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わいず

お酒のお付き合いの話し 2

突然ですが、少しお話をさせてください。
私、桜塚 胡桃は、お酒を呑むお店、つまり居酒屋の様なお店に入った事がありません。

「いやぁ、あの時は驚いたなぁ、あれからはもう大丈夫なのか?」
「平気」
「そうか、それは良かった」

で、今は何をしているかと言うと……。
大人な雰囲気漂う場所で食事をしてます、仄かに香る、お酒の香り、黒の壁紙に、シックな焦げ茶色の木の床、大きな窓から見える景色は夜の街全体が見渡せる大パノラマ、淡い蒼の光で照らされた店内は、それだけで高級感を物語っています。

と、高級とかは置いといて、ここはあれですね……。
所謂、barバーですね、だってカウンター席からお酒の入ったビンが沢山ありますもの。
私、こんな店入ったの初めてです。

席は、カウンター席、後はボックス席、そこには、スーツを着た人や、普通の服を着た人がいます。

実は、このお店にいる人達は全員、長門さんの会社の社員さんみたいです。
さっき、話してくれました。
実はこれ、長門さんの会社のサービスの一部だそうです、昼間はレストランになって一般客が利用して、夜は会社の社員さんが利用するそうです。

凄いですね、社員さんにここまでサービスするなんて……。
こんな事をする社員さんは中々いないんじゃないですか?

因みに、私達が座ってるのはカウンター席です。
左から、長門さん、私、七瀬さんの順で座ってます。

あぁ、言い忘れたので言っちゃいますと、このbarバー長門さんのビル内部のお店です、まさか、barバーまでやってたなんて、思いもしませんでした。

だけど、このお店の従業員になって暫くした時、悟った事を思い出しました。
長門さんが経営するビルでは、常識にとらわれてはいけないと……。

VIPビップな奥様が、わざわざ、エステをしに来るくらいです、barバーがあっても驚きません。
むしろ、あるだろう、と思ってました。

で、何故私達はこの店に来たのかと言うと、息抜きです、長門さんの突然の発案でする事になりました。

「そうか、それは良かった」

と、先程から長門さんと七瀬さんが会話をする中、私は静かにお水を飲んでます。

因みに今の服装は、"しめむら"で買った、もこもこした白い冬服です、格好良い英語のロゴが描いてる奴です、結構お気に入りの奴ですよ? でも、この店だと浮いた感じになってて嫌ですね、今度服を買いに行きましょう。

七瀬さんは、どこのかは分かりませんが、お洒落な服装をしています。
長門さんは、スーツですね、その理由は、そう言う気分だからだそうです。

あっ、今は恵さんはいません。
理由は明日、テストがあるみたいで予習と復習をしたいみたいです。
恵さんが入れば、来る場所が遊戯室に変わったみたいですよ。

「……胡桃?」
「はい?」

わわっ、話し掛けてきましたね。
驚いて、コップを持っている手が震えて水を溢しちゃいました。

「気分展開をかねて、私のビルにはこんな所があるんだぞ! と自慢の為に連れてきたと言うのに、偉く静かだな」
「じっ自慢ですか、そう言う事、ハッキリ言っちゃうんですね」

そして、そう言う事誇らしげに言うんですね。
むふぅぅって鼻息が出てますよ? あと、今更ですけど……スーツ姿素敵ですね、素敵な女社長の風格が出ですよ、普段の"あれ"さえ出さなければですけど。

「うむっ、私はそう言う事を、たまにハッキリ言う系女子だぞ!」
「そうですか、そう言うの控えた方が良いですよ?」
「善処しよう」

あはは、その言い方だと、直らないでしょうね。
まぁ嫌な感じなんてしませんから、良いんですけどね。

「と、それは置いといてだ、折角気分転換に来ているんだ、もっと騒げ」
「いっいえいえ、こんな雰囲気の良いお店で騒げませんよ」
「ふっ、胡桃は現在女子らしからぬ事を言うな、って、これを言ったら私は何女子なんだって話になるか、わっはっはっ」

なっなんか、自分でボケて、自分で突っ込んでますよ? そう言えば長門さん、ここに来てからお酒呑んでますね、と言うか、今も呑んでます。

氷と綺麗な緑色のお酒の入ったグラスをカラカラ鳴らしながら、チビチビ呑んでます。

まぁ、入ってそこそこ時間が経ってますからね、長門さんの顔は仄かに紅くて陽気な顔してますし、身体を微かに揺らしてますしね、酔ったんでしょう。
と言うか、長門さんって、酔いが言葉に出なくて身体に出るタイプの人なんですね。
まぁ、言ってる事は普段と比べて1割り位変ですけどね。

「まぁあれだ、私が何系女子とかは置いといてだな、現在女子と言う物は、高級感溢れる店でもハッチャケる物だぞ」

そう言って絡んでくる長門さん、がしっと肩を組まれました、うっ……お酒の匂い、私、お店の雰囲気に慣れずにキョロキョロしてましたからね。

どうやら、長門さんは、相当お酒を呑んでるみたいです。
助けを求める為に、ちらっと後ろを振り返って七瀬さんを見ます。

そしたら、私の視線に気付いたのか、じっと私を見つめて、微笑んで来ました。

いや、微笑んで無いで助けて下さいよ!

「もうっ、そんな迷惑な事やりませんよ!」
「はっはっはっ、胡桃はまじめなんだなぁ」

七瀬さん、目が、とろーんってしてますね。
もう、お酒を呑ませない方が良いかも知れません。

「なぁ胡桃」
「なんですか?」

私の肩に手を乗せたまま、ヘラヘラ笑いながら言う長門さん。
私は、和やかな気持ちで話を聞く事にしました。

「さっきから水ばかり呑んでるな」
「あっ、はい……私、お酒弱いんです」
「おぉっ、その台詞、恋愛漫画で見た事あるな、それを言った女子は男子からの好感が高いんだぞ、胡桃は男心を押さえてるなぁ」
「え、あっ、はぁ……そうですか」

なんでしょう、この何とも言えない感じは。
酔っぱらいの相手って、なんか、面白いですね。

でも、これ……長引きそうで面倒でもありますね、しかし、これは私にとって初の大人の付き合い、こう言う事を経験するのも大切ですよね。
なので、ここは聞き手に徹して我慢しましょうか。

と言う訳で、私は長門さんの話を、相づちをしながら聞きます。
七瀬さんはずっと黙ってました、少しは会話に入ってきて欲しい、とは思いましたが、気にせずに長門さんの話を聞きます。

……大人の付き合いって大変ですね。

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