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わいず

思春期青年の悩み

俺は山田、現役の高校1年で目立たない男子、元恵様親衛隊の隊長をやっていた男だ。

それな俺は、朝のHR前の一時を自分の席に座っていた。
真っ直ぐ黒板を見たり、頭を指でカリカリ掻いたり、時折ため息を吐いたりもした……。

こんなに静かにいるのは俺だけだろうな……皆は楽しく話したり、教室の中を走ったりしてる。

朝から元気だな……その元気さが羨ましいよ。

「はぁ……」
「なんだなんだ、元気ねぇじゃん」

そんな時だ、俺の友達の1人が話し掛けて来た。

「そう見えるか?」
「あぁ、そう見えるぞ。なんだ? なんかあったか?」

何か無ければ朝からこんなに悩んでいない……。
はぁ……こんな事に悩む俺は頭が可笑しいんだろうか?

ちらっと友達を見る。
心配そうに俺を見つめてる、こいつになら言っても良いかも知れない……いや、だがもし、俺の悩みを聞いて軽蔑されたらどうする?

……そんなの恐ろし過ぎる。
こいつには悪いが誤魔化そう。

「いや、大した事じゃ無いんだ」
「そっそうか? 大分思い詰めた顔してるが……」
「ははっ、大袈裟だな……俺は元気だぞ」

にっ、と友達に笑って見せる。
それを見た友達は微笑んで「そっか……」と呟く。
そして、真っ直ぐ俺を見つめてくる。

「おまえ、バレンタイン近いんだからさ……そんな辛気臭い顔してたら、チョコ貰えないぜ?」
「………」

それを笑いながら言った後、友達は去っていった。
ははは、バレンタインデーか……。

興味は有るが、今はそんな気分にはならないな。
はぁ……このもどかしい気持ちでいるのが辛い。

何処かで吐き出したいくらいだ……だが、こんな悩み、一体誰に話せば良い?

自問自答してると、近くの女子達の会話が聞こえてくる。

「ねぇねぇ、バレンタイン近いけどさ……誰かにあげんの?」
「えぇ……あたし上げなぁい」
「そんな事言って、隠れてあげるんでしょ?」
「あげないわよぉっ、上げるくらいなら食べるわ」
「あははははっ、だよねぇぇ」

……バレンタインに期待を寄せてる男子が聞いたら心が折れそうな会話だな。

そう言えば昨年の俺はチョコ貰ったんだよな……妹と母さんにだがな……。

はぁ……。
ため息をはいて、ぺたぁっと机に身体を乗せる。
そしたらだ……先程の女子の会話が脳内で再生される……。

チョコ……か。
誰かにあげるのかを聞く……もしも、もしもの話だが……あの女子同士が恋人だと改訂した上であの質問を投げ掛けたのなら……意味合いは全く違ってくるんだろうな……。

だから、あげないよ? って言われても信用できなくて、また聞いちゃうんだ。
そして、あげるより……わたしは食べたいと言った。
これはもうあれだ……所謂、チョコより私を食べてって感じの……っ!?

おっ俺は何を考えてるんだ!

椅子を、ガタッ! って鳴らしながら立ち上がる。
その突然の光景に皆の視線は俺に刺さる……ぐっ、きっきまずい。

俺はそのまま教室から出ていく。

「くそっ……」

舌打ちした後、そんな言葉を呟き拳を握る。
自分の考えた事が可笑しくてしょうがないからだ……。

なんだよ俺、頭可笑しいんじゃないか? 普通の女子達の会話なのに、なに変に改変してるんだ! 頭可笑しいんじゃないか?

自分で自分を攻めながら廊下を歩いていく。
行き先は決まってない……ただ真っ直ぐ歩いてる。

気持ちを落ち着けるためにトイレに行こう。
そして顔を洗おう……そしたらスッキリするだろう。

「誰でも良い、誰か……俺の悩みを解決してくれ」

悲しげに呟いたその言葉は……誰の耳にも届かない。

苦しい気持ちを抱えた俺の足取りは重い……悩みが解決すれば軽くなるんだろうな。

いや……それはないな。
だって、俺の悩みは絶対に解決しない。
最近、女子達が何かやってるのを見ると……百合妄想してしまう悩みなんて、誰にも聞けないからな……。

そう思いながらも俺は心の奥底で助けを求めていた。

と、こんな風に気持ちは落ちてるが、勉強とかは頑張らないとダメだよな……よしっ、教室に戻ろう。

そんな気持ちを抱えたまま、今日も俺の学校生活が始まる。

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