勇者パーティーにかわいい子がいたので、告白してみた。

水星

第2話 玉砕してみた (1)

第2話 (ぎよく)(さい)してみた

 

 ()(まど)うのも無理はないが、俺は言いたいことを言っただけなので、後は返事を待つだけだ。

「えっと……ごめんなさい」

 (こん)(わく)した表情のまま、(てい)(ねい)なお辞儀とともに(しや)(ざい)の言葉が放たれた。俺は彼女の言葉で胸を撃ち抜かれたようなダメージを負い、地面に崩れ落ちる。

「……ふられた。もうダメだ。死のう……」

 そのまま体育座りをして地面にのの字を書く。前世から合わせたら何回目の告白失敗だろうか。

「あの……」

 俺の隣で困ったようにオロオロする(そう)(りよ)の彼女、確かセシリアだったかな。短時間で状況が変わりまくっているから、脳内での情報処理が追い付いてないのだろう。

「ははは……」

 そんな彼女をよそに、俺は込み上げてきた笑いを抑えられなかった。人間生きていたら、ふられることなんて何回もある。実際、前世で何回もふられたしな。

 だから、今回こそはという気持ちがあったのだが、結果は(ざん)(ぱい)である。

「大丈夫ですか? ……って私は敵に何を!?

 (はげ)ましてくれるのかと思いきや、(きよ)()をとり杖を構え、(りん)(せん)(たい)(せい)に入られる。

 当たり前のことだし、俺もそっちの方が嬉しかった。下手な優しさは俺の心をえぐるだけだ。

 そう、俺は彼女の敵なのだ。

 それはなぜか、俺が魔族だからだ。

 次、転生する時は人間がいいな。人間だったらもしかしたら……()えない顔だからダメか。

 彼女が武器である杖を俺に向ける。どうやら俺を仕留めにかかるらしい。恋した人に殺されるなら本望だ。この世界で楽しいことなんてないし。

「《ジャッジメントクロス》」

 十字に重なった光の柱が向かってくる。光の上級魔法だ。チート持ちの俺だが、何の抵抗もしなければ、たぶん死ねる。

「ああ、次は人間に転生できますように」

 俺は祈り、目を閉じた。

 だが、いつまでたっても、身体に(しよう)(げき)が来ない。

 恐る恐る目を開くと、魔法が消えていた。俺は何もしていないので、彼女がキャンセルしたのだろうか。

「ふう……」

 彼女は杖を下ろし、息を吐く。

「なぜ……抵抗しないのですか? この一ヶ月の戦いであなたの実力はある程度理解しているつもりです。あんな魔法、避けるなり(そう)(さい)するなり、あなたならできるはずです!」

 何の抵抗もせずに、魔法を喰らおうとしたからキャンセルしたらしい。なぜって言われてもなぁ、率直に考えたことを伝えるか。

「君にふられたから、死にたくなった」

「ふざけないでください!」

 怒る姿もかわいい……じゃなくて。仕方ない、真面目に答えよう。

「生きていたって楽しくないんだよ。この部屋にいるだけの生活だぞ? 外に出るには人里を襲いに行くとか理由がないと出られないんだ。それで俺は人を襲いたくないから、出られない」

 前世の記憶があるので、どうしても抵抗がある。

「……あなたみたいな魔族を見たことがありません。私が知っている魔族はみな(どう)(もう)で残忍、人をゴミのように扱う性格をしているのですが」

 俺の言葉を聞いて不思議がっているようだ。彼女の言うとおり、確かに魔族はそのような性格を持った者たちが大半を占めている。

 だが、俺は例外だ。

「だって俺、元人間みたいなもんだし」

 間違ったことは言っていない。

「そんな……魔族には人間を魔族に変える魔法があるというのですか?」

 彼女は目を見開き、(きよう)(がく)の表情を見せる。

 間違った(かい)(しやく)をされてしまった。そんな魔法はない。チートをもらった俺でもそんなことはできないぞ。

「違う違う。俺は転生した人間なんだよ。前世が人間なの」

 急に彼女が冷めた目で俺を見出した。こいつ何言っているのオーラが出てる。

「……なんだよ。本当だぞ。俺は地球生まれの()(がわ)(よう)()で、死因は交通事故だ」

 地球とか交通事故とか意味は分からないかもしれないが、とりあえず一度死んだ身だとアピールする。

「……そんなこと信じられませんね。では、仮にあなたの言うことが本当だとして、なぜ魔王に味方をしているのですか? 我々人間に味方をしてくれてもよかったのではないですか?」

「確かにそうかもしれないが、仮に俺が味方すると言ったら、あの勇者たちは俺のことを信じたのか?」

 あんな正義感の固まりで我が強そうな奴が、敵と認識している奴の言うことを聞くだろうか。勇者がすべてなビッチ魔法使いはもちろん、剣士も論外だろう。

 それにいくら彼女がいるからって、イケメン勇者、ビッチ魔法使い、()(もく)な剣士、そんな息が詰まりそうなパーティーには入りたくない。

 彼女は俺の言葉にある程度納得したのか、黙ってしまう。

「まあ、あの勇者くんたちの実力なら魔王ぐらい倒せるよ」

 なんだかんだ勇者を名乗る力は持っていたし。剣士や魔法使いも実力は本物だったから余裕だろう。

「……あなたが魔王を倒した方が早かったのではないですか?」

「そんなことできるわけないだろ。人間社会で、一兵士が王を殺したらどうなる」

 俺は彼女に質問する。

「……最悪処刑され、逃げれば指名手配されますね」

「魔族ならそんなもんじゃすまないぞ。魔王を倒すんだ。次の魔王に担ぎ上げられる可能性がある。俺はそんなのごめんだ」

 地位が低いから微妙だと言ったが、魔王になればいずれ(とう)(ばつ)される運命なのだ。まあ、魔族である限り、遅かれ早かれ人間に(とう)(ばつ)されるだろうが。

「今までこの部屋を守ってたって言ったけど、実際は引きこもりみたいなもんでさ、()きてきたところだったんだ」

 そんな中、現れたのが勇者パーティーである。

「本当はやられようかなと思ったんだけど、昔発症した(ちゆう)()(びよう)が災いして、ついテンションが上がって……」

 全滅させてしまった。

「このままじゃ、この世界がまずいことになると思って、回復させて近くの村に捨てようと決めたんだ。そうしたら、君を見て(ひと)()()れして……」

「はぁ……そうですか」

「一ヶ月戦いながら君を見ていた。でも、俺のせいでこの世界は平和にならないんだなーって気づいたんだ。これ以上足止めさせるのはまずいから、今日、意を決して告白の場を作ったんだ」

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