないとダメなんじゃないか?

「相手も、色々想いながらコレを用意したんだ。きちんと渡さないと……」

でっでも。
決して誰にも見付かってはいけない、見付かると色んな誤解が生まれる。

「どっどうする? 恵様は部活動してないから放課後こっそり靴箱に入れるってのは出来ない」

……考えろ、考えるんだ。
っ!! そうだ、何も俺が渡さなくても良いんだ。
相手には悪いが、誰がこのチョコを送ったか見てやろう。
その情報はこの手紙に書いてるだろう、流石に相手も名前ぐらいは書いてるだろう。
それを見てそいつの所へ持っていって経緯を話して「自分で渡せ」と言おう。

よっよし、いける……いけるぞ。
上手い案を考え付いた、じゃぁ……悪いけど手紙を見てみよう。
ごめんな、チョコの渡し主。

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