一兵士では終わらない異世界ライフ
エキドナ3
–––☆–––
ソニアの件を一旦保留にし、エキドナは再びどうしようかと思考を巡らせる。フォセリオ達の後を付けてもいいのだけれど……エキドナ一人で帰った方が早のよね。
帰りましょうか。
そう結論付け、エキドナは一人……ニョロ〜っと屋敷まで帰る。途中の帰路でフォセリオ達に会わなかったのは……言わなくても分かるだろう。
彼女達には同情してしまう。
屋敷に着いたエキドナは、まずは少し身体を濡れた布で拭いておこうと思い、屋敷裏の井戸へ向かう。
そういえば、ご主人様が……「どうしてタオルと呼ばないんだ……」とボヤいていらっしゃったわね。どういう意味かしら……まあ、いいわ。
少し汗を掻いた肌をエキドナは拭いていく。と、視線を感じたのでチラリと目を向けると大柄な身体を硬直させ、立ったまま微動だにしないワードンマの姿が目に入る。
「なにか?」
エキドナが声を掛けると、ワードンマがビクッと肩を揺らしてエキドナに魅入る。あぁ……そういうことね。
どうやら、身体を拭くために肌着以外に身に付けていないエキドナの姿を見て興奮しているらしい……くっ……ワードンマって身体が大きいから傍から見たら強姦されてもおかしくない状況ね!なんだかエキドナも興奮してきたわ!
「あわわわ」
ワードンマが口をパクパクさせながら手を伸ばしてきたので、エキドナはスッと目を細めて触手でそれを叩いた。
「それはダメよ」
呆れて言うと、ワードンマが叩かれた手を撫でながら言った。
「わ、分かっとるわい……ただ、もしかしたらちょびっとだけ触らせてもらえるかもーと」
「そんなわけないじゃない。エキドナがいくらこの状況で興奮しているとしても、エキドナの所有権は今、ご主人様のものだもの。ご主人様に許可をとりなさぁい」
「ぬおぉぉぉお!なにかとあやつの周りには美しい女が集まるのぉ……羨ましいわい」
「まあ、確かにそうねー。とはいえ、その中でご主人様をお慕いしていらっしゃるのは……今のところ二人だけじゃないかしら?」
ソニアとクーロンね。
フォセリオは多分、そういうことには鈍感だろう。今のところ、男と女というよりも友情面の方がフォセリオは強いわね。あの子、友達少ないだろうし……その上のステージに進むには早すぎるわ。
「うぅむ……ぬしはちなみにどうなんじゃ?」
「エキドナ?エキドナは……」
エキドナからしたら観察対象とかそんな感じ……特に他意はない。
「エキドナは、エキドナの知識欲を満たしてくれる人なら誰でも好きよ」
観察対象という意味でだけれど……。
「ほう!ならば、ワシと夜の」
「黙りなさい」
–––☆–––
屋敷へ戻り、ご主人様の様子を見に行く途中……エキドナはアルメイサと鉢合わせた。それだけで、エキドナの身体をビクッという快感が突き抜けた。
「あらぁ……エキドナちゃんじゃない?おかえりぃ〜」
「は、はい……ただいま戻りました!お姉様!」
エキドナはアルメイサ……お姉様に逆らえない。魔術だけならエキドナはお姉様には負けない。お姉様は熟練級くらいの魔術しか使えないからだ。
もちろん、それだけでも十分な実力ではあるが……達人のエキドナからすればヒヨッコだ。
では、どうしてエキドナがお姉様に逆らえないか……それは実力云々ではなく、相性の問題だ。人格的な……。
「うふふふふ……今日もゆっくり可愛がってあげたいのだれどぉー、私これから出かけなくちゃいけないのよねぇー」
「ふぇ……?お姉様、どちらへ向かわれるのですかぁ!?いやですぅ!お姉様いかないで!エキドナを……エキドナを虐めてくださいぃ!!」
エキドナは自分でも御すことのできないほどに、お姉様から離れない。
「もう、可愛いこと言っちゃってぇ……帰ったら沢山虐めてあげるわよ」
「お姉様ぁ……えへへ」
エキドナはお姉様から優しく頭を撫でられ、触手をくねらせながら笑う。とても自然に笑顔になれる。あぁ……今はこんなに優しいお姉様も虐めてくれる時は、もうすんごいのだ。
「えへ、えへへ」
ナデナデ……。
ニョロニョロ……。
「あ、そうだわぁ……大事な物を部屋に忘れてきちゃったわぁー」
「大事な……物ですか?エキドナが取りに行って参りますぅ!どんな物でございますかぁ?」
「丸めた羊皮紙なのだけれどぉ……昨日、この私に喧嘩売ってきた奴がいたからぁ、社会的に死ぬような……それはもうすんごい証拠を見つけたからちょっと脅しに……じゃなかった、謝罪させようかとねぇ」
「それ、どこの誰でございますか?宜しければ、この不肖エキドナがお相手を務めますが」
「いいわよぉー。私が相手したいしぃ……」
「そ、そうでよね!申し訳ございません、お姉様。エキドナがお姉様の獲物を横取りしようと……」
「いいのよ。エキドナちゃんは、私の為を思って言ってくれたんでしょう?それで十分よぉー?」
「お姉様……えへへ。お姉様に褒められたぁ」
あぁ……なんて幸せ。
ちっ、それにしてもどこのどいつよ……お姉様に喧嘩売った不届きものは。お陰で、お姉様に虐められる時間が後になっちゃったじゃない!
