住み込み就職 お仕事時々お遊び

わいず

私は思う、甘いものは正義だと! 3

「じゃ、各自自由に食べてくれ」
「はいっ!」

長門さんのその言葉を待ってました!
私は右手にフォーク、左手にお皿を持って、チョコやらケーキやらを乗せます。

うっはぁ……美味しそうですねぇ。
でも私、落ち着くんですよ? 幾ら目の前に大好きな物があったとしても、冷静になるんですっ。

冷静を失って、下品に食べるのはダメです! きちんと綺麗に食べる事こそが甘味への敬意に繋がるんです。
昔の偉い人は言いました、好きこそ物の上手なれと!

「えへへ、えへへへへぇ」
「胡桃さん、フォークとお皿持って笑ってるし……ちょっと怖いね」
「うん、おれもそう思ってるぜ……」

って……あら? 恵さんと止さんがこっちを見てますね。
なんか、可哀想な人を見るめで私を見ている様な気がしますが……気のせいですよね?

まぁ、そんな視線はおいといて……頂きましょう。
まずはこの四角いチョコレートからですっ!

これはこのまま手掴みでいきましょう。
お皿とフォークを置いて、いざ実食ですっ!

「いただきますっ!」

ぱくりっ……。
チョコレートを食べた瞬間、私は目を見開いてしまいました。

そして……。

「はぅあっ! うっうっ旨いぃぃっ! 口に入れた瞬間、カカオの芳醇なほろ苦さと甘さが淡さって私を楽しませてくれますっ! この感じ、例えるなら、お母さんが赤ちゃんを抱くときのほうよう! 優しくて暖かくてとても良い匂いがする幼き時の思い出が甦る味……あぁ、美味しいっ、私の中の細胞と言う細胞が喜んでますぅ」

つい長々と喋ってしまいました。
しかも熱が入っちゃいましたね、お陰で大注目されちゃいました。

「すっごいな、あんな恥ずかしい事大声で言ったぜ? おれなら恥ずかしくて言えないぜ」
「いや、止も似た様な事言った事あるから人の事言えないし」

で、ひそひそ何か言ってますね……あぁ恥ずかしい。
なんて恥ずかしさで顔を押さえてたら、長門さんがこっちに来ました。

「胡桃」
「あ、長門さん。すっすみません……あまりに美味しかったのでつい叫んじゃいました」

甘い物を食べて、それが美味しかったら叫ばずにはいられないんですよね……。

まぁ、毎回そうなるのか? と言われればそうではなくて……一応我慢は出来るんです。
でも……今食べたこのチョコレート、物凄く美味しかったんですっ、そりゃもう叫ばずにはいられないくらい美味しくて叫んじゃったんです。

「あぁいや、それは別に良い」
「え、良いんですか?」
「あぁ構わないぞ、なかなか個性的な食レポだったからな……聞いてて面白かったぞ」

びしっ! と親指を突き立てて答える長門さん。
えぇ……個性的ですか、それ誉めてるんですかね?
まっまぁ、誉めてくれたと言う事にしておきましょう。

「そっそうですか。ありがとうございます?」
「うむ」

なぁんか複雑ですねぇ、っとそんな事より早く食べないといけません!

と思ったら……長門さんは続けて話してきました。

「あぁ、そうだ言い忘れてた事があった」
「へ?」

いっ言い忘れてた事? なんでしょうか?

「……頑張ってくれよ。試食と言うのは大変だから」
「……」

なっなんでしょう。
凄く真面目な顔して、真面目な事言ってきましたね……それを聞いた瞬間、ぶるっと身体が震えました。

そうですよね、試食は大切な仕事……生半可な気持ちでやってはダメ。
長門さんはそれを私に伝えたんです……。

「はいっ! 頑張りますっ」

びしっと姿勢を正して言いました。
そしたら長門さんが「うっうん、頑張ってな」と言った後優しく微笑んでくれました。

でもなんでしょう……さっきの返事、何処か違和感がありましたね……。
まっ、気にする必要はないでしょう、という訳で食べるのを再開しましょうか。

コメント

コメントを書く

「コメディー」の人気作品

書籍化作品