一兵士では終わらない異世界ライフ
学舎の祭
–––☆–––
こうして幾日かが経過し、学舎の祭の日がやってきた。学舎には色々な屋台が並び、様々な催しがなされていた。
「ちょっとアレ見てよ!やばくない!?」
お前は渋谷のJKか、と内心ツッコミを入れたのはノーラだ。ノーラは初めての祭でかなり興奮している様子だ。その横で、はしゃぐ友人を苦笑交じりに微笑みながら歩いているエリリーがいた。
俺はそんな二人の後ろを数歩離れた位置で歩いている。
「なんか新鮮な感じ」
というのは俺の隣を後ろで手を組んで歩いているソニア姉からだった。学舎の制服が映える綺麗な金髪が、微風でなびくのを、俺は横目で眺めながら訊いた。
「なにが?」
ソニア姉は片手で靡く髪を抑えながら、なんと言ったらいいのか迷っているのか微妙な面持ちで答えた。
「んーグレイがいるってことが……かな。今までは友達と回ってたし。それに……あたし、九歳頃までグレイのこと嫌いだったから。そんなグレイと一緒にお祭りを回ってるなんて、新鮮だなーって思ったの」
今では懐かしいですね。三年前のことですもんね。私としては、もう姉弟喧嘩なんてしたかないですわね……。俺は自嘲気味に笑い、それからソニア姉の前に踊り出て、佇まいを正した。
「じゃあ、せっかくのお祭りだし……楽しみませんか?」
「ん……そうだね」
俺が紳士っぽく手を差し出してみると、ソニア姉はまるでお嬢様のような仕草で、俺の手の上にそっとその小さな手を置いた。
あぁ……小さくて柔らかい……でも、興奮はしない。近親相姦は嫌いじゃないけど……多分、本当の姉弟なんてこんなもんなんだろうな。
俺とソニア姉はクスリと笑い合うと、どこの屋台で買ったのか綿飴を、ノーラが三本ほど持って俺たちのところに戻って来た。後ろでは一本の綿飴を持って、それを食べながら歩いてくるエリリーがいる。
「はい、グレイとソニア先輩に」
ノーラはそう言って綿飴を二本差し出してきた。うむ、ありがたく頂こう。
ちなみに、この綿飴はこっちの世界じゃあ、カミュルスパイダーの糸という。つまりは蜘蛛の糸です。うげぇ……でも甘い。僕は甘党だから、どんどんカモンだぜ?
「あ!」
四人で屋台などを見ながら歩いていたところ……唐突に、とある屋台を指差して、エリリーが叫んだ。
「どうしたんエリリ〜」
「ほら、見てよノーラ」
「ん?射的屋さん?」
エリリーが指差す方向には射的屋がある。前世ではコルクを飛ばす鉄砲だったが、こっちの射的は、もちろん弓だ。大体二十メートルくらい離れたところにある景品を射抜けば景品ゲット……ふむ。
「ちょっと待ってて」
そう言うとノーラとエリリーが期待の眼差しで俺を見つめてきた。ふっ……やらんよ?
ソニア姉は首を傾げていたが、俺が射的をやるというのに気付いて、「頑張って」と一声応援してくれた。よぉしっ!