まあ、いいわ……。
「それじゃあ、出るわね」
「はいぃ!!いってらっしゃいませ!」
エキドナはお姉様に羊皮紙を渡して、そう言った。
–––☆–––
ご主人様の部屋へ向かう途中、今度はユーリに出会った。黒猫っぽいが、猫ではない……バイオキャットという魔物だ。今では、この家でペットとして扱われている。
そんなユーリは、窓の縁の上で昼寝をしていたようで……エキドナに気付くと目を覚まして身体を伸ばし、廊下に降りた。
「ニャ」
「お目覚め?随分と気持ちよさそうだったわね?」
「ニャー」
エキドナは【思念感知】を使い、ユーリの思考を翻訳する。
『昼寝をサイコー』
「そう。普通の猫もそんな感じなのかしら……」
『猫による。ニャーはニャー』
「まあ、確かにそうね……人それぞれって言うわよね。この場合は猫それぞれ……いえ、魔物それぞれかしら?」
『どうでもいい』
「あら、そう。エキドナとしては、ユーリのことも観察対象だから、色々と知りたいわ」
『勝手にして。ニャーは自由にする』
「ええ。その方が観察対象として面白いわ」
そんな会話をしていると、ユラ〜っとこの屋敷の管理をしてくれているシェーレちゃんがフワフワと宙を漂いながらやってきた。
「あ、お……かえり……なさい。え、エキドナ……さん」
「ただいま、シェーレちゃん」
『シェーレ。抱っこ』
「うん……ユーリさん、抱っこ……するね?」
『ニャー』
シェーレはユーリを抱っこする。ユーリはなんだか気持ちよさそうだ。
一応、エキドナもシェーレちゃんも……そしてユーリも大きな括りでは同じような存在だ。そのためか、妙に気が合う。同じもの同士、共感できることがあるのだ。
「シェーレちゃんは、今何を?」
「わ、私……は、今洗濯……物を干して」
「そう……いつもありがとう」
「い、いえ……」
『シェーレいい子』
「そ、そんな……こと、は……」
『いい子』
「そ、そう……ですか?え、へへ」
何かしら……今さっきの自分と重なる。気の所為ね。
照れたシェーレちゃんは可愛いわね。ユーリも顔が裂けなければ、ただの猫で可愛い。
「あ、そういえばユーリ……訊いておきたいのだけれど」
『?』
「あなたって人の姿になったりしないわよね?」
『?』
「いえ、前にご主人様が言っていたのよね。あれは人になれるタイプの猫だって。いえ、魔物?かしら……とにかく、そんなことを言っていたのだけれど……」
『よくわからない』
「そうよね。そんなことな……」
ない……よはと言おうとしてエキドナは口を閉じた。ないことはないような気がする……。飽くまでも、エキドナの仮説ではあるが、もしもユーリの魔力保有領域が何らかの原因で肥大化きた場合、もしすると魔人化するのではないだろうか?魔人化すれば……人の姿に近い状態に……と、エキドナは今のユーリを見て、まあ無いかとそんな思考を蹴り飛ばした。
「それじゃあ、いくわ」
「は……い」
『ん』
【思念感知】を解いて、エキドナは今度こそご主人様の部屋へと向かった。
ソニアの件を一旦保留にし、エキドナは再びどうしようかと思考を巡らせる。フォセリオ達の後を付けてもいいのだけれど……エキドナ一人で帰った方が早のよね。
帰りましょうか。
そう結論付け、エキドナは一人……ニョロ〜っと屋敷まで帰る。途中の帰路でフォセリオ達に会わなかったのは……言わなくても分かるだろう。
彼女達には同情してしまう。
屋敷に着いたエキドナは、まずは少し身体を濡れた布で拭いておこうと思い、屋敷裏の井戸へ向かう。
そういえば、ご主人様が……「どうしてタオルと呼ばないんだ……」とボヤいていらっしゃったわね。どういう意味かしら……まあ、いいわ。
少し汗を掻いた肌をエキドナは拭いていく。と、視線を感じたのでチラリと目を向けると大柄な身体を硬直させ、立ったまま微動だにしないワードンマの姿が目に入る。
「なにか?」
エキドナが声を掛けると、ワードンマがビクッと肩を揺らしてエキドナに魅入る。あぁ……そういうことね。
