住み込み就職 お仕事時々お遊び

わいず

お酒のお付き合いの話し

七瀬さんが倒れて数日が経ち、早いもので1月末、明日から新しい月が始まります。

あれから七瀬さんは、元気に働いています、倒れた棚も何事も無かったかの様に綺麗になってます。
なので、いつも通り平常運転 (他の店から見たら異常な状況)で経営をしています。

「ありがとうございました」

私は、ぺこりと頭を下げます、今のお客様、疲れた様子でしたね。
服装はスーツ姿、恐らくサラリーマン、お仕事お疲れ様です。

接客が終わって、一息ついて、店内を見渡します。
今一緒に働いてるのは、長門さんと、七瀬さんと、恵さん。

「客がこないな」
「そうですね」

ぽつりと呟きました、そうです、今お客様の入りは少ないです、まぁ理由は分かってます。

それは店長の男性客に対するノリが面倒臭いから、ではなく……。

「まぁ、もう直ぐ閉店時間だしね、仕方ないんじゃない?」

そう、恵さんの言う通り、もう直ぐお店を閉める時間だからです。
現在時間は午後9時、このお店はコンビニなのにも関わらず、こんな時間に閉めちゃいます。
店を開けるのは午前7時ですし、少し利用しにくいお店? 見たいになってます。

「疲れた」

ふぅ、とため息をはく七瀬さん。
そのまま、ぐぐっと背伸びします。

「よしっ、閉店時間になったから、店を閉めて、掃除して、のんびりするぞ!」
「はい」
「はぁい」
「ん」

長門さんの声に、各々返事します、それから私達は閉店作業をしていくのでした。


「うぅぅ、終わったぁぁぁっ」
「うわっ、いきなり背伸びしないで下さいよ! ここ狭いんですから!」

はい、行きなり場所は変わりましてエレベーターです。
あれから、無事、お店の閉店作業を済まし、着替えて、エレベーターに乗ってます。

そこで、勢い良く伸びをする長門さんに注意する私、こんな密室で、オーバーアクションしちゃいけません!

「はっはっはっ、悪い悪い、少し羽目を外しすぎてしまった」
「もぅ、気を付けてくださいよ?」

私が注意すると、長門さんは苦笑しながら頭をかきます。
……本当に悪いと思ってます?

「ねぇ、ちょっと」

ん? 何でしょう、恵さんに呼ばれましたね。
なので、その方向を見てみると……。

「何かしら?」
「何かしら? じゃないわよ、そんなに狭くもない空間で、必要以上に肌を密着させるんじゃないわよ!」
「ふふ、照れてるの?」
「照れてないしっ、どんな考え方したら、そう思うのよ、ばか!」

あっ、私が呼ばれた訳じゃないですね。
どうやら、七瀬さんを怒ってるみたいです。

確かに、恵さんの言うように、七瀬さんは恵さんに密着し過ぎですね……。
なっなんか、べたぁって感じでくっついてます。
あっあれは、注意します、私だってしちゃいます。

「あら、顔を真っ赤にしちゃって、可愛いわ」
「ほっぺた触ってくんな! 離れろ、近づくなっ、あたしの近くで息するな!」

べちんっべちんっ!
恵さんは、七瀬さんを激しく叩きます。
でも、七瀬さんは微笑むだけで、効果がありません、ダメですよ、恵さん。
人を退かせるパンチを打つ場合は、もっと腰を低くして、手首にスナップを効かせ、相手の腹部に目掛け、斜め上に放つのが基本です!

「分かってる、今の恵はツンデレで言う所のツンだって事を……さぁ、早くデレを見せて?」
「見せるかっ、そのニヤけ面、あたしに見せんな!」

恵さんのパンチが激しくなります。
あぁ、だからそんなんじゃダメですって、もっとこう、ヒグマを倒すイメージでやらないとダメです。

とか、考えていると、私の前に長門さんが立ちます。

「こらっ、エレベーターで騒いじゃダメだぞ」

そして、ビシッと2人を指差して言い放ちます。
おっおぉ、長門さんって普通にダメな事はダメって言える人なんですね。

普段、あんなだから、言えない人だと思ってました。

「うっ、しっ仕方ないんじゃん、七瀬がしつこいんだもん」

と、失礼な事を考えてたら、恵さんが、唇を尖らせて伏せ目がちにボソボソ言います。

「ふむ、それはそうだが、暴れちゃダメだ、七瀬もだぞ! しつこい触れ合いは相手に失礼だ、下手したら出会いのフラグが壊れてしまうぞ」
「うっ、はっはい、ごめんなさい……」
「っ、きっ気を付けるわ……」

おぉ凄い、長門さんが説教してる。
どうやら長門さんは、以外としっかりしてるんですね、とこのやり取りで分かりました。

少し見直したかもです。
と、そんな事を思ってますと、エレベーターは止まり、チンッと言って扉が開きます。

「よしっ、説教は終わりだ、だからそんな顔をするのは止めろ」

長門さんはエレベーターを出て、恵さんと七瀬さんを見て笑いかけます。
そしたら、2人はきょとんっとなってお互いの顔を見合せます。

「反省の言葉は聞いた、後は遊んだりして気分展開すると良いぞ」

……。
長門さん、あなたは凄い人ですね。
ダメな事はダメって言って、周りの空気を大事にして、笑いかけてくれる。
やっぱり、社長職についてる人ですね、経歴も心も凄い方です。

「と、言うわけで……」

ん、なんか長門さんが、ニヤッて笑いましたね。
不思議に思いながら、私はエレベーターを出ます。
そしたら、恵さんも、七瀬さんも出ます。

「今から遊ぼう! 今日で1月は終わりだし、今月は頑張った気がする、そして私は今から遊びたい気分だ! だから付き合ってくれ、因みにこれは強制だぞ、拒否権は無いからなっ」

長門さんは白い歯を見せて、Vサインを見せつけます。
私達は長門さんの言葉に声を失います。

……強制ですか、拒否権なしですか、そうですか。
ふっふふ、長門さんは本当に自分本意な方ですねぇ。

先程の尊敬の気持ちを返してください! 少しは周り人の気持ちを汲み取ってくださいよぉぉぉッ!

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