俺は射的屋のおじさんに銅貨を一枚渡す。すると弓と先っぽが柔らかい矢を二本貰った。チャンスは二回ということだ。
まずは、第一射目だ。俺は集中するために一旦目を閉じる。そして開けたときには視点が切り替わっていた。三人称視点……戦闘モードと呼んでいる状態だ。この状態の俺は、まるでゲームコントローラーで自分の身体を動かしているかのように身体が動く。未だに、どうしてこんなことが出来るのかは不明だ。
まあ、今はどうでもいいが……さて何を狙おうか。ふむ……ん?あの左隅のはソニア姉が好きそうな色のアクセサリーだな。ソニア姉が好きな色は黒色だ。昔はピンクとか、女の子らしい色だったが……いつからか黒色の物を好むようになったのだ。髪留めも黒色が多いし……。よし、そうと決まればだな。
俺は弓を引いて、特に溜めもせず、ヒュンッと矢を放った。少しだけ山形に景品に向かって飛んでいく矢は黒のブレスレットにジャストヒットした。
「おっ、おめでとさん」
と、店主はいって俺に景品であるブレスレットを渡した。
「えーブレスレット?」
「うわーヌイグルミを期待してたのにー」
女性陣……主にノーラとエリリーの非難が俺に集中した。欲しけりゃあ自分でやれよな……。
「いや〜いい腕してるなぁ、坊主」
「た、偶々ですよ……」
苦笑いしながらも、店主のおっちゃんから黒のブレスレットを受け取った。
肌触りは滑らかで、何が使われているのか気になったが、とりあえずソニア姉にプレゼントしてしまおう。俺は黒のブレスレットをソニア姉に手渡した。
「え……いいの?」
「うん。ソニア姉、黒色好きでしょ?」
「でも……」
「もらって。僕は使わないし」
ソニア姉は遠慮がちだったが、最後には俺の好意を受け取ってくれた。
「ありがとうね」
「うん」
すると背後に邪悪なオーラがっ!って、ノーラとエリリーかよ……仕方ない。俺は最後に一本の矢でヌイグルミを射抜いた。
店主には、「すげえ腕だなー。子供にしか見えねぇぞ?」と言われた。子供だよ……中身はおっさんだけどな。実質、ガキには変わらない精神年齢なんだけども……。
ヌイグルミをエリリーとノーラにあげると、嬉しそうに二人同時に受け取り……そして気付いたらヌイグルミの取り合いをしていた。
あぁ……ヌイグルミの身体がぁ……。
最終的にはソニア姉が、「喧嘩しちゃめっ」と叱ったので二人は不貞腐れながらも、ソニア姉には逆らえないので大人しく従った。子供だな……子供なのか。そうだった。
そして、また暫くあちこち回って歩いていると道の奥の方からなにやら黄色い声が聞こえ始めた。気になって俺たちも見てみると、道を優雅に歩くアリステリア様がいた。その横にはイケメン従者のアイクがいた。ちなみにアイク・バルトドスが彼のフルネームだ。気配から察するに近くにはソーマさんもいるようだ。ノーラもソーマさんに気が付いているようで、何故かげっそりと顔を歪ませていた。今のところは俺に見えないが、【透明化】でノーラにだけ、見えるようにしているのかもしれない。
道を歩くアリステリア様を呆然と四人で見ていると、その視線に気付いてアリステリア様がチラリとこっちを見るなり立ち止まって、優雅にお辞儀した。
「こんにちは、みなさん」
その美しい仕草に思わず俺たちは見惚れた。周りの女子生徒たちは、「きゃーっ」と叫んだり、男子生徒に関しては言葉も出ないようだ。
アリステリア様が顔を上げると、今度はアイクがお辞儀した。
「こんにちは」
これまた美しい仕草。だが、俺にそっちの気はない。しかし、男子生徒たちですら、これまた言葉を失うほど彼の仕草は完璧だ。もしかすると、四つん這いの生き物が湧いているのかもしれない。殺虫剤を散布しようかしら……。
「こんにちは」
とりあえず、一番最初に回復した俺はアリステリア様とアイクに挨拶を返しておく。それから直ぐに、ソニア姉がぺこりとお辞儀した。ノーラとエリリーはまだかかりそうだな。
「こっちの二人はまだ復活しなさそうなので、お許しください」
一応、断るとアリステリア様は微笑んでから、「構いませんわ」と許してくれた。
「みなさん。学舎の祭は楽しんでいただいていますか?今回はわたくし達、生徒会の催しもあるのでそちらの方もご参加していただけると嬉しいですわ」
へぇーどんなんだろう。
「えぇ、では是非。いつからで?」
「闘技大会の後ですわ」
「わかりました。場所はどこへいけば?」
「学舎の庭を予定していますわ」
「はい。では後ほどいきますね」
それから俺はアリステリア様との会話を暫く楽しんだ。
うん、学舎の祭って楽しいなぁ!