どうやら、身体を拭くために肌着以外に身に付けていないエキドナの姿を見て興奮しているらしい……くっ……ワードンマって身体が大きいから傍から見たら強姦されてもおかしくない状況ね!なんだかエキドナも興奮してきたわ!
「あわわわ」
ワードンマが口をパクパクさせながら手を伸ばしてきたので、エキドナはスッと目を細めて触手でそれを叩いた。
「それはダメよ」
呆れて言うと、ワードンマが叩かれた手を撫でながら言った。
「わ、分かっとるわい……ただ、もしかしたらちょびっとだけ触らせてもらえるかもーと」
「そんなわけないじゃない。エキドナがいくらこの状況で興奮しているとしても、エキドナの所有権は今、ご主人様のものだもの。ご主人様に許可をとりなさぁい」
「ぬおぉぉぉお!なにかとあやつの周りには美しい女が集まるのぉ……羨ましいわい」
「まあ、確かにそうねー。とはいえ、その中でご主人様をお慕いしていらっしゃるのは……今のところ二人だけじゃないかしら?」
ソニアとクーロンね。
フォセリオは多分、そういうことには鈍感だろう。今のところ、男と女というよりも友情面の方がフォセリオは強いわね。あの子、友達少ないだろうし……その上のステージに進むには早すぎるわ。
「うぅむ……ぬしはちなみにどうなんじゃ?」
「エキドナ?エキドナは……」
エキドナからしたら観察対象とかそんな感じ……特に他意はない。
「エキドナは、エキドナの知識欲を満たしてくれる人なら誰でも好きよ」
観察対象という意味でだけれど……。
「ほう!ならば、ワシと夜の」
「黙りなさい」
–––☆–––
屋敷へ戻り、ご主人様の様子を見に行く途中……エキドナはアルメイサと鉢合わせた。それだけで、エキドナの身体をビクッという快感が突き抜けた。
「あらぁ……エキドナちゃんじゃない?おかえりぃ〜」
「は、はい……ただいま戻りました!お姉様!」
エキドナはアルメイサ……お姉様に逆らえない。魔術だけならエキドナはお姉様には負けない。お姉様は熟練級くらいの魔術しか使えないからだ。
もちろん、それだけでも十分な実力ではあるが……達人のエキドナからすればヒヨッコだ。
では、どうしてエキドナがお姉様に逆らえないか……それは実力云々ではなく、相性の問題だ。人格的な……。
「うふふふふ……今日もゆっくり可愛がってあげたいのだれどぉー、私これから出かけなくちゃいけないのよねぇー」
「ふぇ……?お姉様、どちらへ向かわれるのですかぁ!?いやですぅ!お姉様いかないで!エキドナを……エキドナを虐めてくださいぃ!!」
エキドナは自分でも御すことのできないほどに、お姉様から離れない。
「もう、可愛いこと言っちゃってぇ……帰ったら沢山虐めてあげるわよ」
「お姉様ぁ……えへへ」
エキドナはお姉様から優しく頭を撫でられ、触手をくねらせながら笑う。とても自然に笑顔になれる。あぁ……今はこんなに優しいお姉様も虐めてくれる時は、もうすんごいのだ。
「えへ、えへへ」
ナデナデ……。
ニョロニョロ……。
「あ、そうだわぁ……大事な物を部屋に忘れてきちゃったわぁー」
「大事な……物ですか?エキドナが取りに行って参りますぅ!どんな物でございますかぁ?」
「丸めた羊皮紙なのだけれどぉ……昨日、この私に喧嘩売ってきた奴がいたからぁ、社会的に死ぬような……それはもうすんごい証拠を見つけたからちょっと脅しに……じゃなかった、謝罪させようかとねぇ」
「それ、どこの誰でございますか?宜しければ、この不肖エキドナがお相手を務めますが」
「いいわよぉー。私が相手したいしぃ……」
「そ、そうでよね!申し訳ございません、お姉様。エキドナがお姉様の獲物を横取りしようと……」
「いいのよ。エキドナちゃんは、私の為を思って言ってくれたんでしょう?それで十分よぉー?」
「お姉様……えへへ。お姉様に褒められたぁ」
あぁ……なんて幸せ。
ちっ、それにしてもどこのどいつよ……お姉様に喧嘩売った不届きものは。お陰で、お姉様に虐められる時間が後になっちゃったじゃない!
