住み込み就職 お仕事時々お遊び

わいず

番外編 長門さんの1日 3

「違うっ、もっとこう……そのっ、違った角度で取るんだ! これはあれだぞ? 私的に最高な決めポーズだからな? 良いアングルで取ってくれ」

昼食を、とある場所で軽く取った後、直ぐに向かった場所は……私の会社系列の撮影所だ。
そこはな、結構広い場所なんだ。
色んな機材が置いていて、カメラマンとか、スポンサーか? そう言う人物が忙しそうに、歩き回ってる。

そこで私はイケてる服に着替えて撮影中だ、白い背景、上から照明を当てられ、普通とは違う撮影用のカメラで撮られるのは、何だか気分が高揚してくるのは私だけだろうか?

ん? 何の為の撮影なんだだと? ふふ、それはな……。
恋愛漫画の女性がやりそうなポーズ集と言う本の撮影だ。

いやぁ、モデルが自分と言うのは恥ずかしいが、撮影されると良い気分になる。
それに、これは私の会社の商品のおまけとして付いてくる物、つまり大事な仕事と言う事だ。

パシャッ……パシャッ……。

それなのに、今私を撮ってるカメラマンと来たら、全く乗り気じゃない。
まったく、まるっきり不満そうな顔をして……やる気はあるのかやる気は!

「あぁ、天塚さん……もういいですか? さっきから同じポーズ撮らされてて、しんどいんですよ」

と思った矢先、凄い事を言ってきた。
しんどい、だと! しかも、その理由が同じ写真ばかり撮らされてるからだと? こっこいつ、そう言う事を面と向かって堂々と言ってくるとは……。

「貴様、物事をストレートに言うタイプの男か?」
「自分、嘘とか付けないんで……つか、天塚さん、今撮ってる写真集、売れてるんですか?」

……こいつ、なんて事を聞いてくるんだ。
顔をしかめる私を真顔で見てくるこの男、非常にイライラする。

「売れてるかだと? はっはっはっ、聞かないと分からんか? 他の商品のおまけとして出すから売れてる訳ないだろうっ、察してくれ、 気にしてるんだ!」

うっ、うぅぅ……店に出しても売れもしない。
お客は、その本を少しは見て手に取るが、鼻で笑った後、元通りに戻すんだ!

男性客じゃなくて女性客でもそう言う事をしてくるんだぞ? その度に私は泣きそうになる。
営業中だから顔には出さないが……本当は場所とか関係なく泣きそうになってるんだよ、私はっ!

うっ……思い出したら涙が出てきた。
その涙を手で拭うと、カメラマンは、小馬鹿にした様な顔を見せてくる。

「ほら、やっぱり売れてないじゃないか」
「やっぱりってなんだ! その顔を止めろ!」

なんだよこいつ! 超苛めてくるぞっ、あれか? あれなのか? 少女漫画で言う所の性悪なキャラの真似事でもしてるのか? だったら今すぐ止めろっ、私のメンタルは豆腐と同じくらい脆いんだ!

「あぁ……泣きそうな所悪いんだけど、この際だからハッキリ言いますね」
「止めろっ、ハッキリ言うな! オブラートを1億ぐらい包んで言え!」

だんっ!
1歩踏み出して私は言ったんだが、カメラマンは動じる事なく、こんな事を言ってきた。

「紙の無題使いだから、発売は止めた方が良いですよ」
「うわぁぁんっ! こいつハッキリと正論を言ったぁぁっ、もうヤダこんなカメラマンっ、出てってやるっ!」

ダッ! と走り出す私。
衣装を着たままだけど関係ないっ、悪いのはあいつだ! 人の心をえぐる様な事を言った、あのカメラマンが悪いんだ!

バァァンッ!
と、撮影所の扉を開けて部屋から出る。
そしたら、少し遠くにクロがいた。

驚いた表情かおでこっちを見ている。
私は、涙ぐみ、歯をくいしばってクロ目掛けて飛び掛かった。

「クロぉぉっ、聞いてくれ! 酷いんだっ、あのカメラマン……私を苛めるんだぁぁ!」

クロは驚いたものの、きちんと私を受け止めてくれる。
あぁぁ、この筋肉は飾りじゃなかったな、この包容力は流石だ。
こうなったら、どんぶんにこの包容力を堪能して癒されるとしよう。

「うっうぅぅ、私の、写真集、売れてないの気にしてるのに……あいつは」

泣き顔を見せながら語ると、クロは、うんうんと頷いて私の話を聞いてくれる。

あぁ……クロは優しいな。
流石はボディガード、主人の護りだけでなく、主人の心を察してくれるなんて……これ程のボディガードはいないだろう。

「心中お察ししやす」
「あぁ、分かってくれるのか……」

ふふ、今回も私の気持ちを分かってくれた。
そんな事に喜んでいると、クロは続けて話してきた。

「でも、仕事を抜け出してくるのはいけやせんぜ?」
「……え?」

ん? くっクロ、なんか怒ってる? むっとした顔になってるぞ。
サングラス掛けてるから目は見えないが、こっ恐いからそんな顔をするのは止めてくれ。

「あっしと一緒に戻りやしょう」
「……は!? え、いやいやいや! この状況で戻りたくない! おっおいっ、聞いてるのか? 降ろせ離せ話を聞け! そっちに行くなっ、今は正論なんて聞きたくないんだぁぁぁっ!!」

わめき散らす私を無視し、撮影所に連れ戻されていく私……。
くっクロめ、すっ少しぐらい主人を甘やかしても良いだろう!

心の中で不満を言いまくる私、それは撮影が終わるまで止まる事を知らなかった。

……この仕事が終わったら、暫くふて腐れてやるっ!

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