こうして幾日かが経過し、学舎の祭の日がやってきた。学舎には色々な屋台が並び、様々な催しがなされていた。
「ちょっとアレ見てよ!やばくない!?」
お前は渋谷のJKか、と内心ツッコミを入れたのはノーラだ。ノーラは初めての祭でかなり興奮している様子だ。その横で、はしゃぐ友人を苦笑交じりに微笑みながら歩いているエリリーがいた。
俺はそんな二人の後ろを数歩離れた位置で歩いている。
「なんか新鮮な感じ」
というのは俺の隣を後ろで手を組んで歩いているソニア姉からだった。学舎の制服が映える綺麗な金髪が、微風でなびくのを、俺は横目で眺めながら訊いた。
「なにが?」
ソニア姉は片手で靡く髪を抑えながら、なんと言ったらいいのか迷っているのか微妙な面持ちで答えた。
「んーグレイがいるってことが……かな。今までは友達と回ってたし。それに……あたし、九歳頃までグレイのこと嫌いだったから。そんなグレイと一緒にお祭りを回ってるなんて、新鮮だなーって思ったの」
今では懐かしいですね。三年前のことですもんね。私としては、もう姉弟喧嘩なんてしたかないですわね……。俺は自嘲気味に笑い、それからソニア姉の前に踊り出て、佇まいを正した。
「じゃあ、せっかくのお祭りだし……楽しみませんか?」
「ん……そうだね」
俺が紳士っぽく手を差し出してみると、ソニア姉はまるでお嬢様のような仕草で、俺の手の上にそっとその小さな手を置いた。
あぁ……小さくて柔らかい……でも、興奮はしない。近親相姦は嫌いじゃないけど……多分、本当の姉弟なんてこんなもんなんだろうな。
俺とソニア姉はクスリと笑い合うと、どこの屋台で買ったのか綿飴を、ノーラが三本ほど持って俺たちのところに戻って来た。後ろでは一本の綿飴を持って、それを食べながら歩いてくるエリリーがいる。
「はい、グレイとソニア先輩に」
ノーラはそう言って綿飴を二本差し出してきた。うむ、ありがたく頂こう。
ちなみに、この綿飴はこっちの世界じゃあ、カミュルスパイダーの糸という。つまりは蜘蛛の糸です。うげぇ……でも甘い。僕は甘党だから、どんどんカモンだぜ?
「あ!」
四人で屋台などを見ながら歩いていたところ……唐突に、とある屋台を指差して、エリリーが叫んだ。
「どうしたんエリリ〜」
「ほら、見てよノーラ」
「ん?射的屋さん?」
エリリーが指差す方向には射的屋がある。前世ではコルクを飛ばす鉄砲だったが、こっちの射的は、もちろん弓だ。大体二十メートルくらい離れたところにある景品を射抜けば景品ゲット……ふむ。
「ちょっと待ってて」
そう言うとノーラとエリリーが期待の眼差しで俺を見つめてきた。ふっ……やらんよ?
ソニア姉は首を傾げていたが、俺が射的をやるというのに気付いて、「頑張って」と一声応援してくれた。よぉしっ!