まあ、いいわ……。
「それじゃあ、出るわね」
「はいぃ!!いってらっしゃいませ!」
エキドナはお姉様に羊皮紙を渡して、そう言った。
–––☆–––
ご主人様の部屋へ向かう途中、今度はユーリに出会った。黒猫っぽいが、猫ではない……バイオキャットという魔物だ。今では、この家でペットとして扱われている。
そんなユーリは、窓の縁の上で昼寝をしていたようで……エキドナに気付くと目を覚まして身体を伸ばし、廊下に降りた。
「ニャ」
「お目覚め?随分と気持ちよさそうだったわね?」
「ニャー」
エキドナは【思念感知】を使い、ユーリの思考を翻訳する。
『昼寝をサイコー』
「そう。普通の猫もそんな感じなのかしら……」
『猫による。ニャーはニャー』
「まあ、確かにそうね……人それぞれって言うわよね。この場合は猫それぞれ……いえ、魔物それぞれかしら?」
『どうでもいい』
「あら、そう。エキドナとしては、ユーリのことも観察対象だから、色々と知りたいわ」
『勝手にして。ニャーは自由にする』
「ええ。その方が観察対象として面白いわ」
そんな会話をしていると、ユラ〜っとこの屋敷の管理をしてくれているシェーレちゃんがフワフワと宙を漂いながらやってきた。
「あ、お……かえり……なさい。え、エキドナ……さん」
「ただいま、シェーレちゃん」
『シェーレ。抱っこ』
「うん……ユーリさん、抱っこ……するね?」
『ニャー』
シェーレはユーリを抱っこする。ユーリはなんだか気持ちよさそうだ。
一応、エキドナもシェーレちゃんも……そしてユーリも大きな括りでは同じような存在だ。そのためか、妙に気が合う。同じもの同士、共感できることがあるのだ。
「シェーレちゃんは、今何を?」
「わ、私……は、今洗濯……物を干して」
「そう……いつもありがとう」
「い、いえ……」
『シェーレいい子』
「そ、そんな……こと、は……」
『いい子』
「そ、そう……ですか?え、へへ」
何かしら……今さっきの自分と重なる。気の所為ね。
照れたシェーレちゃんは可愛いわね。ユーリも顔が裂けなければ、ただの猫で可愛い。
「あ、そういえばユーリ……訊いておきたいのだけれど」
『?』
「あなたって人の姿になったりしないわよね?」
『?』
「いえ、前にご主人様が言っていたのよね。あれは人になれるタイプの猫だって。いえ、魔物?かしら……とにかく、そんなことを言っていたのだけれど……」
『よくわからない』
「そうよね。そんなことな……」
ない……よはと言おうとしてエキドナは口を閉じた。ないことはないような気がする……。飽くまでも、エキドナの仮説ではあるが、もしもユーリの魔力保有領域が何らかの原因で肥大化きた場合、もしすると魔人化するのではないだろうか?魔人化すれば……人の姿に近い状態に……と、エキドナは今のユーリを見て、まあ無いかとそんな思考を蹴り飛ばした。
「それじゃあ、いくわ」
「は……い」
『ん』
【思念感知】を解いて、エキドナは今度こそご主人様の部屋へと向かった。
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