俺は射的屋のおじさんに銅貨を一枚渡す。すると弓と先っぽが柔らかい矢を二本貰った。チャンスは二回ということだ。
まずは、第一射目だ。俺は集中するために一旦目を閉じる。そして開けたときには視点が切り替わっていた。三人称視点……戦闘モードと呼んでいる状態だ。この状態の俺は、まるでゲームコントローラーで自分の身体を動かしているかのように身体が動く。未だに、どうしてこんなことが出来るのかは不明だ。
まあ、今はどうでもいいが……さて何を狙おうか。ふむ……ん?あの左隅のはソニア姉が好きそうな色のアクセサリーだな。ソニア姉が好きな色は黒色だ。昔はピンクとか、女の子らしい色だったが……いつからか黒色の物を好むようになったのだ。髪留めも黒色が多いし……。よし、そうと決まればだな。
俺は弓を引いて、特に溜めもせず、ヒュンッと矢を放った。少しだけ山形に景品に向かって飛んでいく矢は黒のブレスレットにジャストヒットした。
「おっ、おめでとさん」
と、店主はいって俺に景品であるブレスレットを渡した。
「えーブレスレット?」
「うわーヌイグルミを期待してたのにー」
女性陣……主にノーラとエリリーの非難が俺に集中した。欲しけりゃあ自分でやれよな……。
「いや〜いい腕してるなぁ、坊主」
「た、偶々ですよ……」
苦笑いしながらも、店主のおっちゃんから黒のブレスレットを受け取った。
肌触りは滑らかで、何が使われているのか気になったが、とりあえずソニア姉にプレゼントしてしまおう。俺は黒のブレスレットをソニア姉に手渡した。
「え……いいの?」
「うん。ソニア姉、黒色好きでしょ?」
「でも……」
「もらって。僕は使わないし」
ソニア姉は遠慮がちだったが、最後には俺の好意を受け取ってくれた。
「ありがとうね」
「うん」
すると背後に邪悪なオーラがっ!って、ノーラとエリリーかよ……仕方ない。俺は最後に一本の矢でヌイグルミを射抜いた。
店主には、「すげえ腕だなー。子供にしか見えねぇぞ?」と言われた。子供だよ……中身はおっさんだけどな。実質、ガキには変わらない精神年齢なんだけども……。
ヌイグルミをエリリーとノーラにあげると、嬉しそうに二人同時に受け取り……そして気付いたらヌイグルミの取り合いをしていた。
あぁ……ヌイグルミの身体がぁ……。
最終的にはソニア姉が、「喧嘩しちゃめっ」と叱ったので二人は不貞腐れながらも、ソニア姉には逆らえないので大人しく従った。子供だな……子供なのか。そうだった。
そして、また暫くあちこち回って歩いていると道の奥の方からなにやら黄色い声が聞こえ始めた。気になって俺たちも見てみると、道を優雅に歩くアリステリア様がいた。その横にはイケメン従者のアイクがいた。ちなみにアイク・バルトドスが彼のフルネームだ。気配から察するに近くにはソーマさんもいるようだ。ノーラもソーマさんに気が付いているようで、何故かげっそりと顔を歪ませていた。今のところは俺に見えないが、【透明化】でノーラにだけ、見えるようにしているのかもしれない。
道を歩くアリステリア様を呆然と四人で見ていると、その視線に気付いてアリステリア様がチラリとこっちを見るなり立ち止まって、優雅にお辞儀した。
「こんにちは、みなさん」
その美しい仕草に思わず俺たちは見惚れた。周りの女子生徒たちは、「きゃーっ」と叫んだり、男子生徒に関しては言葉も出ないようだ。
アリステリア様が顔を上げると、今度はアイクがお辞儀した。
「こんにちは」
これまた美しい仕草。だが、俺にそっちの気はない。しかし、男子生徒たちですら、これまた言葉を失うほど彼の仕草は完璧だ。もしかすると、四つん這いの生き物が湧いているのかもしれない。殺虫剤を散布しようかしら……。
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「こっちの二人はまだ復活しなさそうなので、お許しください」
一応、断るとアリステリア様は微笑んでから、「構いませんわ」と許してくれた。
「みなさん。学舎の祭は楽しんでいただいていますか?今回はわたくし達、生徒会の催しもあるのでそちらの方もご参加していただけると嬉しいですわ」
へぇーどんなんだろう。
「えぇ、では是非。いつからで?」
「闘技大会の後ですわ」
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